第22話 作業配信の王
「かんぱーい」 「完敗……」
「なんか今意味が違うように感じたんだけど」
「間違ってない! 俺は自分自身に完敗したんだ……」
「まぁそう言わずー、エメラルドの宝石魔術だって凄かったよ! まさか今日1日で私が一生掛かっても使い切れないと思ってた量を使い切るなんて思いもしなかったよ」
必死でドーコが励ましてくれるので俺もこれ以上落ち込んでいては、申し訳ない。
「あぁそうだな。まだMPに余裕もあるし、どうやらドーコの目論見は外れた様だな! ハッハッハー!」
「うーんそれにしても風属性だけってのが残念だねー。氷属性だったらレイゾーコがぁ」
「風属性だって生活の役に立つ物があるんだぞ。ほら2つだけ作ってみたんだ」
「なにこれ?部屋の中で使うものなの」
「まだ宝石魔術だけで外装がないからうまく行くかはわからないが、ほらこんな風に」
ヒューっと心地の良い風が流れる。
「へぇーじゃあ私もっと。これ良いね! ヒューマンなんかが喜びそう」
「そうだろう! これで俺の世界に会った扇風機みたいなものを作れれば暑い日でもバッチリだ。ってどうしてヒューマンなんだ?」
「ドワルフ今日は本当に調子悪いね。鍛冶場にいて暑いとか感じたことある?」
「ないな……もしかしてドワーフって熱耐性があったり」
「その通りだよ。ドワーフの平均体温は高いんだよ。だから冷えたエールをこんなにも欲してるんじゃないか!」
今日に俺はとことんダメらしい。だがヒューマンには需要はありそうだしなんとかなるだろう。それにしてもやはり性欲は人をダメにするのか? それとも三代欲求全てが満たされて気が緩んでいる?
どちらにしても明日はフルアーマーを完成させて、明後日には狩りを始めるんだ。気を引き締め直さないとな。そう言いながらもエールをゴクリと飲み干す。
「人は無力だ……」
「また嘆いてるよ。ほら明日は自分用のフルアーマー作るんでしょ! 私も色々と疲れが溜まってるし、今日は早めに寝よっか」
「一緒のベッドでか?」
「それでも良いよ」
ドーコが動じなくなってしまった。少し楽しみが減ってしまったな。
「いや今日は1人でゴロゴロ寝ることにするよ。万が一またムラムラでもしたら明日の作業に影響するからな」
「私も何か調子悪いし今日はそうしよっか。自分の装備は自分で作るこれドワーフの掟なり!」
そう言って互いの寝床に向かった。
★ ★ ★
もうこの生活に慣れたのか。朝にはきっちり目が覚める様になった。ドーコはまだ寝てるし、少々早い気がするが。
ドーコを起こしに向かうが、顔色が悪い。このままゆっくり寝ていてもらおうか。もしかしたら昨日の疲れとかが祟っているのかもしれないしな。
1人で朝食を作りさっさと鍛冶場へと向かう。
配信タイトルはっと『自分の装備作り』でいっか。朝早かったこともあり、エマはまだ来ていないようだ。1人で寂しく作業でもってそうじゃなかった。他の配信を見て勉強するんだった。
まだ朝早いためか配信の数が少ない。それでもやはり作業系の配信は早くからやっているようだ。こっそり覗いてみよう。
汗をびっしりとかきながら鍛冶仕事をしているヒューマンの配信を見ることにした。どうにも一回の叩きでは力不足のためか、どうしても速度が出ていない。しかも鉄にあった温度の炎でないことが見てわかる。コメントでもしようかと思ったが、有名でもない者の初コメがそれでは非難されるだろうし他のページを見てみる。
どの鍛冶師も同じような物だった。だが1人杖に装飾を施している鍛冶師は目を見張る物があった。ちゃんとそこに神への祈りの様なものが感じられ、見習うべき点があった。ヒューマンの国に行ったらちゃんと挨拶しに行こう。見忘れてたがフォロワー数と視聴者を見ておくか。
「フォッフォロワー数3万5000人だと!? それに視聴者がこんな時間だってのに1300人!?」
冒険者に比べれば大したことのないフォロワー数と視聴者だが、作業系ではトップクラスではないだろうか? 少なくとも俺が今見たのは多くてもフォロワー数100人程度だった。それにコメントも多く流れている。殆どが匿名でのコメントだがやはり多くの人がその技術に惚れ込んでいるようだ。
「バッ化け物め」
確か魔法は神への祈りで発動するからこの杖にもそう言った装飾がされているのか。俺も今すぐ作ってやりたかったが、自分の物を完成させないことには、先に進めない。
くそー俺も負けてられない。もうそろそろシュドも無事ヒューマンの国について俺のことを広めてくれているだろうか? 念のためマイページと念じて確認する。
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名前 ドワルフ
レベル 30
視聴者数 0
フォロワー 5
メインジョブ 配信者
サブジョブ なし
スキル 【ハンマー使い】
ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】
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おぉ1人フォロワーが増えている。だが誰だかさっぱり検討が付かないな。そういえばフォロワーリストを見れたな。
・ドバン
・ドーコ
・エマ
・シュド
・エドベンド
何か仰々しい名前だな。もしかしてお偉いさんだったりするのだろうか?
それにしてもいちいち念じないと視聴者数が出ないのは不便だな。何か常に表示されれば良いのに。そう思った時、視界の右上に視聴者数が表示された。
「できるのかよ!」
じゃあ今度はフォロワーが増えたときに通知が流れる様に念じてみよう。こればっかりはすぐ確認できないがまぁ出来てるんだろうきっと。
まぁフォロワー数も増えたし、もうひと頑張りするかー。
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