右ゴーレム山中腹・御神体神殿

③はぐれルググ聖騎士団は、自分たちの支部が欲しい

 登山者で賑わう右ゴーレム山の登山道──山の中腹広場から望む絶景。

 ここから上級登山者は、さらに頂上を目指して登っていく。


 その中腹広場の絶壁に建てられた、石造りの神殿階段を下ってきた者たちがいた。

 首から下を、聖なる紋章が描かれた鎧に包まれた【ルググ聖騎士団】の一行。

 下りてきた神殿を見上げて、両目にピエロのメイクのような刀傷があるコトから、仲間内から『クラウン』と呼ばれているリーダー男が呟いた。


「はずれだったな……封印された魔獣じゃなくて、魔獣の痕跡だった……なんだ、あの魔獣が座って凹んだ尻石ってのは。その魔具、本当に使えるのか?」


 手にした魔具を見ている小柄な、片メガネ女性騎士が、少し曖昧な返答をする。

「たぶん……」

「たぶんじゃ困るんだがな、オレたちハグレ聖騎士団が自分たちの支部を持つことを、中央湖地域のルルグ聖騎士団本部に認めてもらうためには──魔獣を復活させて、操れるようようにならないといけないんだからな」


 はぐれ聖騎士団の中で少しキザなヤサ男が、髪を掻き上げながら言った。

「ボクの魅力を持ってすれば魔獣の一匹や二匹、簡単に操れるさ……ふふっ」


 腹の肉が甲冑の隙間からハミ出ている、戦斧を持った巨漢の聖騎士男が、ヤサ男の言葉に腹の肉を揺らす。


 頬にハートのタトゥーを彫った。軽い感じがする、成人女性聖騎士が。

「あはっ♪」と、笑う。 


 クラウン、片メガネ、キザ猫、ハミ肉、頬ハートの五人が。これからどうしょうかと思案している中。

 少し離れた展望場所ではクケ子たち一行が、絶景を満喫していた。

「この場所が、その昔……天下統一を目指した、姫武将が決意を固めた。天下取りの展望ぜら……姫武者は左ゴーレム山の山城から初代魔王を名乗って、国取りの一歩を踏み出したぜら」


 魔獣探索の魔具を眺める片メガネが、アリャパンゴラァに近づいていく。

「魔獣反応あり、この近くに魔獣がいます……近いです」

 片メガネは、アリャパンゴラァのアリ尻にピタッと接近して叫んだ。

「ここに! 魔獣がいる! あっ」

 振り返って、片メガネを見下ろすアリャパンゴラァ。

「バフッ? パパパパンダ?」

「ひっ!? 本物の魔獣?」

 腰を抜かした格好で、虫のように後退する片メガネ。

 近づいてきたクラウンが、クケ子に訊ねる。

「その魔獣は、あんたの魔獣か?」

「そうだけれど」

「そうか、野良魔獣だったら飼い慣らすコトもできたが……ん? 赤いガイコツ? まさか」

 飛び下がったクラウンが、剣の柄に手を掛ける。

「東方地域で有名な、赤いガイコツ傭兵か! 好都合だ、おまえを倒せば聖騎士団の中でもはくがつく」

「なぜ、そうなるぜら」


 はぐれ聖騎士団の中から、キザ猫が一歩進み出てきた。

「ここは、代表してボクが華麗にお相手しよう……そちらからも、一名代表を選出したまえ」

 魔法戦士ヤザが進み出る。

「拙者が出よう」

 対峙する二人。

 ここでキザ猫が、奇妙な動きをした。空の鞘から剣を抜いて構える仕草をしたキザ猫を訝るヤザ。

 キザ猫がヤザに問う。

「この剣は、アポやパカには見えない剣……まさか、あなたの目には見えてないというコトはないでしょうね」

 顔色が変わったヤザが、動揺しながら答える。

「も、もちろん見えているでござる……立派な装飾の剣でござる」

「装飾?」

「い、いや、貴殿に相応しい見事な剣でござる」

「見えているなら結構、参る」

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