第1615話 【エピローグオブSAGAのクリスマス・その2】スッポンで体力チャージして峠にあるモーテルがSAGAの性夜のジャスティス(個人の感想です)

 土門家の庭へ真っ赤なアルファードが入って来た。

 佳純さんの実家、今では和泉さんにとっても実家であるが、当家は割と山の方にある。

 九州でも佐賀と長崎はその立地上、山間部が多く国道でもアップダウンの激しい山道だったりする。


 車で走行中カーナビを見ながら「これ今、ちゃんと国道走ってる!?」と心配になる事が諸君もあるだろう。

 だが西九州ではそれが普通である。

 自信を持って、カーナビを信じてあげて欲しい。


 そして車酔いする人は予め酔い止めを服用しておこう。


「ごふっ」

「大丈夫ですよー。私の太ももでしたらどこ汚してもらっても結構ですからねー」


 和泉さんクラスになると酔い止めなんてちょっとした効かないお守りであるが、飲まないよりはマシ。

 右に曲がったかと思えばまた右に曲がって、さらに右に曲がってなんか1周したんじゃないかと疑いつつまた右折。

 トリッキーな車の動きは慣れていない者の三半規管に容赦なく襲い掛かる。


「あらぁ! 早速お楽しみのところ悪いっちゃけど、着いてしもうたんよ! 和泉さん、佳純の太ももば堪能するのはもう少し我慢ばしてくんしゃいね!!」

「お、お母様……。ちがっ」


「えっ!? 血が滾る!? 案外ねぇ、聞かん坊でおらっしゃるたい! 和泉さんば!!」

「……ぐふっ」


 ちなみにアルファードが真っ赤なのはもちろん義理の息子のパーソナルカラー、吐血色であると佳純ママは笑顔を見せた。


「よぉ。和泉さん。あんたにピッタリじゃねぇか。あんたにゃあれくれぇ豪快な義理のお袋がちょうど良いと思うぜぇ?」

「あ! お待ちくださいませ! 佳純さんのお母様!! これお土産の羊羹ですわ!!」


 あっくん夫婦と佳純ママのファーストインプレッションは上々。

 この世界の母ちゃんは基本的に豪胆と決まっている。

 ならばもう慣れたもの。


「あらまぁ! こりゃもう、ご丁寧にねぇ! この羊羹高いヤツやもんねぇ? スッポン鍋の準備ば済んどるけんが!! 阿久津さんと奥さんもね、たんと召し上がってくんしゃいね!! うちはスッポンの養殖でひと山当てちょりますけん! けど味は天然ものにも負けん自信ばあるっちゃけんが!!」


 あっくんが『結晶シルヴィス』を発現して和泉さんを運んであげた。

 佳純さんは先に家に向かっており「お夕飯の準備しますね!! うちの人をお願いします!!」とあっくんに委託済み。

 この阿吽の呼吸、やり取りが最小限で済むのはズッ友夫婦が家族ぐるみのお付き合いをする利点である。


「おら、行くぜぇ」

「げふっ。ご迷惑をおかけごふっ。玄関を入って右手の和室が小生と佳純さんのごふっ」


「おーおー。早速てめぇの寝室に連れて行けってかぁ? くははっ。小鳩ぉ。負けてらんねぇなぁ! 俺たちもよぉ!!」

「んもぅ! 嫌ですわ! 浄汰さんったら!! んもぅですわ!! んもぅ!!」


 玄関の戸を開けたら血生臭かった。

 あっくんは「スッポンの血かぁ。和泉さん、最高の終の棲家を見つけやがってよぉ」と少しだけ笑顔になったという。


 これならいくら血ぃ吐いても気にならねぇな、と。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 佳純ママによる自慢のスッポン料理を担当した一同。

 和泉さんがまだ入籍するよりもっと前。土門家にご挨拶へやってきた際にもスッポン鍋が振る舞われた。

 その際に「スッポン料理は割と見た目がグロいので耐性のない人は気を付けよう」といった注意喚起をしたこと、諸君は覚えておいでだろうか。


「……美味かったなぁ。よぉ、小鳩ぉ」

「ですわね!! あの、佳純さんのお母様! スッポンさんをいくつかお譲り頂けませんか? もちろん代金はお支払いしますわ! 絶品でしたので家族へのお土産にしたいのですわ!」


