第1569話 【エピローグオブ逆神六駆サードステージ・その2】スマブラ会議 ~斜め上を往く、最強の男のサプライズ~

 あっくんちのデカいテレビで六駆くんのカービィがふわふわ飛んでいる。

 小鳩さんが手作りマフィンと紅茶をキッチンから持って来てくれたので一時停止してから頂戴することにした、いつの間にか礼儀作法も履修済みの最強の男。


 莉子ちゃんちに入り浸って晩飯のおかずをもしゃもしゃ食ってた頃の六駆くんはどこへ行ったのか。



 ご存じの方がいたら教えてください。



 小鳩さんも事情を聴いたのであっくん、芽衣ちゃん、ノアちゃん、チーム莉子のほぼ全メンバーが「六駆くん結婚式申し込みしたい問題」に挑むことになった。

 瑠香にゃんも今頃は莉子ちゃんと一緒に日須美大学の学食の冷蔵庫を空っぽにしているはずである事を考えると、これはチーム莉子の総力戦。


 クララパイセンは現時点で特に役割を与えられておらず、現在は魔王城で就寝中。

 もう時刻は午後5時過ぎなのだが、まあ猫は寒くなると暖かいところで寝るのが仕事みたいなものなので致し方ない。


「みっ!!」


 芽衣ちゃんが元気よく手を挙げた。

 チーム莉子では一番槍を務める事も多い、みみみと鳴く可愛い生き物。


「はい、芽衣!! 聞かせて、聞かせて!! とりあえずサプライズの方法から聞かせて!!」

「みみっ! 普通にご飯食べた後で言うのはどうです? 多分それが1番ビックリすると思うです! みみみみっ!!」


「んー。確かに奇をてらわないっていう虚の突き方も悪くはないね。けど、それが通用するのは相手が雑魚の場合だけだから。芽衣も戦略について頑張って勉強してるみたいだけど、ちょっと甘いね!! うふふふふふ!!」


 あっくんが言った。



「恋愛クソ雑魚野郎が恋愛クソ雑魚女とイチャコラしてんのによぉ。なんでこいつぁこんなに偉そうなんだろうなぁ。芽衣は逆神をぶん殴っていいぜぇ?」


 逆神六駆。

 終ぞ最強の座を譲らなかった主人公であり、恋愛戦闘力に関しては最底辺から動かなかった最弱の男でもある。



 芽衣ちゃまプレゼンツ「普通にビックリさせよう」という最強の矛を何故かいなした六駆くん。

 もう新しいアイデアは出ない気がしてならない。


「とりあえずもう1戦しましょうか!!」

「てめぇ。マフィン食いながらコントローラー持つんじゃねぇ」


「小鳩さんの作ったマフィンですよ! 何言ってるんですか!! 愛情たっぷりマフィンのベタベタが汚いとでも言うんですか!? あっくんさん!!」

「まあまあ! 嫌ですわ、六駆さんったら!! わたくしはわわわわですわよ!!」


 あっくんは思い出していた。


 自分の嫁さんも割と恋愛クソ雑魚乙女だったことを。


「ふんすー!!」

「うわぁ! 僕のカービィが!! ノア! 何するの!!」


「手を挙げられないので代わりにガノンドロフ先輩が手をあげました!!」

「こんなに可愛いカービィを虐待するなんてガノンドロフは酷いヤツだね!! じゃあ、ノア!! 建設的な意見をちょうだい!!」


 お忘れの方のためのノア隊員。

 六駆くんガチ勢であると同時に割と賢いので一般的な知見も持っているハイブリッドボクっ子。

 つまり、六駆くんが満足して、なおかつ常識的にギリギリアウトのラインを攻められるという事。


「先に莉子先輩のお母さん先輩にプロポーズしてはどうでしょう!! 莉子先輩にはもうプロポーズしてますけど、お母さん先輩にはしてませんよね!! 莉子先輩、すっごく驚くと思います!! ふんすふんすっ!!」

