輪廻転生の現実

K

輪廻転生の現実

気が付いたら大きな湖に浮いていた


「おまえ、何度目?」


声の方を向くと、不自然に水に浮かぶ人々の姿があった


何なんだ・・何だこれは、夢か?



バキ!



乾いたその大きな音と同時に強烈な痛みが体に走った


うぐ・・ぐ・・



その瞬間、再び目が覚めた



今度はさっきより狭い水場に、浮いている


まただ・・・


その時、轟音と共に空から巨大な怪獣が襲ってきた


危ない!!



バキバキ!!



全身が砕ける音がする

気が狂いそうな痛みがまた襲ったかと思うと、

次の瞬間、また目が覚めて水に浮いている


さっきの痛みの記憶がまだある


恐怖がよみがえる


逃げたい!どうすれば・・

!!


体に力を入れたその時、全身が頼りなく空中へ飛び立った


と、飛んだ?!何だこの夢は


目がぼんやりとしか見えない

半分風に流されながらフラフラと、飛ぶ


のどが渇く、たまらなく渇く


血・・・


嫌だ・・血なんて


血だ・・血がほしい


人の、血が、ほ、し、い・・・


何でこんなことに・・



ぼんやりしていた視界の前方に大きな巨人が現れた



駄目だ・・我慢できない・・


「おーい!きこえるかー!!」


精一杯叫ぶ



パーーーーーン!!!!



強烈な力で体が・・つぶされる


また激痛が走る


く、くるしい・・・・


まだ息があるようだった


地面だろうか、大きな石が転がっている


なんで・・


次の瞬間、上から真っ黒いものが降ってきたかと思うと、真っ暗になった



そして目が覚めた・・・・



「おまえ、何度目?」



またあの声だ

彼は隣にいるようだった


「何回目って?これは一体何の・・」


と言いかけたところで、彼は畳み掛けるように全てを私に教えたのだった



私は、人を傷つけてきた

自分だけが良ければ他人などどうでもよかった

人が迷惑だとか思うことも好んでやっていた

それがかっこいいと思っていた

自分の人生だった

なんだかんだいい年まで生きていたし

子供や孫にも恵まれた

幸せだった

いい人生だった・・


また生まれ変わっても、同じ人生でありたい


そう、思った

ここにくるまでは



彼はもうすぐ1000回目の”蚊”だそうだ



彼は私に「何年生きたの?」と聞く


「65年です」


「そうか、まあ大変だけど、どうしようもないから頑張れ」


そういうと慣れた身振りで飛び立っていった



私は人に迷惑をかけてきた

そんな人生だった


私はこれから65年の歳月を繰り返し”蚊”として生きていく


彼が言うには、まれに途中からハエになることもあるそうだが、理由はわからないらしい


ともあれ私はこれから先、何回も何回も人に叩かれ、つぶされ、その度に、恐怖と激痛を繰り返しながら、


65年を過ごす


この間、私には人間として生きていた頃の記憶がある

妻や子供、仲間たちの顔や名前もはっきり覚えている


だが、その言葉は届かない


私はこれから何千回、何十万回と”蚊”を繰り返すだろう

そして何千回、何十万回、叩き殺され、毒殺されるのだ




これは私からの忠告だ


いい人生を。












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輪廻転生の現実 K @mk-2K21

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