第12話
「千草、プール行かない? 百々花ちゃんも一緒に」
「菜央、急にどうしたの?」
「店長から、プールの入場券もらったんだ、三枚」
バイトの最中に、菜央から唐突な申し出があって俺はうろたえた。
プールということは水着に着替える。
脱毛とか、しないといけない。
いや、それ以上に百々花や菜央の裸を見てしまうかも知れないことに動揺した。
「あれ? 千草泳げないとか?」
「ううん、大丈夫だよ」
俺は少しうわずった声で答えた。
「そしたら、百々花ちゃんも誘ってみるね」
そう言うと菜央はスマホを取り出してラインを送った。
「今週末の土曜日って、大丈夫かな?」
「うん、私は大丈夫」
俺はそう言って俯いた。
「百々花ちゃんも大丈夫だって。駅に10時に待ち合わせね」
「うん、分かった」
俺はバイトが終わると慌てて、隣駅のショッピングモールに行った。
「水着ねえ、この辺で良いか」
俺は水色のワンピースの水着を選んだ。
一万円。
高いとはおもったが、色々検討するのも面倒だった。
試着してみると、ぴったりだった。
それから、脱毛クリームを買いに薬局に行った。
家に帰ると、ムダ毛の処理をして週末に備えた。
週末、天気は良かった。
「おはよう、千草、天気良くて良かったね」
「うん」
菜央がやって来た。
健康的に日焼けしている。
短パンから伸びた足がまぶしい。
「おまたせしました!」
百々花が少し遅れてやって来た。
「じゃあ、行きましょう」
俺たちは、プールに着いた。
プールと言っても、市民プールよりもずっと大きく、流れるプールだとか、波の出るプールとか色々あった。
「どこから行く?」
百々花はフリフリのピンクの水着で、にっこりと笑った。
「そうだね、流れるプールなんてどうかな?」
菜央がマップを見て答えた。
「いいね」
菜央の水着は迷彩柄のビキニだった。
「それにしても、二人とも胸おおきいですね」
百々花がそう言うと、菜央は顔を赤らめた。
「百々花ちゃんだって、可愛い水着似合ってるよ」
「ありがとうございます」
俺は何も言わなかった。
俺たちは、流れるプールに着くと泳ぎ始めた。
暑いから、冷たい水が気持ちいい。
俺は背泳ぎで、ぷかぷかと浮いていた。
「えい!」
菜央が水をかけてきた。
「うわ、何するんだ!?」
思わず、素が出てしまった。
「ねえねえ、あの人達、私たち見てない?」
百々花が指さした方向には、若い男性三人組が居た。
「君たち可愛いね、一緒に遊ばない?」
「え、困ります」
菜央と百々花は俺を見つめた。
「お断りします」
俺はきっぱりと言った。
男達は、つまんないの、と聞こえるように言いながら去って行った。
「女同士だと、やっぱりナンパされちゃいますね」
百々花が言うと、菜央が頷いた。
「それに、千草スタイル良いし」
「え、そうかな?」
俺は気まずかった。
お昼になった。
俺たちは屋台の焼きそばを食べた。
具の少ないやきそばは、水辺でたべるとなぜか妙に美味い。
「おいしいね。私、たこ焼きも食べよっと」
「そうだね。三人で分けようよ」
俺はちょっと物足りない様にも思えたが、三人でたこ焼きを分けて食べた。
「次は波の出るプールに行こう!」
百々花が言った。
俺は百々花と菜央に着いていった。
波の出るプールで俺たちは、はしゃいだ。
まさか、自分が女の子達と水を掛け合ってキャッキャウフフなんて、遊ぶ事なんて考えても居なかった。
結構楽しいぞ、これ。
「そろそろ疲れちゃったな」
菜央がそう言うと、百々花も頷いた。
「じゃあ、帰ろっか」
俺がそう言うと、二人はそうだね、とちょっと寂しそうに言った。
俺たちは着替えに行った。
濡れた水着は意外と脱ぎにくい。
なんとか着替えを済ませると、菜央が言った。
「楽しかったね」
「うん」
俺たちは帰途についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます