第33話 1日で出来るオリハルコンの盾作り

 よし配信も始めたし、作業を開始するか。さっきの指輪作りで細かい部分の作り方は大体わかったし装飾は問題無さそうだな。問題はあまり盾を作ってこなかったところだな。それでもやってみるしかないか!


〔おぉーこれが配信か〕


〔本当にオリハルコン使う気なのか?〕


〔ドワルフ:おぉ見てくれてありがとう! これからオリハルコンを使って1日で完成させるからな! 期待して見ていてくれ!〕


 それにしてもコメントがこうも流れると上手く対応し切れるか自信がないな。


〔ドワルフ:まぁあんまり説明はしないが見て学んでくれ〕


 右上の視聴者数がどんどん伸びていく10人を超えた。なんだかんだこの世界で初めての10人超えで嬉しい。


 視聴者も増えたことだしさっさと作業に取り掛かる。炉の温度はもう適切な温度がわかっているのでそこまで一気に温度を上げていく。


〔そんな一気に温度を上げるのか?〕


〔というか温度をもう把握してるのか〕


〔ドワルフ:そうだな【ドワーフの神】を持ってれば、触れば大体わかるんだよ〕


〔すげーな【ドワーフの神】って〕


〔そりゃそうだろ! そうでもなけりゃユニークスキルなんかじゃないってぇの!〕


 炉の中にオリハルコンを入れ叩き時になるまで待つ。


〔どのくらい待つんだ〕


〔そうだそうだ。それが気になってるぞ!〕


〔ドワルフ:まぁ火の温度が完璧なら大体10分ぐらいかな。時間に縛られずやっぱりしっかりとみることが重要だな〕


〔まぁそりゃそうだな。確かに見ることが大事だな〕


〔基本的なことは一緒なんだな〕


〔ドワルフ:そうだなー後は叩いて見ないとわからないな〕


 じっくりとオリハルコンを眺めて叩く時を待つ。


 ――今だ


 さっとオリハルコンを取り出し思い切り叩いて伸ばす。大体の盾の形は想像していたから、その大きさまで伸ばす。ここで焦ってはいけない。適切な力で適切な場所を叩いていく。一気に形作るわけではなくまた炉に入れる。


〔一気に形作ったな。そこまで簡単な鉱石だったっけか?〕


〔俺も昔、ちょろっと触ったがそんな風に形を変えれなかったぞ〕


 ちょろっと触ったって貴重な鉱石なのにこいつもしかしてこっそり盗んだんじゃ。まぁ触りたくなる気持ちも分からなくもない。


〔ドワルフ:最適な温度で最適な場所を叩けばこうなるぞ。そこは眼を鍛えてくれ〕


 雑談をしながら再び叩ける温度になるまで待つ。


〔そういやあんたの使ってるハンマーが特別なんじゃないか?〕


〔確かにそうだ。そんな宝石のついたハンマーなんて見たことがねぇ〕


〔ドワルフ:確かにここハンマーはマジックアイテムだが、もしその力を発動させてたらより一層力加減が難しくなると思うぞ。普通のハンマーでもできるってことを見せたいんだが重要な試練なんでな。使い慣れた物でさせてくれ〕


〔おぉそりゃそうだな〕


 オリハルコンを取り出し盾の形にしていく。貰えるかどうかは知らないが自分が使う様のサイズにしていく。


〔おぉもう殆どできちまったじゃねぇか〕


〔それにしても少しがっかりだな。確かに盾の大きさにはなったが、凹凸が激しいしどうして真ん中におっきな穴開けてんだ?〕


〔ドワルフ:凹凸はわざとつけてるんだよ。ここからが1番時間のかかる所だ。装飾を施していく。穴に関しては最後まで見てくれたらわかる〕


〔装飾だー? 俺はあんまりいいとは思わないなー〕


〔装飾はいいぞ〕


 ドワーフの村にも装飾の良さがわかる人がいたのか。


〔ドワルフ:だが俺の装飾はただ貴族にウケるためだけやカッコいいからというだけじゃない。今回は風をイメージして掘り進めていくぞ〕


 そう言ってさっき指輪で使った物より大きなノミでドンドンと形を整えていく。ドーコが大斧で装飾を施したものには宝石魔術の効果が上がることは証明してくれている。その時はドーコが装飾を施したが、俺がしたらどうなるんだろうかと実は気になっていた。


