②軽い『遊び人軍団』登場

 クケ子たちが屋敷に到着すると、ドアを開けて一つ目モノアイの男性執事が出迎えてくれた。どうやら、館の主人から旅人が訪ねて来たら何日でも泊めるように、日頃から言われているらしい。

 屋敷内の通路を、先に立って歩きながら一つ目の執事が言った。

「旦那さまは、お忙しい方で滅多に屋敷には帰ってきません……二階の客室を自由に使ってください……時にみなさんは、ここに来る途中」

 立ち止まった執事が、一つ目でギョロと、振り返って言った。

「妙な連中に会いませんでしたか? ダークエルフの女性がリーダーを務めている遊び人の連中ですが?」

「いや、会わなかったぜら」

「そうですか……最近、この町をうろついている。魔勇者の娘の配下らしい連中がいるのですが、遭遇してカジノに誘われても旅人の方々には近づかないように……旦那さまから忠告するように言われていましたので」


 その時、通路にある部屋の扉が開いて、部屋の中から小学生くらいの年齢をしたハーフエルフの気弱そうな男の子が顔を覗かせた。

 一つ目の執事が、ハーフエルフの男の子に向かって言った。

「おぼっちゃま、お勉強は終わりましたか? お父さまと約束した科目の、お勉強スケジュールがちゃんと終わってからでないと遊びに行くのはダメですよ。

週一で交替で来ていただいている、家庭教師の先生方にお勉強の成果を見てもらわないといけませんから」 

「うん、わかっている。通路の空気を吸いに出てきただけだから」

 ハーフエルフの男の子はクケ子をチラッと見ると、すぐに部屋にもどる。

 一つ目執事が、タメ息をもらしながら言った。

「近所に年齢が近い、ご友人がいらっしゃらないので。おぼっちゃまの寂しいお気持ちもわかりますが……どうしたら、よいものかと。寂しげなおぼっちゃまのお姿を見ていると心が痛みます」



 渓谷町にある小カジノ場──カジノのボス、黄金色をした『強欲王』は、金色の玉座に頬杖をして座り。

 目前にいる、魔勇者の娘『甲骨』配下の【遊び人軍団】数名を眺めていた。

 褐色肌でアチの世界の時代劇に出てくる、賭場のツボ振り女のような片方の肩を露出させて、胸にサラシを巻いた。

 ダークエルフ女の遊び人軍団リーダー『鉄火』が強欲王に訊ねる。

「この町に大カジノ場を、新しく造ると言ったな……場所は?」

 黄金色の肌をした、強欲王が答える。

「吊り橋で繋がっている『ユニコーンの泉』台地の森を伐採して、泉を埋め立てて大カジノを造る……町の連中は反対をしているが、なーに、造っちまえばこっちのもんだ」


 強欲王が造った小カジノ場は、鉱山や紡績工場に勤めるハーフエルフの従業員たちをギャンブル漬けにさせて、悪どく賃金を巻き上げている。

 強欲王が続けて言った。

「オレは元々は北方地域の小国で領主をしていた……領民から、税を搾りに搾って……それが、気に入らなかった魔女皇女『イザヤ・ペンライト』の策略で領有地から追い出され、流れ流れてこの渓谷にたどり着いて小カジノ場を開いた……

今思い出しても、腹立たしい、あの正義感ツラをしたペンペン皇女。何が領民の血税に泣く声が聞こえただ!」

 怒り狂った強欲王は、立ち上がると座っていた玉座を蹴り倒す。

 すぐに、蹴り倒した玉座を元の位置にもどすと。玉座の破損した箇所を確かめながら。

「ここの部分、少しグラグラしてきたな……ヤバい、この部分の金メッキが剥がれている……強く蹴りすぎたか」

 そう呟いてから玉座に座り直す。


 鉄火の隣には、トランプ柄の衣服を着てコインを弄んでいる人間の『ギャンブラー』

 クネクネと腹出しの体を悩ましく動かして踊っている、砂漠の『踊り子』

 老ボブゴブリンの『予想屋』

 同じく若いホブゴブリンで予想屋の弟子の『クジ引き屋』がいた。

 強欲王が鉄火に訊ねる。

「遊び人軍団は、それだけの人数か?」

「魔王城には、もっといる……一緒に行動しているのは、ここにいるメンバーだけだ。あと一人ウサギ耳の可愛い娘がいるが、あの娘はいつも別行動をしている」

「ふ~ん、もう一つ聞きたいコトがある。魔勇者の娘の配下の軍団は、いったい何軍団あるんだ」

 鉄火は五指を広げて、強欲王に見せる。

「『リーダー軍団』・『術師軍団』・あたいたち『遊び人軍団』……他人の家から勝手に薬草や回復薬を盗んできたり、ダンジョン探索でレアアイテムをゲットする『盗賊軍団』……『回復系・援護軍団』の、五大軍団だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る