第1643話 【エピローグオブ六駆くんの結婚資金集め・その1】高度な交渉スキルを見せる最強の男 ~「お仕事くーださい」~

 1月6日。

 1年前はバルリテロリとドンパチやっていた時分であるが、今年のお正月明けは実に平和であった。


 ミンスティラリア魔王城では小鳩さんだけが未だ帰って来ないが、他のメンバーは再集結完了。

 そこで六駆くんが相談を持ち掛けていた。



「芽衣!! 僕を部下にして一緒にダンジョン攻略してみない!?」

「みっ! 嫌です!! みみみみみみみみみみみっ!!」


 師匠にも「NO」が言えるようになった、みみみとアラートを鳴らす可愛い生き物。



 芽衣ちゃまはBランク探索員。

 基本的にBランクくらいになるとパーティーを率いてダンジョン攻略をこなす者が増えて来る。

 クララパイセンなんかは最初期でもCランクでソロ攻略していたし、浅いダンジョンならば2人編成でも余裕である。


「芽衣!! お願い! 1回! 1発だけでいいから! お願いお願い!! 一生のお願い!!」

「六駆くーん?」


 一生懸命に懇願するとなんだかいかがわしい感じになってしまう。

 男子ってホントばか。


 六駆くんが莉子ちゃんにお説教された。


「うにゃー。莉子ちゃんと一緒にダンジョンでラブラブチュッチュすればいいのににゃー」

「それじゃダメなんです!! 莉子にはサプライズされる側にいてもらわないといけないので!!」


「もうバレとるにゃー」

「いいんですよ! サプライズはバレててもされると嬉しいものですから! ね、莉子!!」


「えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ! そ、そんなことないよぉ? えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」


 とても嬉しいようであった。


「しかしそうなると南雲殿にお願いするしかなくなりまするな。お雑煮をお待ちの皆さま、お餅は2個でよろしゅうございまするか?」

「あいあいにゃー!! 2個でお願いするにゃー! ダズモンガーさんはお雑煮の道理というものがよーく分かっとるにゃー!!」


「ぐーっはははは!! 小鳩殿もご自分の家族に時間を割きたいでしょうからな!! 吾輩、今年はしっかりと料理番としての本分を果たしまするぞ!!」

「ふん。お前は魔王軍の司令長官ではなかったのか? チュッチュチュッチュチュッチュ」


 恩赦されたのでチーム莉子の団らんにもちゃっかり混ざる、ラッキー・サービス氏。


「サービス殿には練乳たっぷり! おしるこでございまする!!」

「ふん。……悪くない!! 励めよ、トラ。お前は高みに立つトラだ」


 ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。


 六駆くんがハフハフとお雑煮を食べながら呟いた。

 「やっぱり南雲さんにお願いするしかないかー」と。

 誤解なきよう申し上げておくと、ダズモンガーくんは南雲さんを売ったのではない。


「みっ!! みみみみみっ!! みみみぃ!!」


 冬毛の尻尾をにぎにぎしている芽衣ちゃまを救ったのである。

 芽衣ちゃまを救うという大義の前には小さな犠牲もやむなしか。


 ここでチーム莉子のおさらい。

 各メンバーと、各メンバーの六駆くんとダンジョン攻略できない理由の一覧である。


 小坂莉子。Aランク。六駆くんのサプライズ対象のため、同行は不可。

 椎名クララ。Aランク。絶対に面倒くさい事になるので同行は不可。

 木原芽衣。Bランク。危険が危ないので遠慮しておきたくて不可。

 塚地小鳩。Aランク。いやらしい事に忙しいのでそもそも不在。

 平山ノア。Dランク。実力とランクが不足しているので本人はやる気なのに不可。

 跡見瑠香にゃん。特務探索員。特務探索員は監察官の許可なく動けないので不可。


「仕方ない!! ちょっと日本本部に行ってきます!!」


 いざ、逆神六駆。

 彼の仕事始めは結婚式の資金稼ぎ、その相棒を求めて。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳でこちらは日本本部。


「南雲さん! 仕事ください!! 特務探索員としてならダンジョンのモンスター狩り尽くしても良いですよね!? 僕、やる気あります!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!! 南雲ぉぉぉぉ!! 良いじゃねぇかよぉぉぉぉ!!」


