第1577話 【エピローグオブ南雲と川端のネオ国協理事仕上がりチェック・その1】筆頭理事兼おっぱい保護局長、川端一真。仕上がりは万全!

 12月第1週。

 ネオ国協発足編の序章が始まろうとしていた。


 発足式に向けた最終チェック作業がまさに現在進行形で行われている今、総理事を務める南雲修一氏にしかできない、というか氏が確認しないと完了しない事柄がいくつかあった。

 例えば人工島デルタウェアの運用準備状況。

 また、デルタウェア警備部の管理体制確認。


 それらを置いてとりあえずやっておかなければならないのが、ネオ国協理事の仕上がりチェックである。


 そんなもん後回しでええやんけ、まずは安全性やろがいと思われるかもしれないが、ネオ国協の理事は選任の過程で紆余曲折ありすぎて、まずそこの安全性をチェックしておかないと発足式にたどり着けないかもしれない。

 逆に言えば、理事たちがしっかりしている事、これが最強の盾、最良の安全性とも言えるほどの人材を集めたのである。


「じゃあ山根くん。私、今日は留守にするから。後はよろしくね」

「うっす。色んな魔境に顔突っ込みに行くんすよね。お疲れ様っす」


「言い方ぁ!! 皆さん、善意で引き受けてくださったんだぞ! 確かに曲者揃いになっちゃったけど!! それ言ったら日本本部の監察官だって曲者揃いだったじゃないか!!」

「過去形っすよね。今はかなり安定感あると思うっすよ」


 返す言葉が見つからなかったので、南雲さんはコーヒーを振る舞った。

 誰に。


 大学が休みに入りかけていて暇を持て余している彼に。


「ほら。逆神くん。今日はカフェオレにしてみたよ。たまには甘いのもいいよね」

「うわぁ! ありがとうございます!!」


「お礼を言うのはこっちだよ。絶対に拒否されると思ったのに、随員としてついて来てくれるんでしょ? 君の『ゲート』があるとものすごく時短できて助かるんだよね。……なんで快諾してくれたの?」


 今回の理事仕上がりチェック旅には六駆くんが随行する。

 その理由を笑顔で語る最強の男。



「だって南雲さん! 莉子のサプライズのためにメイド服まで着てくれたんですよね!? あれから莉子の機嫌が良くて良くて!! これはもう恩返しくらいしますよ!!」

「君、愛妻家になるんだね。よし、小坂くんメインで逆神家とはお付き合いしていくことにするよ。これから、私」


 南雲さんは「小坂くんが求めるなら、今後私は女装だろうとなんだろうと厭わない」と心に決めた。



 出発準備を整えた南雲上級監察官室のドアがノックされる。


「おや。いらっしゃったかな? どうぞ」


 今日もオールバックに整えたヘアースタイルがイカしている、日本生まれフランス国籍の男爵がやって来た。


「おはようございます。南雲さん。逆神くん。それに山根くん。これは昨日絞っておいた、うちのおっぱい牧場の乳牛のおっぱいです。どうぞ。人数分用意して来ました」


 川端一真筆頭理事兼おっぱい保護局長。

 今回の理事仕上がりチェックの旅は南雲さんと川端さん、両名の4つある曇りなき眼で行われる。


「すみません。時差があるのに日本の朝を指定してしまって」

「なにを言うのですか、南雲さん。私がフランスに亡命できたのは貴方のおかげですよ。今は多国籍のおっぱいに囲まれて充実した日々を過ごしています。日本のおっぱいに呼ばれれば、そちらへ馳せ参じるのが道理。ご存じでしたか? おっぱいに時差はありません」



 ご存じだっただろうか。

 おっぱいに時差はない。



 川端さんが亡命に至るまでの経緯を軽く振り返る事で、こちらの男爵の仕上がりチェックとする事にしよう。

 振り返りは軽く。


 重厚にねっとり舐め回すような振り返りをすると尺が一瞬でなくなるのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 川端一真。46歳。

