十一月の彼
十一月の彼
慶事を熟すにも得手不得手は有ると思っている。私は向きではないだろう。祝賀事の主導を取った経験と言うのは然程記憶に無い。
先に述べた劣等感の逆怨みが今日他人の幸福に対してどの程度作用しているか自覚は無いが、無関係と切り離せる程稀薄な感情でもない。捻じ曲がった性根の根底にこびり付いた石炭液のような害意は時折に首をもたげては万象を呪う思考に拘泥させる。他人を祝うなぞ以ての他と吐き捨てる心理が、今尚何処かに在る。
それでも全く孤独に生きて来た等とは言えよう筈がない。此処までに記した諸氏の例を別にして、生涯掛けて懐中に招くを良しとした輩は得ている。長いもので、三人とは既に人生の半分を越す付き合いだ。
裏を返せば、親しく交わった知己を除いて他への関心が薄いと言い換えても良いだろう。此れならば、人事の常道から大幅に外れると言うものでもない筈だ。
彼の生誕を祝ったのは一度きりの事だった。後の再会は時期が外れ、三月前を控えて入院の運びになった。病院を教えなかった義母の前で額を地面に擦り付けた話は実は誰にもしていない。あんまり悲しくて今でも思い出すと
ちょい中断
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