第140話 追走曲 7
「あっ、あれは痛いっ!!」
「ちょっと、煩くしないで下さい! 集中しているんですから!」
「先輩が雨に濡れないように、わざわざ傘を差して上げているのに……」
「もう雨は上がりました! それになんで二人を止めなかったんですか?」
「お前はできることと、できないことの区別もつかないの? 本気の“六”を誰が止められるの? “無能親王”の命と自分の命のどっちが大事? もういい大人なのに、それくらいも分からないの?」
「………」
大雨が降る直前、大内裏をあとにする
“壱”のカンは鋭かったが、生憎と人選を間違えていた。我が身が一番大切な“弐”は、人気のなくなった
「すげーな、あの“
「僕にも無理ですよ……っと、できた!」
“伍”はそう言いながら、左大臣家でもらった丈夫な料紙で作った
“式神”は、雨も上がってかなり立ってから、引き返してきた
一方、
「……あのまま、息の根を止めようと思っていたのだが?」
「……から」
「え?」
「もし、あの優しい姫君が、ご自分のために、貴方が人を
「……」
門番をしている近衛府の下級武官たちは、もともと彼らの顔も知らなかったが、誰が見ても目立つ容貌の“六”はさすがにまずいと、“弐”が彼らに目くらましの幻術をかける。
丁度、多くの荷物が左大臣家から届いて、大騒ぎになっていた最中のことであったので、ふたりのことを左大臣家の家人と思い込んだ門番たちは、あっさりと彼らを中に入れ、一行は
「今日の夕刻、少し曹司を貸してくれ」
ことなかれ主義で小心者の彼は、鋭敏になにかを察知して、
「待ちかねたぞ!」
「色々とな……」
別当はけげんな顔で、
「なにか面倒事でも?」
「……いいや“内裏の中”は至極平穏だ」
早くも
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