第20話 ドーコの企み

「ただいまー」


「おっおかえりドワルフ」


 ずっと一緒に家に帰っていたから初めてこんなこと言ったな。それにしてもどうにもドーコの様子がおかしい。


「ドーコずっと思ってたんだが何か俺に隠してないか?」


「フーフー」


 鳴らせない口笛を吹いて誤魔化している。まぁ俺に酷いことさえされなければいいか。


「さっ早く晩御飯を食べようよ! 今日はいつもと違って贅沢な物なんだよ」


 机の上を見る。確かにいつもと違う料理が並んでいるが正直言っていつもの方が美味しそうだ。それもそのはずで、丸焼きにされた蛇や、ヤモリの様な物が並んでいるからだ。一応確認しておこう。


「これがこの世界の贅沢品なのか? 普段の料理の方が美味しそうに見えるんだが」


「贅沢なことには間違いないし嘘はついてないよ! ほっほらエールで乾杯しよ?」


「なんだかこのエールも少し赤い気がするんだが?」


「気にしすぎだよー。ほら、かんぱーい!」


「かんぱい」


 違和感を感じながらもゴクッと一飲みする。味は余り変わらないが、何かこう体が熱くなっている気がする。


「どっどう? なんかいつもと違う感気がするかな?」


「いつもと一緒のはずだろ? でもまぁ体が熱くなってる気がするな」


「そう!? じゃあどんどん食べていこう!」


 んー気乗りしないが蛇の丸焼きを食べる。意外に美味しい。元の世界の蛇を食べたことはないがこんな感じなんだろうか? ドーコは俺が食べる姿を興味津々と言った感じで眺めている。


「ドーコも食べろよ。それとも食べれない理由でもあるのか?」


「そっそんなわけ、でっでも食べて私まで……あーもう食べます食べますよー」


 エールを飲み干すたびドーコがあの少し赤いエールを注いでくる。もっと飲めと言ってる感じだ。ドーコもしっかり食べるようになったがさっきから妙に顔が赤い気がする。


 俺の方もどんどん体が熱くなっているのを感じる。その時ハッと気付いた。もしかしてこれは精力料理か? なぜ今まで気がつかなかったんだろう。じゃあこのエールに入っているのはスッポンか何かの血か?どんどん血流が下の方に回ってるのを感じる。ここは勇気を持って聞いてみる。


「ドーコ、これって精力料理だったりするのか?」


「え!? うーん……」


 ドーコも精力料理を食べてるせいで、モジモジとしている。体の大きさのせいで効きやすいのだろうか?


「だってドワルフ、前に告白してくれたのに全然手を出してくれないんだもん! やっぱり髭生えてない私なんかじゃダメであの告白は優しさだけなのかなーって思って、このシュドに頼んだ精力フルコースを食べてもダメだったら諦めようって……」


 なんだか泣きそうな顔になるドーコ。


「告白したのだってつい最近じゃないか!? こういうのはもっとゆっくりとだな。デートしたり、手が触れ合って、その時の勢いで手を握ったりそして最後にいい感じになってキスをした後とかだろ!?」


「でもそんなこと吹っ飛ばして同棲してるんだよ! そんなことを超えた状態にあるし最初の日はそんな気持ちじゃなかったけどその次の日からは、私襲われるの待ってたんだからね!」


「そっそうだったのか!!」


「ってそんなこと言わせないでよ!」


「確かに良い雰囲気には何度かなったがまさかそこまでの覚悟をしていたとは。というか俺に襲う度胸はない」


「だから今日の料理を食べて興奮が抑えきれず襲ってくるのを待ってたのに全部作戦がバレちゃったよー」


 ワンワン泣くドーコ。どうやら本当にその作戦にかけていたらしい。


「だとしてももっと簡単な方法があるじゃないか」


「グスッなに? その方法って?」


「単純に今日しない?って聞かれたら俺はすぐさまルパンダイブだったぞ」


「ルパンダイブってのが何かわからないけどそんな簡単なことで良いの??」


「俺が告白したの忘れてるのか? 俺としては一世一代の告白だったんだが」


「忘れてなんかないよ、でもどうしても自分に自信が持てなかったからさ……っていうかどうしてそっちから誘ってくれないの!」


「だから俺としては手を繋いだりって事をした後で考えてたんだよ。女性経験がないから怖かったんだよ!」


「なーんだドワルフも怖かったんだね。私も怖かったんだ。似た物同士だね私たち」


「そうだな」


「ねぇ良い雰囲気の中悪いんだけどもう私限界かも」


「何が?」


「わかるでしょ!」


「冗談だ。ほーらお嬢様をベッドまでご案内だ」


 我ながらクサイセリフだが、そう言ってヒョイっとドーコをお嬢様抱っこして水浴び場へと連れて行く。


「これすっごい恥ずかしいんだけど! ねぇドワルフってば!」


「これからもっと恥ずかしいことするんだからこれで慣れろ」


 そういうとドーコはどうなるのか想像したのか赤かった顔をさらに真っ赤にして黙ってしまった。誘っておいたのにこんなに恥ずかしがるなんて可愛い奴め!


 俺もここまでなんとなくで水浴び場まで運んだがここからどうすればいいかさっぱりわからない。とりあえず服を脱ぐ。ドーコも戸惑いつつも服を脱ぐ。今日は魔物狩りで汗をかいたしな。


 2人で一緒に水浴びをする。なんというか初めてドーコの素肌を見たがスベスベで綺麗だ。髭が生えないということだけでなく、体には毛が生えていなかった。これなら髭が生えないのも無理はないだろう。


「なんか今変なこと考えなかった?」


「いっいやそんなことはないぞ! 毛が生えてなくて綺麗だなーと思ってたくらいだ」


「もう! コンプレックスなのに好きな人に褒められるとなんかどうでも良くなるね」


 水浴びを終え服を着替えて寝室へと向かう。初めてドーコの部屋に入ったが綺麗に整頓されている。てっきりマジックアイテム用の宝石やらが散乱してると思ったんだが。


「今日は絶対落とすつもりだったからね! ちゃんと片付けて置きましたよっと」


 心を読まれた。


「じゃあ始めようか」


――はじめての長い長い夜が始まった。

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