第3話「人気モデルはワナビーブルー」1
「あ、これ明日乃ちゃんがCMやってるコンディショナーじゃん」
「あたしそれ使ってるよ」
「ホント?あたしも買ってみよっかな~」
女子高生2人が手にとったコンディショナー
その販促用POPに大きく写っているのは、今若者を中心に大人気の若手モデル
高身長からスラッと伸びる手足、端正な顔立ちと綺麗なロングの黒髪
彼女に憧れる女の子は多く、テレビや雑誌、CMに引っ張りだこの明日乃
そんな明日乃は今日もCMの撮影のためにマネージャーと共にタクシーで現場へ向かっていた
「ちゃんと寝れてる?」
「大丈夫ですよ。睡眠は何より優先してますから」
「そう、それなら良かった」
最近は役者としてドラマへの出演も果たし、スケジュールはとてもハードなものだ
今日も朝早くからの現場入りのため明日乃の体調を伺うも、彼女はいつもと変わらず凛々しく飄々としている
あまり喜怒哀楽を大きく表情や態度に出すタイプでは無いのでマネージャーとしては彼女の本心がイマイチ掴めず、もしもやせ我慢をしているとしたら...と内心いつも穏やかではない
「聞いてると思うけど今日はウチの事務所から他に2人モデルが呼ばれてるから」
「えぇ、最近はあまり事務所でお会い出来てなかったので楽しみです。」
明日乃が軽く微笑みながら答えるが、その言葉は心からの言葉なのか、今この場の会話を繋げるための適当な相槌なのか、担当になって6年のマネージャーですらまだ心を開いて貰えていない気がして、上辺だけの会話のようなやりとりに感じてしまう。
「そういえば、写真集また重版されるらしいわよ」
「本当ですか?それはありがたいですね。」
「次写真集出す時は水着のグラビアカットでも入れちゃう?」
「それもいいですね。皆さんが喜んでくれるなら」
冗談のつもりだったのになとマネージャーはやはり彼女との会話のもどかしさに頬杖をつきやや不服そうに窓の外へ顔を向けた
「うへぇ~!このために働いているようなものだよなぁ!!」
上機嫌な美瑠は両手にアニメショップの袋をぶら下げたまま商業施設へと足を進める
「おいおい、まだ買い物をする気なのか?」
「月刊タマリクを買うのを忘れてたから本屋に寄るだけだよ」
「やれやれ、買い物もいいけど他の仲間を探すのも忘れないでくれよ?」
「わかってるよ、でもここ数日敵も現れないし平和な時に目一杯休息をとらないとね」
「うーん、たしかに一理ある...」
美瑠のリュックからひょっこりと顔を出していたビョーシンが顔をひっこめる
本屋へ入るとすぐ目の前に須田明日乃の写真集が並んでおり大きなパネルが展示されている。
(あ、この人モデルの...確か私と同い年だったような...)
ふと写真集を手に取る、袋で密封されている為中身は見れないので表紙と裏表紙を眺めてみる
(綺麗な人だな...テレビでもよく見るし、それに比べて私は...同い年なのにこんなに違うのは何か悔しいなぁ...)
溜め息をついて写真集を戻す、近い友人の成功だけではなく、同い年というだけの有名人にまで嫉妬して劣等感を抱いてしまってはいよいよ人間としてダメな方へ進んでしまうかもしれないと、気持ちを切り替えて目当ての月刊誌を探す
月刊誌を購入し、商業施設を出て駅へ向かう途中でなにやら人集りが目に止まり、美瑠もその輪へと混ざりに行く
人集りの先に何があるのかよく見えないが周りの人々がスマホを触りながら口々に呟いている
「もしもし?いま目の前で明日乃ちゃんが撮影してるんだけど」
「本物の明日乃ちゃんだ~」
「綺麗~」
「あ、いまこっち向いた!」
どうやら先程の写真集の須田明日乃本人が撮影をしているようだ
スタッフらしき人の注意喚起の声も聞こえてくる
せっかく芸能人が目の前にいるのだから一目見てみたかったが、あまりの人集りで彼女の姿は全く見えない
仕方がないので諦めて帰ろうと、美瑠は再び駅へと向かう
「以上で終了でーす!お疲れ様でした!後は撤収作業を行います!」
最後のカットを取り終え本日の撮影が終了した。明日乃はスタッフや監督に向けて一礼し、マネージャーの元へ
「お疲れ様、外での撮影だとやっぱりギャラリーが凄かったわね」
「私に注目してくれるというのはとてもありがたいですよ」
軽く微笑みながら近くのパイプ椅子へ腰掛けてマネージャーから水を受けとる
「じゃあ私ちょっと監督さん達にお礼の挨拶してくるから」
「はい、私も行きましょうか?」
「大丈夫よ。ちょっとここで休んでて」
「そうですか、ならそうします」
監督やプロデューサーへ頭を下げながら話し込むマネージャーの姿を眺めながら明日乃は水を飲みながら、やはり自分も行くべきだろうかと思案していた。
「ハァ~...みんな須田明日乃ばっかり、何なのよ!私達はあの子の引き立て役ってわけ!?」
撮影現場から少し離れた場所で共演者のモデルの1人が目に涙を浮かべ帰路についていた
「おまけにあの子はタクシーで現場入りしてるのに私は電車...同じ事務所、同い年なのになんでこんなに差があるのよ!」
悔しさのあまり手に持っていたペットボトルを地面に叩きつける
「むぅ!?なかなかに強力なエネルギーを感じるぞ!!」
彼女が発したアキラメエネルギーに反応したコーカイが彼女の目の前へと降り立った
「ヒッ...な、なに!?ドッキリ!?」
「貴様のアキラメエネルギー、利用させて貰うぞぉ!!!」
「キャアアアアアアア!!!!」
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