第21話 審判の通知

 ピコンっ♪

 審判の通知が届けられたのは、二日後だった。

『ものとん様、購入した「血走り目玉Tシャツ」は本日無事に到着しました。わき下部分に香水の匂いがしみついている最高の状態のものを送っていただきありがとうございます! 封筒には靴跡くつあとのおまけも付けていただき、感無量です! また機会があるときは、どうぞよろしくお願いいたします!』

 いつもは吐き気をもよおすような評価コメントにも、このときばかりは、良かった……、と胸をなでおろす。靴跡も、勝手に良い方向に解釈してくれたようだ。おっちゃんの靴跡をめて、腹でも下してしまえばいい。

 勘が当たり、変態Aへの荷物は無事に届けられた。

 しかしまだ完全に安心できない。

 到着予定の荷物はあと2つ。

 変態Bと変態Cへ送ったTシャツが入れ違いになっている可能性が残されている。

 ピコンっ♪

 今度は、変態Bからの通知が届く。

 変態Aとは違って、受取完了の知らせではなく、取引ページへの追加コメントだったので、嫌な予感がした。

『ものとん様、お世話になっております。本日、荷物が届いたのですが、中身を確認してみたところ、注文していた「I❤ゴスロリTシャツ」とは異なるデザインのTシャツが入っていました。ものとん様が〝ギルマ〟で別に出品している「臓物ぞうもつうさぎTシャツ」と思われるものです。もしかすると、私に送るはずの商品と、他の方に送る商品を、入れ違いに発送してしまわれたのではないでしょうか……?』

 ……はぁ。

 と、深い溜め息をつく。

 勘が当たったのはひとつだけ。

 残りの二つは誤発送してしまっていたのだ。

 あたしは傷心しつつ、誤発送に関するネット記事を参考にしてあらかじめ考えておいた返信を打っていく。

『ヘイチュ~様、大変申し訳ございません。同時に発送手続きをおこなっていた商品と、宛先を貼り間違え、誤発送してしまったようです。現在ご購入の商品が手元に無い状態となり、ヘイチュ~様のもとへお届けすることができなくなってしまいました……。誠に申し訳ないのですが、お取り引きのキャンセルと、返金をさせていただきたく思います。誤って届いてしまった品物につきましては、そのままお手元に置いていただいてかまいません。お忙しいところ、お手数おかけして申し訳ございませんが、ご返答よろしくお願いいたします』

 送信ボタンを押し、頼むから余計なことは聞かず、すんなり聞き入れてくれ、と手を合わせる。

 すぐに返信が来た。

『「臓物うさぎTシャツ」を返送せずに、私が無料で引き取っていいということですか? つまり、私へのプレゼント、と受け取ってもかまいませんでしょうか』

 キモいんだよ、ちくしょーめ。

『はい、そうです。ご不要の場合、申し訳ないのですが、ヘイチュ~様のほうで処分していただけると助かります』ぜひとも、捨ててください。

『らっき』

 は? ラッキー?

『ものとん様、すみません、今のは入力ミスです。お取り引きキャンセルのむね、了解いたしました』

『ご理解いただき、ありがとうございます。それではキャンセル手続きをおこないます。取引ページの更新後、同意の確定ボタンを押していただけるようにお願いいたします。この度は、こちらの不手際ふてぎわで、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした』

承知しょうちいたしました。この度はどうもありがとうございました\(^o^)/』

 ……ふぅ。

 変態Bへの対応は成功した。

 とどこおりなく進んでくれて助かった。

 この分だと、変態Cの処理もきっとうまくいくだろう。

 そう思ったのだけど、甘かった。

 最後に残ったこの変態Cが、とんでもない地雷だったのだ……。

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