『火の島』 下の上の中
やましん(テンパー)
『火の島』 下の上の中
その、ブラック・スーツに包まれた、サングラスの巨体は、まさに、宇宙ごきマフィア、という感じです。
ところが、出てきた声は、なんとも、ちぐはんぐ、な、聞き覚えのある、かわいい声だったのです。
そうして、パトカーの中からは、次に、焼き鳥おじさんが、現れました。
『どうなってるんだか、よくわからないが、敵ではなさそうだ。』
すると、その黒スーツ姿の大男の足元から、な、なんと、大量のごきが出現したのです。
『わあ~~~~~~~~! こりゃ、なんだあ!』
焼き鳥おじさんが叫びました。
おじさんは、踏みつぶそうとしました。
しかし、後から後から、とてつもない数のごきさんたちがあふれ出て、しかも、きちんと隊列を組んでゆくのです。
『ちょっと、まってください。これは、『宇宙ごき』ではないです。地球ごき軍団です。』
『はあああ? なんだあ?』
そう言ってる間にも、ごきたちの隊列は、どんどん大きくなりましたが、一方、巨体の男は、空気の抜けた風船のように、しぼんでいってしまいます。
最後に自動車の中から現れたのは、ねこママだったのです。
『やましんさ~~~~ん。元気い~~~~~~。にゃんこ。』
『はあ。猫がしゃべってる。』
焼き鳥おじさんは、いささか驚嘆したようです。
すると、いちごきが、前に進み出ました。
『こんにちは。自分は、ゴキ軍団南西特殊部隊隊長、”ごきらららん”。で、あります。ごき。やましんさんちのゴキ軍団ごき大将から協力を要請され、まいりました。我々は、宇宙ゴキとの非公式な戦闘に特化した、特殊部隊であります。ごき。』
『非公式な戦闘?』
『さよう。我々は、地球人類の征服作戦に、真向から反対はしていないが、必ずしも賛成ではない。ごき。したがって、表向きの裏側では、けっこう、戦闘が起こっているのであります。この星のくまさんたちは、もともと、独立した存在で、けっこう巨体な、誇り高き存在でしたが、宇宙ゴキの『くまさん弱体化ガス爆弾』の影響で、身体が小さくなり、おとなしくなっています。ごきな。我々は、この星のくまさんたちの解放を決行いたします。ぜひ、あなたがたも、ご協力ください。ごき。』
『て、言われても、ぼくらは、兵隊じゃないし。』
『もちろん、無理な戦闘は求めない。ごきら。その代わり、このパートカーで、あの、火山に飛んでほしい。我々では、サイズが合わない。いまの、くまさんたちも、ちょっと小いが、まだ、役に立つ。ごき。そこで、宇宙ゴキが開発した恐るべきガス兵器を改良した、この『宇宙ゴキふにゅふにゃガス弾、ガス発生装置』を火口に投入してください。ごき。すると、この星にいる宇宙ごきは、噴出する特殊な火山ガスにより、弱体化します。人間やくまさんには、悪影響は、ない、はず、ごきな。ただ、あの、火山は、最後の部分は、パトカーでは行けないのです。あの火口の上空は、飛べないのです。だから、あなたがたが、火山に登って、確実にこれを仕掛けてほしい。』
『ぬあ。むちゃくちゃな。』
『あたしも、手伝うにゃん。危ないとこは、あたしが入るにゃん。装備は準備したにゃんこ。ガス・マスク、パワー・スーツ。長いロープ。登山靴、つえ、ハンマー、金具類。その他いろいろにゃん。』
『はあ~~~~。ぼくは、山登りなんて、したことないし。年だし。そんな重いモノ、持てないし。』
すると、ぼくの自転車の荷物から、あの、くまさんが顔をのぞかせておりました。
『ぼく、手伝うよ。仲間も、たくさん、集めるよ。』
『うわ、こいつも、しゃべったああ~~~~!』
びっくりしたのは、ぼくも同じです。
*************** 🐻
『火の島』 下の上の中 やましん(テンパー) @yamashin-2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます