第257話 入れ替わる光と影 12
「二条院に住むなんて、大丈夫なのかしら?」
「帝のお蔭で世間のうわさにのぼるような、鬼などは出なくなっていますが、結構、細々と色々な妖怪とか幽霊が出てるみたいです。みんなで文句を言いながら、成仏させているらしいですよ」
「そう……」
葵の上は、
「あ、光源氏は、昼間は乳母の家に、転がり込んでいるらしいですよ! で、夜はあちらこちらの姫君のところを、遊び回っているとか」
「そう……」
「この間なんて、人妻に振られて、負け惜しみに、ブスのくせに生意気とか、言ってたそうです。自分は六位のくせに」
「そう……」
「……光源氏って、カッコいいですよね」
「そう……えっ?!」
「あ、ちゃんと聞いていらしたんですね」
「びっくりさせないで!! 光源氏だけは駄目よ、顔だけなんだから!!」
「分かっております。あんなの姫君と比べれば、道端の石ころですわ! あと、昨日の
「……お仕置き?」
『
遠くから、
が、腹を立てた紫苑や
(※ちなみに
「こ、これをどうしたら?」
「しばらく家で預かっておいて!! あの男には、一度、摂関家の偉大さを、しっかりと分からせてやらなきゃ!!」
「はあ……」
真っ赤な顔の夕顔は、布で包んだ
彼女は紫苑たちが、「
「一体なんの騒ぎだ?」
その日は珍しく定時に帰ってきて、
家にいた他の奉公人に聞いても、彼らは、必要最低限以外は、
「ただいま帰りました。あの、なにかありましたか?」
「おかえりなさいませ。いえ、あの、なにやら寝殿の方が騒がし……」
「葵の上!! もう立てるようになられたか!!」
あとで様子を見に行こうと思っていた
「ご無理はなりませんよ」
「大丈夫です。すぐにもっともっと、元気になりますわ」
葵の上の笑顔に、
「先に蔵の
「……やはり隠したのは、お前らか……」
「し、知らないわよ! さ、早く仕事に行きましょう!」
「忙しい、忙しい!!」
「…………」
騒ぎの原因を知った
世の中の出来事とは、一見、関わりがないようで、その実、運命の糸という物は、複雑に絡み合っておりまして、
薬師如来の具現とまでの評判の方であったので、京中の人々は、よかったよかった、これで益々、新しい帝の時代の先行きは明るいとうわさをして、みなは安堵をしていたが、先に紫苑の話に出ていた、不登校で不幸な光源氏も、当然、その話を聞きつけることとなり、その結果、事件は起こるべくして、起こるのでございました。
*
『小話/
「その新しい
そう“弐”に聞いたのは、“伍”だった。彼は蕎麦を買いに行った市場から帰ると、なぜか新しい
“弐”「最近の市場、景気がよくて、新しい店がどんどんできていて、この間、開店したのは知っていたんだけど、開店祝いで先着五名様で、安売りしてた。この貴族用の
“壱”「まあ、貴族は普通は、職人に直接頼むからな」
“弐”「それがさ、田舎でコツコツ作ってたらしいんだけど、思い切って市場に店を出したんだって、庶民用のはもう完売してた」
“参”「だろうな。モノがいい……」
“四”「そういえば、そんな店ができていたような……
“弐”「あのケチが買うわけないじゃん!」
“四”「まあそうか……」
みなが新しい
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