バー

勝利だギューちゃん

第1話

「ママ、聞いてよ」

「奥さんと喧嘩でもしたの?」

「いないってば・・・」

「そうだったわね」


今、都会のとあるバーに来ている。

カウンターに座り、ママにぐちをこぼしている。


(母親のママではないので、念のため)


俺は独身だ。

仕事帰りにこのバーで、飲むのを楽しみにしている。

といっても、アルコール類は全く飲めないので、特別にウーロン茶だ。


ワイングラスに注いで飲む。


「誰も来ないね」

「今日は、あなたの貸し切りよ」

「嘘」

「当たり」


軽く談笑する。


このママは、ただのママではない。

元芸能人で、売れっ子のアイドルだった。


芸能界引退後に、このバーをオープンさせた。


「バーを作って、ファンが集まる場所を作りたい」

ママの夢だったらしい。


それが、現実となった。

僕もママのファンだったひとり。


店内には、ママの現役時代の衣装やグッズが並んでいる。

店内には、ママの曲がエンドレスで流れている。


「あなたは、よくプレゼントくれたね」

「絵手紙しか送ったことないけど・・・」

「ぬいぐるみ。嬉しかったよ。生徒の成功祈る先生の気分だったよ」


カウンター内には、僕が送ったぬいぐるみも並んでいる。


「そういえば、今日はママの誕生日だったね」

「もう、すっかりおばさんだけどね」

「僕も誕生日なんだけどね」

「知ってる。だから、あなたの貸し切りにした」


ママは、ワイングラスにカクテルを注ぐ。


「じゃあ、乾杯」

「乾杯」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バー 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る