レザリムス世界の遺跡はどこかプリティ!なに?ぬねの?

①レザリムスにもアチの世界とよく似た世界遺産はある!『水の都』と『土の都』

 クケ子たち一行は、魔勇者【亀甲】の支配が特に強かった地域の遺跡群にやって来た。

 密林のような場所から、ヌウッと頭を覗かせている巨大な人頭獅子像スフィンクスの遺跡──その顔と体型は、メタボになった魔勇者だった。

 今日は、片目部分の前髪が、メガネの縁のように湾曲した、髪型ウィッグのロングヘアーをかぶった。 

 クケ子が人頭獅子像を見て言った。

「太っている」


 魔勇者の人頭獅子像は、朝日や夕日に照らされると赤や黄色や紫に染まって見える、特赦な岩石で造られていた。

 メタボな人頭獅子像を見上げながら、ヲワカが呟く。

「故郷のエルフの森を思い出すでありんす」


 この地域では亀甲が自分の権力を誇示するために、住民を酷使して様々な遺跡を造らせた。

 密林の中に無造作に転がる、魔勇者の顔巨石。

 エジプトかインドの壁画のように描かれたり、レリーフされた、魔勇者の壁画や。

 横一列に並べられた魔勇者のモアイ石像群。

 断崖に彫られた魔勇者の複数顔面像や、立像も朝日や夕日で色彩が変わる。

 平原では、魔勇者の地上絵まであった。

 悪趣味な遺跡を眺めながら、クケ子がレミファに訊ねる。

「これから、どうするの?」

「とりあえず、水の都に行ってみるぜら」

 クケ子は水の都と聞いて、水路がある町を想像したが。

 レミファに案内されたのは、広い湖だった。

「どこに水の都が?」

 周囲を見回すクケ子に、レミファは湖の中を指差す。

 クケ子が目を凝らして水の中を見ると、湖の底に沈んだ町があった。

 レミファが言った。

「水の都は、魔勇者が報復で川を塞き止めて、湖の底に水没させた町のコトぜら、今でも町の住人は湖の底に沈んでいるぜら」

「そうなん……だ?」

 弔う気持ちで手を合わせようとした、赤いガイコツ傭兵のクケ子に向かって水中の町から、水面に向かって手を振る町の人たちが見えた。

 耳が魚のヒレのようになった、湖中人だった。着衣した水の都の民が次々と湖底を歩いて。

 クケ子たちがいる岸へと上陸してきた。

 先頭で上陸してきた、赤ん坊を胸の前で抱えるように布状の抱っこヒモで、吊り抱えた女性が言った。

「ようこそ『麗しの水の都』へ、観光客は歓迎します」

 水の都の民は、両手と両足の指の間に水掻きがあった。

 水の都の女性が続けてしゃべる。

「湖の底にある並んだ水中鳥居はなかなか見ごたえがありますよ、あとは水中大仏殿ですかね……観光する方は気泡カプセルで包んで、水中でも安全に観光が楽しめます」


 水の都の民は、ガチャガチャの透明な球体カプセルのようなモノを、水面に出してクケ子たちに見せた。

 クケ子が、疑問に感じたコトを湖中人に質問する。

「レミファから、魔勇者から報復されて川を塞き止められ、町を水没させられたって聞いたけれど? 何か魔勇者の怒りを買うようなコトをしたの?」

 赤ちゃんを体の前で、幅広の布ヒモで抱っこした、水の都の民が照れ臭そうに頭を掻きながら言った。


「いやぁ、あたしたちは魔勇者から壁画とかを造るように命じられたんですけれどね……水圧で石を削って細工した土産物を作るのを、生業にしていた職人町だったので……魔勇者のウ●コ野郎は、自分の勇姿を後世に残したかったみたいです」

「あの壁画、あなたたちが造ったの?」

「まぁ、あのくらいのモノならチョイチョイと……その時、魔勇者に気づかれないように悪口も書いたら。魔勇者の野郎が気づいて報復で川を塞き止めて……謝ったら水を抜いて助けてやるって言われましたけれど。

あたしたちは、魔勇者のウ●コ野郎に意地でも頭を下げるのが嫌だったので、自分たちに魔法をかけて水中生活に適した体の湖中人になりました……結構慣れると快適ですよ、水中生活も」

 この時、胸の前で抱えていた赤ん坊がぐずったのを見た湖中人の女性は、赤ん坊と一緒に水の中にもどる。

 水中で赤ん坊が嬉しそうに笑って手を振る姿に、クケ子たちはほっこりした。

 湖の底にある名所は、また後で寄らせてもらうコトにして、クケ子たちは今度は『土の都』へ向かった。


『土の都』は、盛り土された小山の中に埋もれていた。小山には短い木が繁っている。

 真ん中に少し亀裂がある岩の門を通って、小山の中に入ると、松明の明かりに照らされた半分埋もれた『土の都』があった。

 着衣をして、下半身がミミズの土壌人たちがゾロゾロと出迎えてくれた。

 一番前にいた、土壌人の男性が言った。

「ようこそ『荘厳な土の都』に──観光名所は金色に輝く多重塔や、天井に描かれた鳴きミミズの天井絵などがあります……特に手を打つと音が反響する大ミミズの天井絵は圧巻ですよ、観光を希望する方には、土壌人なりきりグッズのレンタルも行っています」

 そう言って土壌人たちは、下半身ミミズの着ぐるみを見せてくれた。

 

 クケ子が念のために土壌人に訊ねる。

「もしかして、あなたたちも魔勇者の怒りを買って?」

「はい、わたしたちはウ●コ魔勇者の、地上絵を担当していたのですが……こっそり、ウ●コ魔勇者の野郎の地上絵に悪口や落書きを加えたんです……いやぁ、空から見ない限りバレないと思っていたんですけれど、

なぜか、魔勇者のウ●コ野郎にバレまして。

町に連日、土の雨を降らせて謝ったら許してやると……誰がウ●コに謝るものかと、魔法で地中生活に適した体の土壌人に、案外この生活もいいものですよ」

「そうなんだ」

 クケ子たちは、土壌人たちにも湖中人の時と同じように、後で名所見学をさせてもらうと言って。

 今夜の宿を予約してある『平凡な町の都』に向かった。

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