追放令嬢、自国を侵略す

ぺる

幼少期

始まりは突然に

 それはとても晴れた日の事。


「お主、シェスティア・パラドールを領地追放の刑に処す。この領地から出ていきなさいティア」


 親戚一同が揃い、テーブルの両サイドを埋めるなか、私は一人入り口にたたされ、そう宣告されました。


「……はい?」


 私、シェスティア・パラドール13歳は意味がわからぬまま呆然と立ち尽くしております。


 なにせいきなり呼び出されたかと思えば領地追放! これを理解できるものは中々おりませんのよ!


 それもお父様とお母様のお葬式が終わって間もないと言うのに……。


 私は両親と共につい最近まで他国の領へ遊びにいっておりましたの。しかし帰るときに馬車の車輪が外れ崖から転落……運良く助かったのは私だけ。


 お父様とお母様とは涙のお別れをしないといけなくなりました。


「お父様、お母様っ、私をおいていかないでっ!」


 お葬式の日に一人泣き叫ぶ私を見て、皆が同情をしてくれました。


 ……いいえ、皆というのは嘘ですわ。

 一人だけ、ほくそ笑むものがおります。


 それが今しがた私に追放宣告をした男、キース・パラドール……お父様の弟で、私の叔父に当たります。


 お父様亡き後、領地の相続権は叔父様と私にありますの。


 これは言わば、厄介者を追放したにすぎない。そんなこと、13歳の私でも、わかりましたわ。


「どう言うことですか叔父様っ! なぜ私が追放されないといけませんのっ!?」


 しかしだからといって大人しく、はいそうですかと領地を出ていくわけもありません。


 私が叔父様に駆け寄ろうとした瞬間


「むぐっ!?」


 警備の者に取り押さえられ、私は口を塞がれました。仮にも令嬢になんたる無礼をっ!


 しかし誰も、助けてはくれません。私を見て同情するか、嘲笑うかして手を差し伸べてすらくれない。


 いつも遊んでくれた従兄弟のアーノお兄様

 わからないことはなんでも教えてくれた、優しい叔母のサーラ婦人

 私の世話をしてくれた、侍女のラスティカ


 誰も、誰一人として……私の味方はいないの?


 その事に絶望していたら、キース叔父様は深くため息を疲れました。


「君には両親殺害の嫌疑がかけられている。証拠も多数上がっているんだ。しかし君はまだ若い、私としても、このまま憲兵に引き渡したくはないのだよ」


 大事にしたくないから、自分から出ていけと……?

 私はその訳のわからない要求に頭が真っ白になりました。


 両親殺害? 自分も死にそうになったのに……?

 証拠ってなんですのよ……本当に、私が犯人と思ってる人が、この中にどれだけおりますの?


 ねぇ、お願いだから……

 誰か、誰か助けて……っ!


 必死で視線を送るも、皆して目をそらすばかり。


 あぁ、本当に、本当に私は、見放されましたのね……。


 それがわかった瞬間、この世が終わってしまったかのような絶望に叩き落とされました。


 そのからの私は、まるで人形のように流れていく処罰を受けるしかありませんでした。


 あっという間に荷物をまとめられ、馬車に詰められ……


 せめてもの救いでアーノお兄様が、家を用意したからそこに住めとの事でしたの。


 身一つで放り出されなくて、まだよかった。


 その時はそう思いましたの。


 でも……実際ついてみれば

 魔物が徘徊する危険地帯のど真ん中。


 吹けば飛びそうなぼろ屋がそこにあるだけで。


 まるでここで死んでくれと、言われたようでしたわ。

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