第五章 死にたくなるような後悔に苛まれるとしても 財津利光1
鉄くずの中
本当に好きな人としかつき合うつもりがないから、年齢=彼女いない歴でも一切恥ずかしくない。
そんなふざけたことを大真面目に言えるやつらを、利光はクズの意気地なしの大バカ野郎だと思っている。
まったく、童貞野郎の思考ときたら。
自分がアインシュタインより頭がいいと思っていないくせに、メジャーリーグのピッチャーよりすごいボールを投げられないと理解しているくせに、こと恋愛に関しては、自分のことを史上最高の恋愛マスターだと本気で思い込んでいる。
出会い方の綺麗さや、歴代の彼女の数なんて些細なことなのに、マッチングアプリやナンパを否定するばかりで、自分からはなにも行動を起こさない。
そういうやつに限って、本当に好きな人ができても、その恋は結ばれずに終わる。
本気で落としたい相手に出会った時、それが初めての恋愛になるというのに、自分がなんのミスもなくその恋を成功させられると思い込んでいるのだから。どうでもいい女での練習もなしに、意中の相手を落とし、自分に惚れさせられるというアホな考えをマジもんで決め込んでいるのだから。
利光は、そういうやつらが腑抜けた自己肯定を繰り返している間に、鍛練を重ね続けようと決めている。
純真とは程遠い、好意などあってないに等しいまがいものの恋愛を経験するからこそ、本当に手に入れるべき愛が際立つ。
鉄くずの中にあるからこそ、ダイアモンドの輝きは尊いのだ。
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