第27話 俺たちの追放について

「なにその格好! プププッ」


「これしかなかったんだよ!」


 ピチピチの服を着た俺を見てドーコが笑う。その笑顔を見てドーコの体調が良くなっていることがわかった。流石エリクサーだ。


「ちゃんと笑える様になったしドーコ体調は良さそうだな」


「うん! 本当にありがとうドワルフ!」


 それにしてもこのピチピチの服で今日過ごすのか。嫌だなぁ。窮屈で上手く寝れる気がしない。そんなことを考えているとドアがコンコンとノックされた。


「ママ?」


 入ってきたのはドワーフの長であるドウェインだった。その顔を見るなりドーコが顔をしかめた。追放されたことに関して相当因縁があるらしい。


「何しにきたの。まさか治ったからもう出ていけって言うんじゃないよね?」


「流石のワシもそこまで恩知らずではない」


「何言ってるのよ! 自分の呪いを治してくれたドワルフを村から追放したくせに!」


「ぐっそれを突かれると痛いところじゃな。だが今回はワシが来たのはその事に関してお前達に話しておかなければならない事があったからじゃ」


「まずドワルフに対しての謝罪じゃないの?」


「それだったらドーコに対しての謝罪も先にしてもらわなきゃならない。あの大斧が無かったら確実にもっと沢山の被害が出てただろうしな」


「そうじゃな。先に謝罪じゃ。ドーコ、ドワルフ本当にすまなかった。今回はその言い訳ではないが弁明を聞いてほしいんじゃ」


「確か前に訪ねた時は答えてくれなかったよな」


「そうじゃったな。が、その前に配信を切ってもらっても良いかドワルフ」


「おっとすまない。切り忘れていた」


〔ドワルフ:と言うわけで今日は終わるよ。見てくれてありがとうな〕


〔エマ:気になるけど仕方ないわね。お疲れ様〕 


 そういってから配信を切る。


「ちゃんと切ったぞ。それでその話ってのは?」


「ワシが知っている話は全て話そうと思う。じゃがワシも先代からことの発端は聞かされていないんじゃ。聞かされたことは、ワシの一族つまり長の家系にはエルフの呪いがかかっているということじゃ。それは自分の目標とする物ができた時か伴侶が出来た時からどうやら発症すると言う物らしい。それともう一つは語り継がせろと言われたエルフに対する憎悪の思いじゃ」


 その両方が一気に叶ってしまったからこんなにも早く呪いが進行したんだろうか?


「なんでそんな厄介な物を語り継ごうと思ったかね」


「争いを生まない為じゃ。互いが互いを憎み合い近づくことすら嫌になる程嫌えば、近づくこともなく争いも生まれない」


 冷戦状態を作り上げたってことか。確かに武のドワーフと知のエルフがぶつかり合えば大変な事になりそうだしな。


「だから俺を追放したんだな。だがドーコはどうなんだよ。髭が生えてないからって間違いなくあんたらの娘なんだろ?」


「確かにそうじゃ。間違いなくワシの娘じゃ。エルフの混血ではない。じゃがどうだ、その子が真っ直ぐ鍛冶仕事だけに打ち込めばいいんじゃが、成人した辺りにマジックアイテムを作る為にエルフと交流がしたいと言い出したんじゃ」


「ワシがドーコが小さい頃から毎晩毎晩寝る前に、先代から聞かされた恐ろしいエルフの話を聞かせていたのにも関わらずじゃ。そしてそのドーコの思いはどんどん強くなり、ドーコは遂に村を出てエルフを探しにヒューマンの国にも行くようになったのじゃ」


「それを見た他のドワーフがイチャモンをつけてきたって事か?」


「あぁその通りじゃ。長の娘であるからこそ厳重な処罰が要求された。エルフの新たな呪いだなんだとも言われた。ワシはその流れをどうにもすることが出来なかった。ずっとドワーフに受け継がれているエルフへの憎悪がな。本来なら極刑もあり得たんじゃ。だがどうしても自分の娘を自分の決断で極刑にするなぞ出来なかった。だから追放したんじゃ。いずれ呪いで死ぬと言ってな」


「その呪いの発動条件は皆知っていたのか?」


「いやそれは知られてはおらん。ワシは呪いの発動条件である目標とする一品のマジックアイテムと伴侶なぞできるわけがないと思ったんじゃ。だから呪いで死ぬこともないとそう思っておった」


「そこに俺が来ちまったってわけか」


「そうじゃ、だがワシもこんなに早くできるとは思っていなかった。いくらエルフとの混血であってもそう簡単にできる物では無かったからじゃ」


「でも出来てしまったと」


「いくらワシでもそこまで予想はできなかったのじゃ」


「死ぬことがわかってて追放したわけじゃなくてよかった。もしそうだったら俺はあんたを殴らなきゃいけなかった」


「すまぬ」


「それで私たちの追放はどうなったの?」


「本来なら明日の宴会でしっかりと発表をしたいんじゃが、商人と交渉が出来なかったからエールが足りんのじゃ」


「別にエールがなくたって発表すればじゃないか」


「それだけはいかん! エールのない宴会なぞ宴会ではない!」


「そうだよドワルフ! エールは絶対だよ!」


 こんなところで意気投合されてもな。


「じゃあそれまで俺たちはどうすれば良いんだ? ドーコの家に戻っとけってことならそうするが?」


「いや流石にそんなことはせん。ワシの家にいてくれ。商人にはもう連絡を取っておいた。超特急で来いとな」


 シュドも大変だな。もう心配事も無くなったしシュドに頼んで馬車も用意してもらおうか。


「なぁドーコここでの宴会が終わったらヒューマンの国に行かないか? ドバンにも無事連絡がついて安心したし、あんまりエマを待たせてるのも悪いしな」


「うん。確かにそうだね。」


 フォロー一覧からシュドの配信を開く。


〔ドワルフ:シュドさん。すいませんが、ドワーフの村に来る時に、ヒューマンの国に行くように馬車を用意しておいてくれますか?〕


〔シュド:はい承知致しました。ドウェイン様にも言われた通り超特急で向かいますので明明後日には着くと思われます。その話で言うとどうやら長とは仲直り出来たようですね〕


 そういえばシュドは俺の配信を見ていたな。やはりやり手の商人らしい


〔ドワルフ:はい、そうなんです。ではよろしくお願い致します。お仕事頑張ってください〕


 そう言って配信を閉じる。


「あっそうだ。ドーコと俺はこのドワーフの里の一員として認められるって事だよな? じゃあその時に俺らの結婚式も」


 ギロッとドウェインが睨んでくる。


「ドッドワルフ!? 確かに認められた時なら出来るけどはっ早すぎるよ!」


「でもここから先は、ヒューマンの国に行ってエルフの里だぞ。とてもじゃないがかなり先になってしまうぞ?」


「そういうことか……通りで呪いの進行が早すぎると思ったんじゃ! いかーーーん!!! 認めん! 認めんぞ! そう言うことは一端の鍛冶捌きをが出来てから口にするんじゃー!!!」


「期待に添えるよう頑張りますよ。お父さん」


「誰がお父さんじゃーーー!!!」


 まぁこれぐらいの仕返し可愛い物だろう。明日に備えてピチピチの服で寝る。明日には乾いてるだろうなー俺の服。

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