第1570話 【エピローグオブ逆神六駆サードステージ・その3】お母さん、僕の家族になってください!! ~なにいってんだこいつ~

 まずはお忘れの方のための莉子ちゃんママ。


 小坂静代しずよ。46歳。

 夫とは莉子ちゃんが幼少期に死別。

 以降、パートを掛け持ちして莉子ちゃんを女手一つで立派なメインヒロインに育て上げたお母さんにしてお義母さん。


 スーパーマーケットとビルの清掃業のパートをこなしていたが、莉子ちゃんは探索員の報酬をほぼ全額、母に渡している。

 しかし静代ママは生活費をほんの少しもらうだけで、未だにアパート住まいでパートも1つに減らしはしたもののスーパーマーケットで働いている。


 これは「莉子の将来のために貯めておかなくっちゃね!!」という親心。

 なんと美しい。


 そして忘れてはならない点が1つ。

 静代さんの年齢は46歳。

 六駆くんの中身は47歳。


 おわかりいただけただろうか。



 おわかりいただけただろうか。



 未亡人で六駆くんの中身とはいい塩梅の年齢差である静代さん。

 六駆くんは今回、その静代さんにサプライズでプロポーズをしようとしている。


 オチの見えたコントは茶番と申されるか。

 否。

 我らが日本の誇る落語は基本的にオチの見えている話ばかりなのに、何度聞いても面白いではないか。


 では往こう。

 見えているオチの、その先へ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 スマブラ会議から2日後。

 クララパイセンと瑠香にゃんの猫コンビに莉子ちゃんの相手を任せて、六駆くん、あっくん、芽衣ちゃん、小鳩さん、ノアちゃんの5人は小坂家のアパートへ向かった。


 なんで1LDKのアパートに5人で押しかけるのか、もうこの時点で疑問を抱えているのが芽衣ちゃんと小鳩さん。

 しかし2人も六駆くんとの付き合いが長くなりすぎたせいで「みみっ」「ですわね」と、それはもうそういうものなんだから仕方ない的な納得で疑問をお掃除。


 あっくんは「あぁ? おい逆神ぃ。小坂の家ってのはアパートかぁ? あいつおめぇ程じゃねぇにしてもかなり稼いでんだろぃ」と言う。

 「デカい家に行くんじゃなかったの? これ敷地面積と人数踏まえて考えたらものすごく失礼じゃない?」と意訳したらば、気遣いのデキる悪者、阿久津浄汰の足が重くなる。


「ふんすふんす!!」

「久しぶりだなぁ! 半年くらいご無沙汰してるんですよね!! 莉子のお母さん!!」


 ノアちゃんは事情通なので当然、全部知ってる。

 六駆くんは当事者なので当然、全部知ってる。


 逆神流の品位、品格についてしばしば問題に挙げられるのは、多分こういうところが起因している。


 101号室の呼び鈴をなんの躊躇いもなく押した六駆くん。


「はぁーい。どちらさま……あらぁ! 六駆くんじゃない!! 久しぶりねぇ! いつも莉子と仲良くしてくれてありがとう!! 後ろの皆さんは?」

「うわぁ! お母さん、いつ見てもお綺麗ですね!! 莉子のお母さんじゃなかったら僕、絶対にお姉さんって呼んでますよ!! お肌ツヤツヤ! 化粧水変えました!?」



 こいつ、相変わらずぬけぬけと。



 後ろの4人からは小鳩さんが代表して「あの……。莉子さんとは同じパーティーを組ませて頂いておりますの。今日は……その……。ち、近くまで来たものですから。そう! 寄らせて頂いたのですわ!!」と言った。

 前半は頑張ったが後半は「よしんば近くに来ても1LDKのアパートに5人で寄るんじゃねぇ」と相手が相手なら一蹴されていただろう。


 だが、静代さんは莉子ちゃんママ。


「そうなの!? 連絡くれたらおもてなしの用意したのに!! なにかお茶うけあったかしら!?」


 心は穏やか、寛容な精神、怪しい5人がいきなり訪ねて来ても受け入れる。

 だって既に莉子ちゃんの彼氏として六駆くんを認めているのである。


 こんなに寛容な精神の持ち主もそうはいない。

 多分スキルを習得させたらとんでもない使い手になるであろうこと間違いのないメンタル。


「あ! お姉さん! 羊羹持ってきましたよ! 高いヤツ!! うわぁ! すみません! お姉さんって呼んじゃった! うふふふふふ! お母さんが綺麗なもんだから!! すみません! うふふふふふふふふふふふ!!」