 元はイギリスの人工島ストウェアにてアトミルカにより壊滅させられた同国の探索員協会復興任務に当たっていた。


 そこからなんやかんやあってアトミルカを壊滅させ、のんびりイギリスにある懇意の店『OPPAI』で新鮮なおっぱいを摘まみながら過ごしていたところ、ピースの上位調律人バランサーだったナディア・ルクレールさんとライラ・メイフィールドさんにストウェアが乗っ取られた。


 悲劇のように語っているが、これこそ川端さんの運命であったと今では確信をもって断言できる。


 捕虜になった川端さん。

 後に合流したダンク・ポートマンくんと姫島幽星、成り行きで乗り込んだバンバン・モスロンくんとレオポルド・ワチエくん。

 彼らはピースに叛逆する意思を持っていたが、色々とタイミングが合わずピースとの決戦からハブられる事となり、バルリテロリ戦争へ突入。


 バルリテロリ戦争時点ではもう無国籍軍として南極海に漂いながら途方に暮れていたものの、何故か戦功をいくつか挙げた。その最たるものは『グレートビッグボインバズーカ』による十四男ランド撃墜だろう。

 そしてナディアさんがフランスの上級監察官室に就任。

 「川端さんも来てくれると嬉しいなー」という誘い文句で四の五の言わずにおっぱいの言う通り、運命と言う名のディスティニーに従う。


 バルリテロリ戦争終結後に行われた逆神人殺助討伐任務では民間人であるナンシーのおっぱいの平定を成す活躍も見せ、無事に南雲さんが裏で暗躍し川端さんたちストウェア組の亡命に寄与。

 その恩義を今でも重んじているため、今回ネオ国協発足に際して重要な筆頭理事の就任要請にも二つ返事で応じたのである。



 軽く振り返っただけなのになんという混迷の2年間。

 たった2年で川端さんはこれだけの艱難辛苦を乗り越えていた。



「失礼します。川端さんがおいでになっていると伺ったのですが」


 川端さんの歴史を振り返り終わったタイミングで仁香さんがやって来た。

 彼女は敬礼してからまずはご挨拶。


「この度、監察官を拝命いたしました。青山仁香です。今後ともよろしくお願いいたします」


 敬礼で応じる川端さん。


「話には聞いていた。水戸くんの後任には君しかいないと思っていたので驚きはしなかったが、そのおっぱいにかかる重圧に耐えかねた時には私を呼んでくれ。いつでも駆けつけよう」

「あはは。ありがとうございます。こんなに爽やかなおっぱいへのお声がけを頂けるのは川端さんだけですよ」


 おっぱいおっぱい言ってもセクハラにならない男。

 川端一真おっぱい男爵。



 もうこの事実だけで充分に仕上がっていると判断して良いかと思われた。



「水戸さんの事、よろしくお願いします」

「任せてくれ。ネオ国協にも多数のおっぱいが乗船する。万が一の時は躊躇なく海に叩き落とすこと、ここに誓おう。君のおっぱいに誓おう」


「その言葉が聞けて安心しました!! うちの宿六が目の届かないところに行くのって初めてですので! よそ様のおっぱいにご迷惑をおかけしたらどうしようかとずっと心配で!!」

「この川端一真がいる限り、そのような事はさせませんよ。はっはっは」


 水戸くんの事もよろしくされた事であるし、そろそろ出かけよう。

 カフェオレを黙って味わっていた六駆くんが空になったカップを置いてから言った。


「まずはどこから行きますか?」

「最初はバルリテロリで四郎さんにお会いしようと思うんだよ。果たして頂く役割も多岐にわたるし、なにせ逆神家の代表として参加してもらう訳だから」


「他の理事の人って意外と固まってますもんね。呉とかピュグリバーとか2人ずついますし。じゃあ! ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」


 隣の仮想戦闘空間にたくさん生えている門の1つが光り輝いた。


 山根くんと仁香さんが見送る中、南雲さんと川端さんによるちょっとした旅が始まる。

 今回は添え物の六駆くんを伴って。


 理事は無事に全員仕上がっているだろうか。

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