第6話 鍛治見習い
結構な種類の金属と鉱石があった。ふと疑問に思うことがあった。どうしてこんなにドーコは金属を持っているんだろう。そもそもどうやって生活の資金を得ているんだろうか。金属を叩きながら尋ねてみる。
「なぁドーコ。何でこんなに金属や鉱石があるんだ? もしかして1人で鉱山に行ったりしてるのか?」
「そんな訳ないじゃん! まぁ少しは取ってきたりするけど殆どはヒューマンの商人と物々交換してるんだよ」
「ほー結構ドーコって人気があるのか? 金鉱石だって結構あるし、でもどうしてドワーフの村で商人は買わないんだ?」
「それはドワーフの村の人たちは見習いが作った物しか売らないんだよ。それでもヒューマンが作った物よりかはかなり良いんだけど、まぁもちろん私が作った物よりは劣るんだけどね!」
「でもそれだったら長とかが作った装備ってどうなるんだ? まさか自分で使って戦うわけでもないだろ?」
「あー、一般的にドワーフは師匠に認められると作品に自分の印を刻む事を許されて、作った物は自分が認めた相手にしか売らなくなっちゃうんだよ。私も一応認められててほらそこの剣にも印が刻んであるでしょ」
確かに置いてある剣にはドーコと印が刻まれていた。
「本当は私も認めた人だけに売りたいなーって気持ちもあったんだけど、1人で暮らして研究を続けるってなるとあれこれ構っていられなくなっちゃったんだよ……」
ちょっと悲しげに落ち込むドーコ。自分が丹精込めて作った物が雑に扱われて壊れるのは確かに嫌な事だろう。
「それでも自分の意思を貫くために作品を売ったのは偉いと思うぞ」
「えへへ、そっそうかなぁ。だったら少しは報われたかも」
可愛い。いつもこれくらい素直だったらいいのに。そう言いつつ鎧を完成させていった。
★ ★ ★
ここにある全ての素材を使ってフル装備を完成させた。
「ねぇ……その【ドワーフの知恵】私にくれない?」
「くれないって言われてもそんなふうに渡せる物なのか?」
「わ た せ な い よ!! 普通初心者だったらまず師匠の技を見て盗むことから始まってその時点で大体1年、それで実際に作り始めてから試行錯誤して3年、認められる装備ができるまで10年って言われてるんだよ!!!」
鍛冶仕事が得意そうなドワーフでもそんなに年月がかかるのか。
「だからいつ躓いて私に頼ってくるかなってずっと待ってたのに、どんどん作っていくし! しかもどんどん作業速度が上がってるし意味がわかんないよ!?」
確かに途中からより一層作業速度が上がった気がする。もしかしてと思いマイページと念じる。
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名前 ドワルフ
レベル 12
視聴者数 2
フォロワー 2
メインジョブ 配信者
サブジョブ なし
スキル なし
ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】
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レベルは鍛冶仕事でも上がるのか。それにしても【ドワーフの神】か、なんだかとんでもない事になってきたな。ちょっとドーコに意地悪してみるか。
「なぁドーコ、【ドワーフの知恵】が無くなった」
「へっ!? でも作業速度はどんどん上がってたよ?」
「あぁ、【ドワーフの知恵】がなくなって【ドワーフの神】が増えた」
「ふぇ!? そっそれはなくなったんじゃなくて、しっしん……か……」
ガクッ
倒れそうになったドーコを支える。
「それにしても一体何が条件だったんだろうな」
「知らないよぉそんなことぉ……そもそも【ドワーフの神】なんてスキル御伽噺でしか聞いたこと無いよ。でも一杯金属とか皮とかで作ったからじゃない? 特にでダマスカス鋼でナイフを作った時から速度が変わった様な気がするよ」
んーひょっとすると【ドワーフの知恵】を持った状態で一定種類以上の加工をすることで【ドワーフの神】進化するのか?
「だとしたら【ドワーフの知恵】すりゃ持ってれば【ドワーフの神】に進化するのは簡単なんじゃ無いか?」
「まず前提条件が全然違うよ! 多分知らないんだと思うけど【ドワーフの知恵】を持っていても、普通ドワーフには向き不向きの素材があってドワルフみたいにこれだけの金属と皮を完璧に使いこなすことなんてできないんだよ!」
「そうだったのか、ってじゃあそもそもこの試練自体不可能なことじゃ無いか! この腹黒リ」
「ロリって言うな! それと今回はただ単に意地悪するんじゃなくて、どの金属に適正があるかテストするつもりだったんだよ。ダマスカス鋼は普通の金属と違ってドワーフでも上手く扱える人が少ないから、絶対に詰まると思ったのにそこから更に速度が上がるから私びっくりしてたんだからね!」
「そうだったのか。それだったらどうしてそんなにも沢山の金属や皮があるんだ? ドーコは全部使えたりするのか?」
「そうだよって言えたら良いんだけど、とにかく沢山の物を試してもマジックアイテムを作ろうと思ったんだよ。まぁ殆どは上手く扱えなくて置きっぱなしだったんだけどね」
物悲しそうにしてドーコはそう呟く。
「まぁそれで俺のスキルも進化したしこれも全部ドーコ師匠のお陰だよ。 本当に感謝してる。ありがとう」
「そうだよね! これも全てきっと師匠である私の計算通りだー」
半ばやけくそ気味に胸を張るドーコ。何とか師匠の顔を潰さずに済んで良かった。
「すっかり集中してお昼ご飯食べ損ねたし、進化のレベルアップも兼ねて宴会でもしよっか!」
「ちょっと待てドーコ。重要な事を忘れているぞ」
「重要な事? なんかあったっけ?」
「ここにある物全部扱い切れたらなんでも言う事聞くんだったよな?」
「あっ…… もっもしかして何か変な事考えてるんじゃ無いだろうな! たっ例えばエッチな事でも私にするつもり!? 宴会で酔わせて何考えてるだよ! 髭が生えてない私を襲うなんてロリコンなのか!?」
人からロリと言われるのは嫌なのに自分で言うのはいいのか。じゃなくて
「俺はロリコンじゃない! それに変なこと考えてるのはそっちの方だろ! 俺はこの世界の配信について知りたいんだ。どうやらドーコは結構詳しいみたいだしな」
勘違いしたのが恥ずかしかったのかドーコの顔は真っ赤だ。
「なっなんだそんな事か。じゃあ宴会の時にでも教えるよ。でもそうだよね私みたいな髭の生えてない女なんか需要ないよね」
なんだか落ち込ませてしまった様だ。ここは正直に俺の気持ちを言ってみるか。
「俺はロリコンじゃない、それは間違いない。だがそれと俺がドーコの事を可愛いと思っている事は別の話だ」
……
今度は俺の顔が赤くなる。空も日が落ちかけて真っ赤な夕焼け。とりあえず今日も宴会だ。今度は追い出されないだろうし安心して酒が飲めそうだ。
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