「やだもう、六駆くんったら! じゃあ、狭い部屋だけど入ってくださる? お茶を淹れますからね!!」


 あっくんが思った。

 「野郎から親父に似た雰囲気を感じるんだがよぉ。言ったら殺されるだろうから言わねぇけどなぁ。遺伝って怖ぇなぁ」と。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃。

 任務失敗する予定のクララパイセンと瑠香にゃんは。


「じゃあクララ先輩! 瑠香にゃんちゃん!! 日須美市のイオンに行きませんか? 北海道物産展やってるって広告見たんですよ!!」

「うにゃー。仕方ないぞなー。莉子ちゃんに北海道をまるごとモグモグさせるために出かけるかにゃー。六駆くんから羊羹もらっちまったもんにゃー」


 南雲さんの羊羹はこうやってものすごい勢いで消費される。

 もう六駆くんに「何本かください!!」と言われるのを含み損として贔屓の和菓子屋に注文しているのだ。


 だらしないタンクトップと短パンの上に大学のジャージを着たらあら不思議。

 ポニーテールも相まってなんか運動部員みたいに見えるパイセン。


 そして瑠香にゃんは逆に兵装を取り外した。

 これで競泳水着バージョン瑠香にゃんに。

 そのままコンセントに腰の部分を挿す。


「にゃん……だと……」

「瑠香にゃんはスリープモードに入ります。ステータス『ぽこますたぁ、がんばえー』を付与。おやすみなさい」


 瑠香にゃんの言い分も尤もである。

 だって瑠香にゃんは2日前のスマブラ会議の際、既に莉子ちゃんの足止めをオペレーション「学食の飯全部食う」で実行済み。

 順番で考えたら今回は休んで良いと高性能人工知能が判断するのも致し方なし。


「ほえ? 瑠香にゃんちゃん、充電切れ? じゃあクララ先輩と2人でデートですね! えへへへへ!! お買い物したらわたしの実家に寄ってください! お母さんにも北海道物産展の美味しい物を食べさせてあげたいので!! クララ先輩、何回か来たことありますよね? うち!!」


 急速に悪い方、悪い方へと舵が切られるパイセン号。

 でけぇおっぱい2つも搭載しているので浮力には自信ありだが、座礁したら終わる。


「六駆くんの出してくれてる門がイオン直通で助かりますね!! イオンに行ってー。美味しいもの買ってー。一旦こっちに戻って、今度はわたしの家に繋がってる門に!! これなら30分もあれば充分!! やっぱり六駆くんってすごいですよね!! えへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」

「すまねぇにゃー。みんな。こんなはずじゃなかったんだにゃー」


 パイセンが早々にさじを投げた瞬間であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 それではオチへ参ろうか。

 45分後。


 小坂家で六駆くんが単刀直入に言おうとしていた。

 時を同じくして莉子ちゃんとクララパイセンが小坂家直通の門をくぐってただいまをキメる。


「お母さーん! ただいまー!! ほえ? お客さんかなぁ?」


 あっくんと小鳩さん夫婦がすぐに反応した。


「伏せろぃ! 芽衣! ノア!!」

「わたくしのスキルで果たして莉子さんの『苺光閃いちごこうせん』を防げるでしょうか……いえ! 防いで見せますわ!! はぁぁぁぁぁ!!」


 危険が危ないと判断した阿久津夫婦によって女子高生コンビが守られる。

 六駆くんは言った。莉子ちゃんには気付かないまま。

 彼の煌気オーラ感知は基本ガバガバである。

 敏感になるのは「うおおお! 莉子おおお! うおおおお!!」モードの時だけ。


 今はオフ。


「お母さん!! 僕と家族になってください!!」

「ふぇ!? 六駆くん!? な、なななななな、何言ってるの!?」



「えっ!? あれ!? 莉子!?」

「えっ!? じゃないよぉ!! どーゆうことぉ!? こんなフレキシブルな浮気ってある!?」


 積み重ねて来た布石が崩されることなく綺麗に積み重なった結果を見よ。



 次回。

 修羅場。


 誰が悪いのか。

 多分最初が「さ」で始まって途中「がみ」を経由して最後は「く」で終わる男である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る