第1642話 【エピローグオブ各地の仕事始め・その4】ミンスティラリア魔王城からお送りします

 三が日が終わって、チーム莉子のメンバーたちもミンスティラリア魔王城へ戻り始める時分。

 ここで確認なのだが、チーム莉子のミンスティラリア下宿生活は「ピースに対抗するため一時的に戦力を異世界に結集させる」から始まり、「ピースの重要犯罪者であるライアン・ゲイブラム氏およびラッキー・サービス氏の監視」と続き「バルリテロリ戦争における前線基地の1つ」で纏まり、再び「ライアンさんとサービスさんの監視」に戻り、ライアンさんがバルリテロリでドッグトレーナーになって、ついにサービスさんが恩赦を受けて自由の身になった。



 この子たちは今、どうしてミンスティラリア魔王城に下宿してるのだろうか。



 大晦日も元旦も魔王城で過ごしたどら猫が「うにゃー」と鳴いて答えてくれる。

 猫は怠惰に見えて賢く、何も考えていないように見えて色々考えているのだ。


「それはだにゃー。居心地の良さがもうまぢヤバいからだにゃー。シミリートさんの作ってくれた部屋は快適過ぎるしにゃー。食堂では座ってるだけで美味しいご飯が三食出て来るしにゃー。お酒だって飲み放題だぞなー」


 建設的な意見を期待していたので思っていたのとは違ったが、確かにそうかもしれんと言わざるを得ない。


「みんなは南雲さんの命令にすぐ対応できるよう1か所に集まって生活してるって事でいいんじゃないですか? ほら、楠木さんのところの潜伏機動隊とか寮で常に出動できるよう待機してるらしいですし」

「ほい来たにゃー!! 六駆くんが良いこと言ったぞなー!!」


 チーム莉子にとっての隊舎がミンスティラリア魔王城だという事が判明した。

 ならばこれからもずっと魔王城で下宿してもらっておいてオッケーである。


「さて。莉子はまだお義母さんのところから帰って来ないし」

「鬼の居ぬ間に洗濯するのかにゃー?」



「クララ先輩! 一緒にダンジョン潜ってお金稼ぎに行きましょうよ!!」

「にゃん……だと……。瑠香にゃーん! 助けてにゃー!!」


 瑠香にゃんは猫部屋のコンセントに挿さってスリープモード中です。



 芽衣ちゃんは私立ルルシス学院の学友と一緒に遅めの初詣。

 小鳩さんは「わたくし7日までお暇を頂きますわ!!」と言ったきり音信不通。

 多分だが、いやらしい事をしている。


「ふんすー!!」


 ノアちゃんは普通にいる。

 彼女の場合は六駆くんの忠実なる後輩なので「ちょっとダンジョン行こうか」と言うだけで「ふんすふんすっ!!」と鼻を鳴らしてついて来る、誘うまでもないとは師匠の弁。


「六駆くん、六駆くん。お金いっぱいあるじゃにゃいかにゃー。大学生として学びに目覚めたはずなのに、なんで急に仕事する気満々マンなんだにゃー?」

「結婚式の費用を貯めようと思いまして!!」


「たっぷりある貯金から出しちゃえにゃー」

「何言ってるんですか、クララ先輩!! 僕の総資産は隠居生活のためなんですよ!! しかもこれから養う家族が増えるって言うのに!! 全然足りませんよ! 300000000でも400000000でも!!」


「0がいっぱいで大興奮ですね! ボクが3億と4億に読みやすくしておきます!」


 デキる後輩は仕事も早い。


 六駆くんはもう探索員装備に着替えている。

 だが、彼独りではダンジョン攻略ができない。

 お忘れの方のための逆神六駆。


 もうとっくに探索員を退役しているので、勝手にダンジョンに入ったら探索員憲章違反になり、常識と良識を友にした最終ロット六駆くんはルールを順守する。


「さあ! 行きましょう! 椎名クララAランク探索員先輩!!」

「に゛ゃ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! 引っ張らんでくれにゃー!! ノアちゃん連れて行けば問題ナッシングじゃないのかにゃー!?」


