しんちゃんの気持ち

しんちゃんの飼い主

第1話 ぼくの名前


ぼくに会いに来た人間がいた。

知らない人間に抱っこされて緊張した。


また同じ人間がやってきた。

今度は狭い箱に入れられた。

箱の中は狭くて、揺れた。

気分が悪くなって、吐いた。


やっと箱から出られたら、大嫌いなお風呂に連れて行かれた。

気持ち悪いし、最悪だった。


ドアの隙間から女の子が覗いていた。

早速挨拶したけど、嫌な顔をされた。

一緒に遊ぼうって誘っても無視された。


しょんぼりしてたらまた箱に入れられた。

少し我慢してたら、別の場所に着いた。

どうやらここが僕の家みたいだ。

疲れたし、ふかふかそうなところで寝てみた。


気付いたら寝てた。

お腹が空いてきたので、人間を呼んでみる。

いつもと同じごはんが出てきた。

仲間に取られる心配がないから初めてゆっくり食べれた。



急に真っ暗になって、ひとりにされた。

怖くて、寂しくて、泣いた。

よじ登って外に出た。

人間が戻ってきてまた入れられた。

上から出られないように塞がれてしまった。

泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。


朝になったみたい。

「おはよう、しんちゃん」

昨日の人間が話しかけてきた。


今日もいつもと同じごはんが出てきた。

ゆっくり食べれた。


人間が撫でてくれる。

抱っこしてずっと話しかけてくる。

「しんちゃん」「しんちゃん」


どうやらぼくの正式な飼い主はこのふたりになったみたいだ。

そしてぼくの名前はしんちゃんになったらしい。

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