②登録する職業は赤いガイコツ傭兵!?
彩夏が、召喚請け負い業者の男に質問する。
「さっき、村人さんが『魔勇者を倒す者』とか言っていましたけれど?」
「それが、おまえを呼び出した理由だ。おまえはパーティーを組んで、魔勇者を倒す旅に出る……やるよな」
「いやです」
「………………」
沈黙の中、寒い風が室内を吹き抜ける。
彩夏にドアップ顔で怒鳴る、召喚請け負い業者。
「なんのために、召喚されたと思っているんだ! 自堕落な毎日を送っていた若い娘が思い上がるな! 召喚してもらえただけでもありがたいと思え!」
彩夏も負けじとドアップ顔で言い返す。
「勝手に召喚したクセに! こっちは異世界に召喚してくれなんて一言も頼んじゃいないわよ! 横暴よ!」
応戦する召喚請け負い業者。
「誰でも召喚できるわけじゃねぇんだぞ! 召喚者の適性ってもんがあるんだ! 適性が無い者を召喚したら分子分解されたまま消滅するわい!」
「なっ!? そんな危険なコトを、あたしの体に」
少し落ち着いた、二人が声のトーンを穏やかに会話する。
召喚請け負い業者の男が言った。
「怒鳴って悪かった、いきなり異世界に強引に召喚されて戸惑っただろう」
「こっちこそ、考えてみればアチの世界に居ても仕事無いし……必要だから、認められて異世界に召喚されたんだから。異世界に就職したと思えば……で、あたしはその魔勇者とやらを倒せばいいのね仲間を集めて」
「やってくれるか」
「どうせ、簡単に元の世界には返してくれないんでしょう。こういった場合、何か特殊なスキルとか能力がオプションで付いてくるもんだけれど、何かあるの?」
「レザリムスにいる限りは不死身だ、分子分解した際に再構築したおまえの体を不死身に変えた。腕を斬り落とされても痛みを感じないし生えてくる、さすがに首を斬り落とされたら死ぬが──不死身の証しに、おまえの骨格は赤い」
彩夏は、自分の手の平を眺める。
「今の、あたしの骨は赤い骨なんだ……確かめるコトはできないけれど」
彩夏は、召喚された時のラフな格好の自分を指差す。
「で、この格好で魔勇者討伐やるわけ? 装備とかは?」
「隣の部屋に用意してある、着替えてこい……と、その前に忘れるところだった……この用紙の必要な項目に記入と署名をしてくれ──契約書だ」
召喚業者は、クリップボードに羽根ベンと一緒に挟まれた用紙を彩夏に渡していった。
「最近は、いろいろとあってな……こういった書類も必要なんでな、裁判に発展した時のために……なーに、形式的なもんだサラッと目を通すだけでいい」
彩夏は用紙をペラッとめくって、クリップボードに貼られていたシールを見て言った。
「これ、あたしの世界で人気のアニメキャラだ……あのアニメ、こっちでも流行っているの?」
「余計な詮索しなくていい早く書け、ギルドへ行って傭兵の職業登録して口座を作らないといけないからな」
「傭兵なのあたし?」
「臨時のな」
彩夏は、契約書規定を流し読みする。
「不思議な感覚、未知の文字なのに重なった翻訳文字でスラスラ読める」
一通り読んでから、必要な項目に記入していく彩夏。
「この『どのアチの世界から来ましたか?』の選択項目は、どれに印をつければ?」
「『上のアチの世界』のところに印を付ければいい、元の世界に帰る時にどのアチの世界にもどすかの確認だ……自分がいたのと違う、アチの並列世界にもどされても困るだろう」
「他にもアチの世界ってあるんだ。ふ~ん、あたし帰れるの?」
「条件が揃えば一方通行のゲートが開く、まずは魔勇者を倒すコトが大前提だな」
契約書の必要項目を記入して、用紙に署名をした彩夏は召喚請け負い業者に用紙を渡す。
用紙に軽く目を通した、召喚請け負い業者が言った。
「さあ、着替えてこい。その後に異世界でお馴染みのギルドに登録に行くぞ」
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