21
風呂上がりに、学生時代から使っている机の引き出しを開け、一枚の写真を取りだした。ベッドに仰向けになってそれを見上げる。黒たまごを買った店が端にあって、真ん中では俺とルカが立っていた。観光客に写真を撮ってくれるよう頼まれて、そのお礼にともらったポラロイド写真だった。俺に肩を寄せるルカの表情は、もちろん満面の笑顔だ。見ている方もつられて微笑んでしまうような笑顔。
俺は、それをただ眺めた。脳裡にも様々な笑みが蘇る。俺といる時、ルカはよく笑っていた。その顔を見るのが好きだった。なのに、最後に見たのは、傷ついて今にも泣きだしそうに歪んだ顔だった。そんな顔をさせたのは、この俺自身だ。
無性に腹が立ってきて、写真の中の自分に罵声を浴びせた。そんなことをしている場合じゃなかったのに。
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