 南雲さんはもうコーヒー噴いた後である。

 エレガントにハンケチーフで口元を拭いながら、とりあえず語気を強めて言った。



「逆神くん、君ぃ!! モンスター狩りに行きたいからってうちに所属してる1番のモンスター連れて来るのヤメて!? 君はこのあとでこう言うね!? アレだったら木原さんと一緒にどこか適当なダンジョン潜ってきますよ! うふふふふって!! ……ヤメて!!」

「うわぁ! すごいや、南雲さん!! 予知能力に目覚めたんですか!?」


 「どっちかと言えば分析スキルだよ!!」と答える、今年も苦労するっぽい南雲修一上級監察官殿である。



 六駆くんは交渉のカードとして木原久光監察官を手札に加えてやって来た。

 ピュグリバーに寄ったところ、ちょうどシンディさんとトレーニングしているミスターゴリラがいたので借りて来たのだ。

 監察官の許可があればダンジョン攻略は問題ないので、南雲さんとの交渉が不調に終わった時のために予め監察官を連れて来る。


 これが最終ロット逆神六駆の悪魔的発想。


「逆神くん? 聞いて? 木原さんは日本本部の最高戦力なんだよ。お願い、聞いて?」

「でもよくダンジョン攻略を単騎でやってもらってますよね? 北極とか南極とか、僻地に生えて来たヤツ!!」


「うん。逆神くん。だから聞いて? 木原さんは秘密兵器なんだよ」

「でもよく『ダイナマイトジェット』で世界中を飛び回ってますよね? 秘密にしてないじゃないですか!!」


「逆神くん。ヤメて? そうやって理詰めでまず私を攻略しようとするの。交渉って言うのはね、相手に退路を残しておいてあげるのが大事なんだよ。四方八方から完全論破したらね、相手だって意固地になっちゃうから」



「南雲さん! お仕事くーださい!!」

「今までの話を総合してさ、ストレートにぶん殴って来て良いって事にはならないんだよ? なにこれ!? 私が君について行くか、木原さんと君のモーストデンジャラスコンビがダンジョンをぶっ壊すかの二択なの!? じゃあ私が行くよ! 山根くん、どこかで手の空いてる高ランクの子いる!?」


 南雲さん、忙しいのに現場に出るってよ。

 これが逆神六駆の大学で得た交渉力である。



 山根くんのカタカタターンガチャが始まった。

 出て来たのは誰だろうか。


「和泉さんが今日はお休みなので、土門さんが暇らしいっすね。あと潜伏機動隊が出動していないので屋払さんとリャンさんも手が空いてるとの事っす」

「うん。私の名前で出頭要請してみてくれる?」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!! 頑張れよぉぉぉぉ!! 逆神ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「あ。木原さんはピュグリバーに帰ってくれるんだ? ……くそぅ!! やられた!! 最初からダンジョンに行く気なかったんじゃないか!! この交渉上手め!!」


「うふふふふふふふふふふふふふふ! 生物は強い光を直視すると判断が鈍りますからね!! 南雲さん、今のは恥ずかしいことじゃないですよ!! 生物として普通の反応と普通の判断をしただけですから!!」

「くそぅ!! 山根くん! さっきの要請、キャンセルして!!」


 上級監察官室のドアがノックされた。


「失礼します!! 土門佳純Aランク探索員、出頭しました!!」

「屋払文哉Aランク、同じく出頭したんでぇ! よろしくぅ!!」

「リャン・リーピンBランク探索員、同じくよろしくぅです!!」


 メンバーが揃った。


「はい。山根くん。手頃なダンジョン探してくれる? イドクロア持ちのモンスターが多くて、全階層は浅いところがいいな。日本に限らなくていいからね。えー。みんなには逆神くんの結婚資金集めを手伝ってもらいたいと思います。嫌だったら言ってね? 私も同調するから」


 3人に揃って「よろしくぅ」と快諾されたため、南雲さんもよろしくぅする事となった。


 次回。

 ダンジョン攻略のやり方を忘れた逆神六駆。


 南雲さん、コーヒーの携帯はお忘れなく。

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