宇宙な男

K

宇宙な男

沈黙に似つかわしくない空間

はち切れんばかりの人が詰まったその電車は昨日と変わらず同じ時刻、同じ駅に到着する


吐き出されるように今日も彼らはその駅で降り、そして操られているかのように歩き出すのだ


それが彼の日常だった


入社当初は遅刻しまいと余裕を持って出勤していた彼も、いつしか定時5分前に出勤する具合の良いタイムスケジュールを見つけ出していた


意味の無い慣れは彼を意味もなく勘違いさせる


そんなどこにでもいる彼は少し体調を崩していた


風邪だろうか

朝から頭が痛い

昨夜飲みすぎたわけでもなく

頭が痛い


市販薬で痛みは幾分和らいだが

思い出すたび痛い


割れるような痛みが繰り返し襲ってくる


まあ、いつもことだ

彼はデスクに向かいいつも通りパソコンの電源を叩いたのだった



南米で干ばつを起因とした地割れが発生した

中には地下が渇水したことで大きな穴まで空いたという...



彼は結局夏風邪を拗らせていたらしい

大事をとって1日休むことになった



記録的な大雪が各地を襲った

世界各地で記録的な大寒波に見舞われたのだ

異常気象だと人々は言いながら手立てはなく

耐えるしかなかった



彼は病院にいる



医師の見解では検査上何も異常は見当たらないのだが、彼が悩まされている頭痛の原因がわからない為、MRIをやることになったのだ


彼の脳に影がある


医師はこの病院にしかないという

特殊な小型カメラを持ち出し彼の脳に差し込むことにした


麻酔で眠る彼の頭に小さな、小さな穴を空け

そこにカメラを差し込む


映像は横たわる彼のそばにあるモニターに映し出され、専門医数名がそれを見守っている


カメラは真っ黒な映像から1つの点を見つけ出しそれに突き進んで行く


やがてその点であったものは画面いっぱいに拡がり今度は画面が真っ白に染まる


これは. . .


医師たちは息を呑んだ



その白い闇をカメラが抜けると

そこには見慣れた街の風景が拡がっていた。






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宇宙な男 K @mk-2K21

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