いきなりですが……魔勇者倒しちゃいました
①魔王城の大迷路は初心者にも優しい親切設計
ヒゲ面で、石頭で大剣や長剣や短剣を装備した大男の魔法戦士──『
反射魔法を得意とする邪魔魔女っ子──『レミファ』
レザリムスでは不死身の傭兵──『カキ・クケ子』(彩夏)の四人は、すったもんだの旅を続け。
今、魔勇者が潜む城の大迷路に突入した。
迷路入り口近くの壁に貼ってあった。
『大迷路入り口・足元が暗い場所や段差もありますのでお気をつけてお進みください』の矢印プレートに従って、野球のボールくらいの球体腹部に炎が光り宿っているように見える。
壁にとまった『炎光虫』の明かりに照らされたモフモフ壁の地下迷路を進む彩夏たち一行。
肌触りがいい壁に触れながら歩く、ヲワカが言った。
「納得できないでありんす、どうしてダンジョンに入るのに入場料が必要でありんすか?」
ヤザが言った。
「確かに、それにこの軟弱な床はなんでござるか?」
ウレタン素材のような歩き心地がいい床に、ヤザは首をかしげる。
入場料を払った当日券売り場で渡された、パンフレットを見ながらクケ子こと彩夏が言った。
「なんでも、この迷宮は魔勇者に追放された女魔王さまが、みんなに楽しんでもらえるように作ったみたいだよ……壁と床が柔らかいのは、子供がケガをしない配慮だって……ねぇ、レミファ。魔勇者に追放された女魔王さまって、どんな性格の方なの?」
邪魔魔女っ子レミファが答える。
「見かけは、怖いけれど優しいお方で近隣の村人に慕われていた……頭にヘビの角が生えている。それを魔王という呼び方をされていただけで、腐れ勇者のヤツが……思い出しただけでムカつく、クソ勇者」
「それでも、迷路の入り口で入場料を徴収するのは納得できないでありんす。パンフレットにはなんと書いてあるでありんすか?」
犬の尾が揺れる盾を腕に装着した、彩夏がパンフレットを再確認する。
「えーと、なんでも。魔勇者はケチで迷路の維持費を出してくれないから、しかたなく女魔王が去った後も残っている者たちが迷路を管理運営しているらしいよ。あっ! この迷路の中には食堂とか温泉つきの宿泊施設とかもある! すごーい、土産物売っている場所もあるから弟の拓実に何か買っていってあげようっと」
先頭を歩きながら、レミファが言った。
「迷路の後半部分は、魔勇者が増築を指示して、防御の迷路に変わってしまったそうだ……まったく、クソ勇者がぁ」
迷路の角を曲がった瞬間、先頭を歩いていたレミファが突然、立ち止まった。
不思議に思った彩夏が、レミファに話しかける。
「どうしたの? 急に立ち止まっ……うわぁぁ!?」
レミファの顔面が『ゼリーキューブスライム』の、通路いっぱいに広がったスライムの壁にめり込んでいた。
通路をふさぐように、四角く詰まった、ゼリーキューブスライムは、迷路内を移動して。
キューブスライムの存在に気づかずに、角を曲がってきた侵入者を捕食する。
「レミファが、スライムに食べられている!」
彩夏が助けようとする前に、レミファはゼリーキューブスライムから顔を離した。
スライムの表面が、レミファの顔の形に凹んでいる、レミファが言った。
「この、キューブスライムは無毒で無害、迷路内を移動して迷路の道順に変化をつけているだけ……無害どころか食用にもなる」
そう言うとレミファは、取り出した木製スプーンでスライムの壁をほじって食べた。
「うん、美味い……彩夏どのも、ご賞味を」
「それじゃ、遠慮なくスライムを食べるのなんて生まれてはじめて」
「あちきも食べるでありんす」
「拙者にも一口。おおっ、美味美味」
「生ハム肉の味がする」
彩夏たちは、キューブスライムを食べて掘り進み、貫通させて先へと進んだ。
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