②お花畑は大賑わい
クケ子たちは、魔王城マオーガが見える、最終宿場にやって来た。
「前に来た時よりも、華やかで賑やかになっているぜら……もう町というより都市の規模まで、発展しているぜら」
今や魔王城と、魔王城の近くに広がる迷路は、立派な観光名所となっていた。
歴史的にも、数多くの魔王討伐目的のパーティーが。突入前の準備で宿泊や装備を補強していた街道の小さな宿場村は、必然的に発展していく。
宿場のあちらこちらには、有名なパーティーの石碑や銅像が造られ。
それがまた名所となって、旅人や勇者パーティーが集まる良い相乗の経済効果を地域にもたらしていた。
クケ子が、大通りの土産物屋の『魔王城到着記念コーナー』で、土産モノを見ていると、ギルドでの宿泊手続きを済ませてきたレミファが、クケ子に言った。
「ギルドで、妙な話しを聞いたぜら……宿場の外れにある、お花畑に勝手に薬草園を作った連中がいるぜら……お花畑を見てくるぜら」
レミファの言葉に、特にやるコトも無かったクケ子たちは、お花畑に向かった。
丘一面に鮮やかな花のジュータンが広がる、名所のお花畑。
「やっぱり『戦場花』の群生は見事でら……生命力が強くて、戦いが多い場所を好み。戦闘終了数分で種から芽吹いて花が咲く……それでいて、戦場以外の場所には繁殖域を広げない謙虚さが、あたしは好きぜら」
戦場花は、戦死者の周囲に弔っているかのように遺体を避けて真っ赤に咲く。
その代わり、死んだフリをしている者や気絶した生者には「死んだフリして休んでいるんじゃねぇよ!」と、ばかりに容赦なく体に根を張って花を咲かせる。
お花畑の一角に、低い木柵で四角く区切られた場所があって、数人がしゃがんで作業をしていた。
回復呪文系の『女性神官』
白いフード付きローブを着た、ガスマスクのようなモノで顔を隠した性別不明の『闇の白魔道士』
自称天才の『秘孔師』男性。
そして、赤茶色をした球体に一つ目で、細い手足が生えた等身の『化け物』が作業をしていた。
クケ子が、近くにいた女性神官みたいな人に話しかける。
「何やっているんですか?」
話しかけられた女性神官は下を向いたまま、手下げカゴに摘み取った葉っぱを入れながら答える。
「見りゃわかるだろう……薬草採っているんだよ、買うと高いからな」
ぶっきらぼうな神官だった。
「いつも、この場所で薬草を?」
「あぁ、勝手に栽培している……あたしたちは『回復系・援護軍団』だからな……誰にも文句は言わせない」
クケ子はさらに、作業を続けている神官に質問する。
「援護軍団の人たちって、ここにいるんですか?」
「いいや、元々は『
神官の足元の地面から、マンドラゴラの地中に埋まっていた部分がピョコッと地上に飛び出す。
神官は「まだ、収穫するには早い」そう言って、マンドラゴラを地面に押しもどす。
下を向いたまま、クケ子との会話を続ける神官。
「援護軍団の連中は、赤いガイコツ傭兵が宿場の方に現れたと聞いて、征伐に向かった……もっとも、あいつらじゃ征伐なんてムリだろうけれどな」
「どうしてですか?」
「亀甲さまから、遠距離からの弓矢とか投げ槍の援護を魔力で禁止にされたんだよ……まぁ、亀甲さまからしてみたら。離れた場所から矢で狙われたくなかっただろうからな……しかたなく、援護軍団は方向性を変えた」
球体に一つ目の生物が、神官と会話をしているのが赤いガイコツだと気づいて。
隣にいる闇の白魔道士の肩をチョンチョンと、指で叩いて教える。
顔を上げた白魔道士は
クケ子を見て、腰を抜かしそうになりながら。隣の秘孔師の肩を叩いて赤いガイコツの存在を教える。
顔を上げた秘孔師は驚き、二人と一匹は狭い薬草園の端にズズズッと、尻移動してクケ子との距離を空ける。
女性神官は、さらに下を向いたまま話し続ける。
「援護軍団は、遠方から石投げたり。投石機で石飛ばしたり、尖らせた丸太とかで城の門とか壁を破壊する
顔を上げた女性神官は、間近に赤いガイコツの顔を見る。
「ひっ!? 呪われた赤いガイコツ傭兵! 敵襲だ!」
尻移動で仲間と同じ位置に後退する女神官。
神官の手の平が、回復系の癒しで光る。
はっきり言って、回復系軍団は、パーティーの中では戦闘以外に活躍の場がない。
お荷物的な存在だった、せいぜい歩き疲れた仲間の疲労を回復させるくらいしか。
立ち上がった女性神官が、頬を痙攣させながら言った。
「先に言っておく……あたしの回復呪文は、プラシーボ効果呪文だ」
「プラシーボ効果?」
「偽薬のコトだ、小麦粉でも薬だと言って飲めば効く……それと同じように、回復呪文も効くと思えば効く」
レミファが女性神官に質問する。
「で、回復系軍団はいったいどんな攻撃をしてくるんだぜら?」
女性神官は自信たっぷりに、回復技しかないコトを断言した。
「あたしらに、他軍団みたいな攻撃力は……ない」
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