第18話 はじめての商人
「はーい! ドワルフ、商人が来たよ!」
おぉ待ってました。2人で玄関へと向かう。そこには大きな鞄をぶら下げ、馬に乗った髭を生やした外国人のような男がいた。
どうやらこの世界のヒューマンは日本人のような顔つきではないらしい。
「お邪魔しますーおぉおぉこれはドーコ様と、そちらの御人は?」
「こっちは私のパートナーのドワルフ」
「おぉおぉそうで御座いますか。だからあれをリストに追加したのでありますね。では今回のお取引を始めましょう。いつも通り物々交換でよろしいのでしょうか?」
「あれってなんだ?」
「おっと少々口が滑ってしまいましたな」
「もう! それはいいから! それより今回は2人だったしいつもより多くできたからお金もよろしくね」
「了解致しました。早速商品を見せていただけますか?」
商人を鍛冶場へと招き入れ商品を見せていく。
「おぉおぉドーコ様遂に魔物の皮を扱えるようになったのですね! これで軽装備の冒険者にも商品を売ることができます。しかし魔法印を入れ忘れているようですが?」
「……入れ忘れたんじゃなくてそれはドワルフが作ったものだよ」
「でっではここにある魔法印の入っていないものは、もしかして全てドワルフ様が作ったものなのですか?」
「そうですが何か問題がありますか?」
「いっいえ問題なんて滅相も……いやこんな高品質の物が魔法印無しとなるとどうやって売値を付けるかどうかが非常に難しくてですね」
「安値でもいいので買い取って頂けると助かります」
「やっ安値なんてとんでも御座いません。そんなことをしてしまってはドーコ様に申し訳がたちません。しかし困りましたね。今の手持ちではとても支払いきれませんね」
「えーいっぱい持ってきてねって言ったじゃない!」
「それにしても余りに規格外でして、いや申し訳ございません。残りの分は次回でもよろしいでしょうか?」
「うーんとじゃあサービスするから私たちをヒューマンの国に連れて行ってくれない?」
「今すぐとなりますと馬にそのまま乗っての旅になりますがよろしいんですか? 私共としてはドーコ様は上客ですので最高のおもてなしを」
「うーんとドワルフ、どうする」
「初めての旅だしな出来れば快適な馬車に乗りたいな」
「それもそうだね。じゃあシュドさんそれでよろしくね」
この商人はシュドって名前なのか。髭を伸ばしてるし、もしかしてドワーフ担当の商人だったりするんだろうか?
「それでは本日のご会計ですがこちらでよろしいでしょうか?」
そう言ってドーコに領収書を見せる。
「うん! 残りの分はヒューマンの国で直接売ることにするよ」
「助かります。それではこちらを」
と言いながらどう考えてもその鞄には入り切らないエールの入った樽や食べ物が出てきた。これがもしかして伝説の魔法鞄か!?
「ドーコ。あの鞄はマジックアイテムじゃないのか?」
「ん? そうだよ、まぁでも私が求めてる物じゃないけどね」
「これでしたら当商人ギルドでも扱っておりますよ。このサイズでしたらザッと150万ルラとなっております」
「なぁドーコそれってどれくらいの値段なんだ?」
「そうだねー。私たちが休まず半年作り続けたら買えるんじゃないかな」
あの作業を半年続けるってことは相当な値段なんだろう。いつか手にしてみたいが当分先になりそうだな。だがこのシュドという男そんな高価な鞄を預かってるってことは相当な実力者なんだろう。
「それにしても私たちにこんなに商品を卸していいの? この後
「それがですね。連絡が取れないので御座いますよ。ですので今回はドーコ様の所だけになっております」
連絡が取れない?そういえばずっとドバンが配信に来ていないのが気になってはいたが、単純にみていないだけじゃなく、何か理由があって見れなかったのか?
「ふーんまぁそれなら仕方ないね。じゃあ受け取るものも受け取ったしありがとう!」
「いえいえこちらとしましても、新しいお取引相手が増えまして嬉しい限りでございます」
あっそうだ。まだ俺のとっておきを見せていない。
「ちょっとだけお時間頂いてもよろしいですか?こちらを見ていただきたくて」
そう言って完成したフルアーマーの上にかけていた布を取る。
「こっこれは一体!? こんな精密な装飾見たことがありません! 縁に使われている金がまたいいアクセントを! コンコンッ それにこの丈夫さ、ここでしか取れないドワーフ鋼! 王が来ていてる物より装飾から何まで遥か上の物!?」
何という緻密な分析力。まるで料理漫画の感想みたいだな。貴族じゃなくて王様レベルとなったか。これはひょっとして物凄いものが出来てしまったのか?
「もっ申し訳ございません、取り乱してしまいました。それにしましても、重ね重ね申し訳ないのですがこちらを今すぐ取引することはできません。ギルドマスターに見て頂かなければ」
やっぱりそうなったか。まぁ想定通りだし問題ないがここは配信を宣伝するチャンスだ。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はメインジョブ配信者、サブジョブなしのドワルフと申します」
「おぉおぉこれは私としても失礼致しました。私はメインジョブ商人、サブジョブ配信者のシュドと申します。以後よろしくお願い致します」
「それでー先程の話なんですが、今売れないというのはこちらとしても想定外でして、もしよろしければ私の商品を宣伝するためにも私の配信を広めては頂けないでしょうか?」
「それくらいのことなら是非。その代わりですが少々買い値を下げて頂けたりしませんか?」
相手も上手いな。お互いに配信をフォローし合う。
「はい。それではその方向でよろしくお願いします」
「私達もヒューマンの国に行きますし、その時にでもギルドマスターに見ていただくことにします」
「いやーそれにしてもジョブに鍛冶師が入っていないのにここまでの物を仕上げるなんて、本当に凄いですね」
「ドワルフばっかり褒められてずっるーい! ねぇシュドさん私の自信作も見てよ」
そういいドーコはあの大斧を取り出す。それは非売品じゃないのか? まぁ俺ばっかり注目されて対抗心が芽生えたんだろう。
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