 黙々とオリハルコンの盾と向き合う。流れるコメントが見えなくなるほど集中している。配信者としては失格かもしれないがそれほどまでにオリハルコンへの装飾は力加減が難しく繊細な物だった。




★   ★   ★




「ふぅーやっと出来た!!」


 ずっと見ていなかった配信の視聴者は24人にも増えていた。


〔オリハルコンでただ盾を作るだけでも凄いってのに装飾まで入れるとは流石に恐れ入ったぜ〕


〔そうだ。それに並の装飾じゃねぇぞ。あんな立派な装飾俺は今まで見たことがねぇ〕


〔そりゃお前が村から出ないからじゃないのか?〕


〔それもあるかもしれないが、お前にあれが作れるってのか? 俺はどんな大金が得られたって作れねぇぞ〕


〔確かにそれもそうだな。見てるとよぉなんだ装飾も悪くねぇなって思えてきたな〕


〔そうだよな! お前もそう思ったか! 俺も明日から装飾に挑戦してみるぜ〕


〔でもよぉあんなに難しそうな事【ドワーフの神】を持ってなきゃ出来ないんじゃないか?〕


〔ドワルフ:それに関しては安心してくれ。オリハルコンにも出来るかは分からないがドーコがドワーフ鋼に装飾を入れることに成功している。まぁ俺がしっかり見てたがな〕


〔ドーコに負けてらんないぜ! 俺も明日からやってやる!〕


 チャットが装飾の話で大盛り上がりだ! 自分が何かを流行らせるっていうのはやっぱり気持ちがいい物だな。


〔それでそれで最後まで見てたがその穴はどうするんだ?〕


〔ドワルフ:あーこれか? どうして俺が風をモチーフに装飾を入れてたかこれがその答えだ〕


 そう言って俺は昨日限界まで魔術を封じ込めたエメラルドをはめ込む。その時今朝の指輪と同じ様に急に光り始めた。


 宝石がはまったオリハルコンの盾は先程までより一層風格が漂い究極の一品が出来上がった。もしかしてあの光は装飾や思いと宝石がピッタリと当て嵌まった時に、発する物なんだろうか?


「おいおいまた光ったが今度は炉の光じゃなかったぞ!」


 周りにいたドワーフが勘づく。


「朝のは確かに炉の光だったんだがなぁー。今回はこの盾が完成した時に光ったんだ」


「ほっ本当じゃったのか……『真なるマジックアイテムが完成せし時、辺り一面を神の光が立ち込めん』というのは……」


 今まで黙って見ていたドウェインが信じられないという顔をしてオリハルコンの盾を見つめている。それにしてもこれが真のマジックアイテムということだったら今まで作った物はまだ完成ではなかったということか。


 その時バーーン!と扉が開きドーコが駆け込んで来た。


「そんな話聞いたこと無かったよ!? どうして教えてくれなかったのパパ!!」


「教えてしまってはより一層マジックアイテムに固執してしまうじゃろうが!」


「まぁそれはそうだけど……じゃああの大斧はただの大斧だったんだね」


「いやそういうわけでもないぞ。あれはあれでちゃんとしたマジックアイテムじゃ。しかしドワルフが作った物の格が違ったというだけじゃ」


「うーんなんとも言えないなぁ」


「ほらドーコ何花嫁修行から逃げ出してるんだい! 早く戻るよ!」


「せめてせめてあの真のマジックアイテムの効果だけ見せてママ! ママだって見たいでしょ!?」


「もう仕方ないわねこの子ったら。マジックアイテムって聞いたら言うこと聞かないんだから」


「じゃあ早速お披露目と行こうか」

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