第227話 祓い 8
〈 右大臣のやかた 〉
右大臣は、ついに悲願であった『帝』となった、尊き朱雀の君を、涙しながら拝んでいたが、押し寄せる嬉しさのあまり、やがて気を失って、丁度、蔵人頭に街中の報告にきた
「……なんと、桐壺帝が!」
「先程、朱雀帝の御代になりまして……」
「驚いたなあ……あ、そういえば、先程、
「うちも蔵人所が全焼して大変ですが、
「あれは駄目かもしれない……」
「困りましたねえ……」
友人でもあるふたりは、武官たちに指示を出したあと、奥まった曹司で、白湯を手にノンビリ情報交換をしていた。大変な出来事であったが、そこまで高い地位の政治に関係のない彼らには、どうでもよい話だった。
一方、関白に『
「本来であれば左大臣が、関白の代行を務める予定ではございましたが、この度の大火での心労で、左大臣は政界の引退を届けられ、ご療養に入られましたゆえ、若輩ではございますが、関白からの信任状を持って、今回の騒ぎの一連の取りまとめをさせて頂きます」
「なんと……関白が
二官八省の上に属する太政官には、八省の長である彼よりも重い
その上、未だ太政官の指揮下にある八省の人間とはいえ、政の実質的な
左大臣が政界から身を引いた以上、右大臣が帝の外戚となった以上、関白は今年の秋の除目には、両家のバランス上、かねてからのうわさ通り、必ずや彼を左大臣に押すだろう。
新しい帝は、ことのほか
「新しい帝は武芸がご趣味、この先は和歌や音曲の博士は、暇になりそうですな……」
「
「いやはや関白もまだまだ寿命が長そうですし、前途多……いや、いまのは忘れて下さい!」
「関白のご健勝は、国にとって、なによりでごさいますよ!」
「そうそう! そうそう!」
などといった、先の時代を想像している公卿たちのざわめきが、一旦落ち着くのを待って、
法師に操られている彼らは、
「ひーえ――!」
それは成功を収めていたが、その代償とでもいうように、彼の真っ白な両の手からは、赤い血がしたたり落ちていた。
「ゾンビが出た!」
「ゾンビ? なんだソレは?」
「えっと……こっちの話! お、鬼が出た! 早くケガを手当した方が、いいんじゃない?」
「役立たずだな……」
「アンタこそ! わたしはね、アンタと違って、
『早く元の大きさに戻れ!』
今度はそう念じた
葵の上と違い、
『備えあれば
「成敗!」
彼女はそう言って、周囲の驚きも気にせずに、自信に満ちた顔で、空高く舞い上がった
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