 佳純ママが即答。

 「そげんこつ言われんでもお土産、用意しとるけん! お金なんかよかよか! それよりも皆さんスッポンは大丈夫でおらすとやろか?」とやっぱり笑顔。

 九州女はよく笑うけんが。笑顔が最強の武器たい。


「あぁ。うちの連中も全員イケる口だぜぇ。……いや。六宇はどうだかなぁ」

「六宇さんにはわたくしが食べられそうなところをお料理して差し上げますわ!!」


 探索員はダンジョン攻略や異世界調査の際に現地調達でモンスターを狩って食べる事くらい日常茶飯事。

 スッポンなんてグロくて食べられない。そんな甘っちょろい事は言っていられない。

 ベジータさんが初登場時にどっかの星で異星人の腕食ってたくらいの事は男女問わず、多かれ少なかれ、みんなやっている。


 なお、チーム莉子はリーダーがグルメなので別件とする。

 彼らは初期ロットの頃から「ダンジョンで寝ると疲れとれないし、ご飯も美味しいミンスティラリア行こうか」とかズルしていたのでノーカウント。


 さて、美味しいご飯でお腹が膨れたら、あとは聖夜。いやさ性夜。

 運動のお時間である。


「もしもしぃ! ケンちゃんかね!? 頼んどったモーテル! 一番いいヤツば、2部屋!! ちゃんと予約できとるか気になって! そげんね!? クリスマスで繁盛しよらすとかいね!! 稼ぐねぇ!! それで一番いいヤツば……そげんね!! これから娘と娘婿ば連れて、娘のお友達の新婚さんも連れて行くけんが! ああね! 山の途中にある、はいはい! 分かっとるっつけ!! 峠道気を付けろ? せからしか! あたしゃ運転歴40年ったい! それじゃこれから出るけんが!! はい、はーい!!」


 ご年配の女性はラブホテルの事をモーテルと呼ぶ。

 この世界の常識である。


「正春さーん?」

「ええ。大丈夫ですとも。スッポン料理で精がつきましたけふっ」



「そんな強がっちゃって! !! 今晩は可愛がってあげますからね!!」


 佐賀で「やーらしか」と言えば「かわええのぉ」という意味になる。

 和泉さん、今晩は食べられるってよ。



 真っ赤なアルファードがアスファルトタイヤを切りつけながら暗闇走り抜けている間に和泉夫婦の呼び方TPОについて復習をしておこう。

 佳純さん、職場では相変わらず「和泉さん」と呼んでいる。

 これは副官としての立場によるものだが、実は「名前で呼ぶのはちょっと照れます……」という可愛らしい理由もトッピングされている事は夫婦だけの秘密。


 そして「和泉さん」が「正春さん」に限定解除されるのは2人きりの時だけ。

 もっと言えば、いい雰囲気の時だけなのである。


「ところで小鳩ちゃんとあっくんさんは良かったんですか? うちのお母さん、強引なので……。なんか私たちと同じところに行く流れになっちゃいましたけど。ホテルの予約してたんじゃ……?」

「うふふ! いいんですの! スッポン料理で浄汰さんが元気になってくれましたもの! プライスレスですわ!!」


「ちっ。俺ぁ和泉さんと違ってスッポンにバフかけてもらわなくてもよぉ。いつでも元気なんだよなぁ。佳純さんもつまんねぇ気遣いするんじゃねぇ。ホテルは昼の間にキャンセルしといたからよぉ。キャンセル料取られねぇとこにしといて正解だったなぁ。くははっ」

「あっくんさん……。小生の治癒スキルを舐めてもらっては困ります。既に無詠唱で持続発現させている所存。今宵は朝日が昇るまで頑張りますとも。こふっ」



「きゃー!! 小鳩ちゃん、聞いた!? 狼が2人も!! 私たちナニされちゃうんだろ!!」

「聞きましたわ! 聞きましたわ!! わたくし、とってもはわわわわですわ!!」



 この後、両夫婦は朝までいやらしい事をした。


 嫁さんのために自らを奮い立たせる和泉さんはものすごくらしい。

 佳純さんが翌朝、笑顔で証言していた。

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