最終章?いよいよ、魔王城〔二度目の〕到着!倒すかも知れない敵は魔勇者の娘『甲骨』

①魔王城マオーガに突入前には、ぜひ宿場にお立ち寄りを

 魔王城内──魔法少女シドレは自室寝室のペットで昼寝をして、夢を見ていた。

 夢の中でシドレは、自分が眠って夢を見ていると自覚している。

(また、あの夢かドスドス)

 夢の中でシドレは、パーティーの仲間と一緒に、魔法を使う者たちとの戦いに挑んでいた。

「シドレ! 法力を使う東方の坊主武闘派集団だ! 頼む!」

「任せるドスドス」

 黄色い法衣を着た坊主たちが、一斉にシドレたちのパーティーに向かって法力の法力弾を放つ。

 坊主たちに向かって、広げた手の平に魔紋が浮かび上がり。

 発射された光りの法力弾は消滅する。

「法力攻撃が消された!?」

 黄色い法衣の坊主たちは、必死に法力弾を出そうとするが出ない。

 パーティーの戦士や冒険者たちが武器を手に、坊主に襲いかかる。

「変な術の攻撃がなきゃこっちのもんだ!」

「うわぁ!」

 坊主たちをボッコボッコにした、シドレのパーティー仲間は 勝鬨かちどきをあげると、新入りの戦士が法力を無力化したシドレに近づいて言った。

「シドレさんのお陰で勝利するコトができましたよ……シドレさん?」

 シドレは坊主たちがいた方向に、片手を広げた格好のまま停止していた。

「ど、どうしたんですか? うわぁ? この人、息していない!」

 焦っている新入りに、パーティーリーダーが言った。

「おまえには話してなかったな、シドレは魔法や魔導などの、あらゆる不思議な術を無力化できる……だが、その代償で自分の時間が止まっちまう……止まっている時間は、相手の術レベルで長かったり、短かったりするがな」

「そうだったんですか」

 若い新入り戦士の視線が時間の止まっている、シドレの体に注がれる。

 シドレの胸の膨らみや、腰のくびれに、若い男の喉がゴクッと鳴った。

 リーダーが言った。

「少しくらいなら楽しんでもいいぞ……動き出す前で、本人に気づかれなかったら」

 若い戦士の手が、シドレのスカートに伸びて下着を覗くように、めくり上げた。


 数分後──時間が動き出して、意識がもどったシドレは「はっ!!」とした。

 スカートがヘソの辺りまで、めくり上げられ白い下着が丸見えになっていた。

 シドレのスカートをめくり上げた、新入り戦士は息も荒く。

 シドレの純白下着に手を伸ばして、それ以上のコトをしようとしている途中だった。

「何をしている! ドス!」

 怒ったシドレは、若い戦士の頬を平手で思いっきり引っ叩くと。

「やっぱり、こんなパーティーやめてやるドスドス!」

 そう叫んで走り去ったところで、夢から覚めた。

 ベットの中で天井を、ボーッと眺めるシドレが呟く。

「もう、パーティーを組むのは、こりごりドス」

 シドレが術を無力化する魔法を発動させている間は、時間が止まったシドレは完全に無防備になる……本来は無防備な仲間はパーティー内で守られるはずだが。

「どいつも、こいつも、 メンバーで男が加わっているパーティーは。あたしが止まっている間に変なコトばかりやりたがって……女だけのパーティーなら安全かと思ったけれど。別の意味で、さらに酷かったドスドス」

 シドレの真横から男性の声が聞こえてきた。

「そんなに、毎回、酷い目にあったのか?」

「大変だったドス」

「無防備な時に誰も守ってくれないと……そりゃあパーティー不信にもなるな」

 シドレは、声の聞こえてきたベットの横を見る。

 若い爽やかなイケメンの男が、ベットの端で両腕を∧型にして顎先を支えた格好で、シドレの寝顔を眺めていた。

 シドレが、ニコッと微笑み返す。イケメンの男も微笑み返す──直後。

「人の寝顔をまた眺めていたドスドス! 鍵を掛けた部屋にどうやって侵入した! おまえは、東洋のニンジャかドスドス!」

 シドレが投げつけたマクラを顔面に受けて壁まで吹っ飛ぶ、奇妙な形の大剣を背負ったイケメン男。

 刃の形が炎のような、波のような、チェンソーの刃のような形をした大剣を所持するイケメンが、爽やかな笑みで立ち上がって言った。

「いきなりひどいなぁ、何もしないで、ただ寝顔を眺めていただけなのに」

「それだけで、気色悪いドスドス! この変態剣士!」


 非常識剣士【ワオ・ン】……魔法少女シドレが甲骨の右腕的参謀存在とするなら、ワオ・ンは左腕的な存在だった。

 背中に背負った奇妙な形の大剣は、鞘には収まらないので。

 星型やハート型やカラー水玉が浮かぶ、デコスライムが大剣の表面を包んで鞘の代わりになっている。

 ワオが、シドレに言った。

「ところで『盗賊軍団』の連中、どこにいるか知らないか? レアなアイテム持っていたら見せてもらおうと思ったんだけれど」

「知らないドスドス」

「そうか、甲骨さまが五大軍団を広間に集めて、士気を高めるアレやるみたいだけど……一緒に見る?」

「遠慮するドスドス、ナニ・ヌネ野の世話で手一杯でドス」

「そうか、じゃあオレ一人で見てくる、邪魔したな」

 そう言ってワオは、シドレの寝室を出ていった。腰のポケットからはシドレの純白下着が覗いていた。


 魔王城、軍団集合広間──軍団員ごとに別れて立ち並ぶ、五大軍団。

 壇上に立った魔勇者の娘『甲骨』が、十九歳の姿で言った。

「あたしは、無敵の五大軍団を作り上げた……ゴリ押し力押し、オレたちが主役だ! 文句があるか【リーダー軍団】」

 リーダー軍団が。

「おおぉ!」と声を張り上げる。


 甲骨の姿が、今度は幼女に変わる。

「不思議大好き、怪しい力で敵を倒す【術師軍団】」

 術師軍団が、不思議な雰囲気を演出して。

「どろ、どろ、どろ」と声を出す。


 甲骨の姿が三十歳代の女性に変わる。

「資金調達ならお手のもの、人生お気楽【遊び人軍団】」

 遊び人たちが軽いノリで。

「イェェイ!」と騒ぐ。


 甲骨の姿が二十歳代に変わり、次の軍団がいるはずの場所にいる、一匹の異世界ネズミを見て少し困り顔で言った。

「えーと、不在だけれど……ダンジョンのお宝見つけるプロフェッショナル。ついでに他人の家に無断で忍び込み、勝手に薬草や回復薬を見つけて持ってくる【盗賊軍団】」

 ネズミがチューと鳴く。


 五大軍団、最後の軍団が整列しているはずの場所には、小石を乗せた書き置きがあり。

『薬草園で薬草採取しています』そう書かれていた。

 老婆姿になった甲骨が、腰をさすりながら言った。

「不在だけれど……みんな頑張れ地味軍団、離れた場所から石投げる【回復系・援護軍団】」

 置き石の下の紙が風でめくれる。


 若い姿に変わった甲骨が五大軍団を鼓舞する。

「我が軍団に敵対する者よ、怖れおののけ! 無敵の五大軍団! ここにあり」

 軍団員の「甲骨!」「甲骨!」の大合唱が広間に反響した。

 名前を連呼されて、恍惚とした表情で赤面している魔勇者の娘を、壁に背もたれて眺めていたワオ・ンは、静かに広間を出た。

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