十二月の彼
十二月の彼
年毎に送り先の無い贈答品を用意するようになったのは何時からの事だったか。受け取り手を欠いた其れを時に屑籠に放り投げ、時に荼毘に付し寂寥を楽しんだ。あまり誉められた習慣ではないと自負している。スイート・テン・ダイヤモンドを購入して後は高価な贈り物を控えるよう心掛けた。もし二度目の再開が起これば文無しでは不都合も多い。指輪は蹄鉄の御守りと共に首飾りとして時折に身に着け楽しんでいる。
抑々からして、「記念日程金より手を掛けたい」と言う性分だ。人に依っては吝嗇だの物足りないだの批判を受けるやも知れないが、彼は其の辺りどう考えていたろうか。共に過ごした祭日もこの一度きりでは判断に困る。引き籠りが豪奢な催しを好むとすれば全く御笑いだが。
当時はFSMを信奉していなかった私にとって、その日はしかし別段特別と言う事も無かった。その年は降雪も無い、曇り空のクリスマスだった。近場で買い求めた洋菓子を寒空の下手掴みに貪る二人の姿は御世辞にも聖夜の恋人同士と言う風情でもない。小学生男児の身の丈に合った過ごし方と言えば、多少はそぐうのか。
遊戯場から程近い線路沿いの公園、沿道の長椅子が二人の定位置だ。駅前のファミレスはドリンクバー片手に小三時間過ごして後店員の視線が刺さる様になった為常用を避けていた。逢引の場所に拘らなかったのは年齢ゆえか、互いの性根の問題だったのか。
再開の歳には自由に使える金銭にも幅が有った。隠し金と言うと少々聞こえは悪いが、身の丈を多少背伸びしても余裕の有る蓄えは有った。それでも尚、連れ立って出掛けた記憶は数える程しか無い。此れは幼少の砌には気付かず居た彼の体質に基因する。
人いきれに酔うとでも称せば良いか、人混みを避ける傾向が有った。単純な嫌悪感とも違うのだろう。深刻に捉えなかった為に酷く無理を強いてしまった事も有る。詳細は又後述。
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