第26話 ドーコとドワーフの看病
「ふぅー、1人で来た時は宝石魔術のブーストですぐ着いたが、やっぱりなしだと結構かかるな」
「すまないな。俺に肩も貸しちまってる所為で更に遅くなっちまって」
「ドバンが来なけりゃ死んでたかもしれないしな。命の恩人に肩を貸すぐらい訳ないさ」
やっと村の門が見えてきた。負傷者たちも言っておいた通り集めてくれたのか、もうここには転がってなかった。出迎えてくれていたドワーフ達にドバンを預ける。
「そっちも大変なのはわかってるが、ポーションを一個くれないか?ドーコの所へ急いで向かわないといけないんだ」
「それならもうすぐ治療できるようにドーコをこっちまで運んでおいた」
「なんて仕事のできる男なんだドバン! 本当にありがとう。じゃあ早速そこまで案内してもらってもいいか?」
「俺は治療所へ向かう。きっとドーコは長の家に運ばれてるはずだ」
「わかった。じゃあドバンも気をつけてな」
そう言って別れを告げ急いで長の家へと向かう。
「ドーコ!!」
長の家をノックもせず開けて叫ぶ。
「あんた無事に帰ってこれたのかい。ドーコの方は進行が早くてね今すぐにでもエリクサーが必要な状況だよ」
「わかったじゃあ前と同じ方法で……」
アギリゴを擦りおろし呪文を念じてポーションと混ぜる。以前と同じ様に反応が起き澄んだ無色の液体が出来上がった。MPの量が上がったためか以前の様に疲れは出なかった。
〔エマ:作り方は全然違うけど確かにその色はエリクサーだわ……〕
〔ドワルフ:これで助かるならなんだっていい!〕
「ドーコの部屋は!?」
「2階のこっちだよ! 着いておいで」
階段を駆け上がり扉にドーコと書かれた部屋に入る。本当に長の娘だったことを確信する。
「ドーコ起きてくれ。これを飲めばすぐに良くなる」
「ドワルフ……? 血でびっしょりじゃない。それに顔も必死だね」
「ほらそんな軽口叩いてないで早く飲んでくれ」
「うん」
ゴクゴクとエリクサーを飲んでいく。それと同時にドーコの顔色が良くなっていった。念のため服を捲る。
「なっ何してるのドワルフ!?」
ちゃんとあの禍々しい模様も消えていた。
「本当によかった……本当に」
そう言って思わず涙が出て、そのままドーコを思いっきり抱きしめる。
「ちょっとドワルフ! 血が付くし臭いよぉーそれに泣いてるの?。でも本当にありがとうね」
しばらくの間2人で抱きしめあった。
「いい雰囲気のところ悪いんじゃが、他のドワーフも見てやってくれ」
バッと抱き締めていた手を外す。気付くと長がいつの間にか来ていた。ドーコの方を見ると
「私はもう大丈夫そうだから行ってあげて」
「わかった。じゃあ後は奥さん頼みます」
「任せときな! だからあんたも任せたよ」
「医者じゃないからな。でもやれる事だけやってみるよ」
俺は今度はドワーフの治療所に向かう。
★ ★ ★
「おいこっち早くポーション持ってこい!」「こっちも包帯早く」
世話しなくドワーフ達が動いている。しかし包帯の巻き方も素人目で見てもめちゃくちゃだし、助ける順番も滅茶苦茶だ。
「おい! 俺言う通り動いてくれ。ほらこの耳を見ろ。俺はエルフとの混血だって知ってるだろ。医療の知識も多少はある」
ザワザワ
医療の知識なんてドワーフより詳しいくらいだが、ハッタリでもきかせてこの場を落ち着かせることの方が重要だ。
「おいお前ら! こいつは長の呪いも直したのを忘れたのか! 黙って言うことを聞け!」
ドバンの一言でざわついているドワーフ達が静まり返る。それにしてもドバンの信用度は凄いな。
「じゃあ取り敢えず重症患者と軽症患者で分けてくれ。それとドバンあの鞄を貸してくれ」
「あーわかったが、そんなにエリクサーを作ってMPは大丈夫なのか?」
「MPの量もあの頃と比べて増えたんだよ。まぁ任せときなって」
さっきと同じ工程でエリクサーを作る。重症患者へと配る。あの呪いを解くほどのものなんだ。当然の様に死にかけていたドワーフたちが息を吹き返す。
信じられないといった様子で周りのドワーフ達が、その光景を見る。瀕死状態のドワーフですら傷が癒えたのだ。
「本当にエリクサーが作れるのか!」「と言うかエリクサーなんて存在するのか?」
またドワーフ達がざわつき始める。だが今回は好意的なざわつきだ。
「これで効果がわかっただろ! あとは軽症者の方だがポーションの数も少ないしな。包帯だけしっかり巻いてあとは薬草でもつける。またこんなことにならない様にポーションだけはしっかり買うことだな」
〔ドワルフ:エマ、もしかしてこう言った場合の包帯の巻き方知ってたりしないか?〕
〔エマ:私も治癒系はさっぱりね。それに治癒はエルフよりヒューマンの方が得意なのよ。ただエリクサーが作れないってだけで〕
〔ドワルフ:じゃあポーションの作り方とかは?〕
〔エマ:ざっと見た感じだけど、ここには材料と機材が揃ってなさそうね。薬草だけならあるから、ドワルフの言った通り、それを使って包帯を巻くくらいしかないんじゃないかしら?〕
頑張って慣れない医療作業も終わった。最後にドバンの折れた左手に添え木をつけて固定する。本当はドバンにもエリクサーを飲ませたかったが、ドバンは最後まで拒否し、他の人を優先させた。こう言うところにもドバンが皆に慕われる理由があるんだろう。一先ずやらなきゃならないことは終わったな。
「本当にありがとうドワルフ! お陰で死傷者もかなり減った。これからそうするんだ?」
「取り敢えずドーコのところに行くことにするよ。少しでも一緒にいてやりたいからな」
「わかった。本当は今日宴会の予定だったが、流石に無理があったな」
「それもそうだな」
久しぶりにゆっくりとした足取りで長の家へと向かう。
コンコンッ
今度はちゃんとノックする。奥さんが出迎えてくれた。
「どうぞ、ドワルフ。ドーコは汗も引いてゆっくり寝てるよ。あんたも早く血塗れな服を脱いで着替えな! さっさと水浴びして今日は寝る準備をしなさいな」
「わかった。ありがとう」
ふぅ、この鎧には感謝だな。移動速度も上がったし何よりこいつがなかったら俺も致命傷を負っていたかもしれない。そんなことを思いながら服を脱いでいく。
冷たい水が汗でベタついた体を綺麗にしてくれる。気持ちいいな。ゆっくりと水浴びをし準備してくれていた寝巻きに着替える。ドワーフ用の物だから小さくてなんだか不恰好だ。だがこれじゃなかったらあの血塗れの服を着なきゃいけないのか。それは嫌だし我慢してこのピチピチの服でドーコの寝室へと向かう。
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