「……みみっ」


 芽衣ちゃんは思った。

 「ノアさんが大興奮を優先したです」と。


 あっくんは思った。

 「野郎の事だからよぉ。すっげぇいい顔でこれ採用するんじゃねぇかぁ?」と。


 小鳩さんは思った。

 「わたくしでしたらそんな事やられたら2時間くらい嫌いになりますわね」と。


 六駆くんは言った。



「うわぁ!! それ……すごくいいね!! ノア!! やっぱりノアは天才だなぁ!! それで行こう!! まずクリスマスまでに莉子のお母さんにプロポーズして、クリスマス当日に莉子に言うんだ! もうお母さんにはプロポーズしてるよって!! 驚いた顔が見られるぞ!! うふふふふふふふふふふふふふふふ!!」


 こうなる気がしていたと六駆くん以外の全員が頷いた。



 とりあえず頭の中もピンク色のカービィをあっくんのピカチュウと芽衣ちゃんのヨッシーとノアちゃんのガノンドロフとでボコボコにした。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 善は急げ。

 思い立ったら仏滅だろうと吉日。

 先手必勝で一撃必殺。


 逆神六駆の戦い方はいつでもシンプルである。


「じゃあ明後日! 莉子のお母さんにプロポーズして来ようと思うんですけど!!」


 あっくんがノアちゃんの頭をペシっと軽くはたいた。

 ちなみにノアちゃんにはアホ毛が生えているので、アホ毛がぽよんと揺れただけだった。


「よぉ。ノア。責任取っておめぇがついて行けよなぁ。この流れで、誰も一緒に行かねぇって訳にゃいかねぇだろぃ。惨劇が起きるって知ってんのに無視するような人間は俺だけで充分なんだよなぁ」

「ふんすっ! あっくん先輩!! それは無理です!! ボク、明日も明後日も普通に学校です!!」


「んなもんサボりゃいいだろうがよぉ」

「明後日から期末テストです!! ふんすっす!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 六駆くん回の途中ですが、南雲上級監察官の様子をお送りいたします。


「どうしたんすか? 南雲さん?」


 南雲さんがスマホを手に取って、慣れた感じで電話を掛けていた。


「あ。お世話になっておりますぅ。はい。南雲です。明日なんですけれども、羊羹を1ダースほどご用意頂けますか? はい。はい。必要になる予感がしまして。あ。大丈夫ですか? いつもお世話になって申し訳ございません。えっ? お礼を言うのはこっち、ですか? いえいえ。この羊羹のおかげでこれまで何度も世界の危機を救っていますから。はい。ではよろしくお願いいたします。失礼します」


 スマホを置いてコーヒーをズズズと啜った南雲さん。

 山根くんが言った。


「チーム莉子の誰かがなんかするんすか?」

「そうだね。もうね、私くらいになると分かるの。この予感が間違っててくれたら良いと思うよ? その時は羊羹、監察官のみんなに配るから」


 南雲上級監察官室からお送りしました。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 再びあっくんの家に戻ると、六駆くんが元気よく、何故か偉そうに言っていた。


「じゃあ! 明後日!! みんな予定を空けておいてくださいね!! 莉子へのデコイはクララ先輩に頼みますから!! 僕たち5人は莉子のお母さんにプロポーズしに行きますよ!!」

「そうはならねぇだろうがよぉ」



「えっ!? だって僕が1人で行くより5人で行った方がサプライズになりませんか?」


 おじさん豆知識。

 話してるうちにいつの間にか当初と目的が微妙にズレていることがある。


 本人的には微妙なズレに留まっているので本人だけが気付かない事が多い。



 チーム六駆くん、小坂家のアパートに突撃する事が決定。

 芽衣ちゃん、小鳩さん、ノアちゃんは莉子ちゃんの同僚としてギリギリ筋が通るか通らないか、やっぱり通らない寄りのギリギリであるが、あっくんに関しては完全に他人である。


 だが、断れない。


 あっくんと小鳩さんは六駆くんが遠因で結婚したようなもの。

 2人の性格を考えると断れない。


 芽衣ちゃんは師匠の言いつけ。

 彼女の性格を考えるとやはり断れない。


 ノアちゃんは「ふんすふんすっ」と興奮中。

 期末テストなんかもうどうでもいい。


 六駆くんのサプライズ大作戦。

 いったいどこへ行こうというのか。


 どこで過ちに気付くのか。

 誰が気付かせるのか。

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