【解釈】わたしのアール
蓬葉 yomoginoha
1F 三つ編みの先客
殺風景の屋上、当然誰もそこにはいない。一歩踏み出すごとに足音が響く。
下の階に誰かがいたら聞こえてしまうかもしれない。すり足気味に私は柵の近くに向かう。
(あと数歩。そしたら、私は……)
申し訳程度の
「もうっ……」
どうせ誰もいない。誰かがいたとしても
スカートをももの上までたくし上げて、柵の向こう側に降り立つ。
(泣かないでくれよ)
(泣いたっていいじゃない。どうせ、これで
遺書はない。わざわざ書き
ただ、せめてもの
これはささやかな非難にすぎないのだから。
ポケットから携帯電話を取り出して靴に入れる。もう、誰かとつながるツールは必要ない。
頭上を見上げる。雲一つないピンクの空。こんな美しい空へゆけるなんて幸せだ。
眼下には
深呼吸をして前方の景色を見つめる。遠くにビルと茜色。
決意を胸に瞳を閉じて、私は体重を前に
落下とともに、全てが壊れて終わる。そのはずだった。しかし、感じるのは髪を引っ張られる小さな痛覚だけだった。
「えっ?」
振り返ると、制服姿の、見たことのない女の子が冷笑を浮かべて私の三つ編みを乱暴に握っていた。
「うっ……!」
「やめなよー。そんなこと」
「えっ……?」
「え、とか、う、とかしかいえないの?」
「いや……」
「ほら座って」
彼女は私に手を差し出した。わけもわからず、私はその手を握る。ひどく冷たい手のひらだった。
すると彼女は「ふっ」と
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