「あ。ダメですよ。ノアに責任取らせようとする時点でまともな判断のできる大人じゃないですもん。だってノアの使えるスキル『ホール』だけですよ? 有事の際にどうするんですか? 穴に頭突っ込んでお尻残して? 結局僕が対処しなくちゃいけないので、探索員憲章違反になりますよね?」

「ふんすっ!! ボク、未だに『ライトカッター』も『太刀風たちかぜ』も10回試したら1回くらい変な感じで発現できます!! ふっふっふーんす!!」


 理詰めの六駆&ノア師弟コンビ。

 とりあえずクララパイセンが六駆くんによってぐいぐい引っ張られている。

 ちょうどだらしない恰好してるんだから、ちょっとその上に装備を身に付けたらいいじゃないですかと。


「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ー。おっぱいポロリしちゃうぞなー」

「あ。大丈夫です。僕、どうも莉子の体じゃないと興奮しないみたいなので!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃のネオ国協本部。

 川端卿が険しい表情で窓の外を眺めていた。



「1つの、いや、2房のおっぱいのみを愛する。それもまたおっぱいへの正しい愛。しかしどうだろう。そのために他のおっぱいをないがしろにして良いものか……。逆神くん。君は今、私に新しい命題、いや、乳題を与えてくれたようだ……!!」


 その日の報告書には、「川端さんが5時間ほど仕事をしなくなって難しい顔のまま窓際でフリーズしていた」と記されている。



 川端さん、お忙しいところありがとうございました。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 視点が戻り、魔王城では。


「いーやーだーにゃー!! 今日はまだお仕事するテンションじゃないぞなー!!」

「いいじゃないですか! ちょっとだけ! ほんのちょっとですよ!! 先っぽだけ入ったらすぐに抜けて大丈夫ですから!! お願いです!! 我慢できないんです!! 早く行きたくて!!」


 オチが分かったという観測者諸君はまだまだ舞える。

 この世界はオチが分かっていても深く味わえる観測者を愛している。


 門が輝くと、彼女が魔王城に戻って来た。


「ただいまー!! ふぃー!! ごめんね、六駆くん! 帰って来るの遅くなっちゃ……った……」


 おわかりいただけただろうか。


「クララ先輩!! 早く行きましょう!! 僕だけじゃダメなんです!! ほら、乳当て付けて!! もう乳当てなしでもいいですよ!! 行きましょう、行きましょう!! すぐ済みますから!!」

「六駆くん……?」



「えっ!?」

「えっ!? はこっちのセリフだよぉ!! もぉぉぉ!! クララ先輩のおっぱいに浮気してぇぇぇぇぇ!!」


 六駆くんが無事にリコられた。

 あけましておめでとうございます。



 ここでノアちゃんが「ふんすふんすのふんすっすです」と事情を説明。

 誤解させた六駆くんの罪はリコって雪がれたが、クララパイセンを泥棒猫だと一瞬でも疑ってしまった罪は謝罪しなければならぬ。


「ご、ごごごごご、ごめんなしゃい!! クララ先輩!! 違うんですぅ!! わたし、別にもうおっぱいおっきいの羨ましいとか思ってなくて!! ただ、六駆くんがおっきいおっぱいに浮気するのは嫌だったので!! ごめんなさぁぁぁい!!」

「のんのんののんだにゃー。あたしは別に気にしてないぞな!! ただ、ちょっとおっぱいコンディションを調整するからあたしは自室に帰らせてもらうぞな!! アデューだにゃー!!」


 パイセン、逃げる口実をゲット。

 ヨレヨレのタンクトップしか着ていないのにおっぱいのコンディションもクソもない。


 どら猫が逃走したあとで莉子ちゃんが六駆くんに言う。


「結婚式のお金だったらわたしも一緒に稼ぐのにぃー。なんで言ってくれないのー?」

「いいや! ダメだ!! こういうのは男が出すものだって南雲さんもあっくんさんも言ってた!! 僕もそうしたい!! 結婚式の準備は一緒にしよう!! ただ、お金は僕が稼ぐからね!! これは譲れない!!」


「もぉぉぉ。変なとこ頑固なんだからー」

「莉子に一生の思い出をプレゼントするんだ、僕は!!」


 面倒くせぇカップルの新しい1年が始まった。

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