第1497話 【エピローグオブ南雲の第2回ネオ国協の理事探し・その8】六駆くん「残りはアメリカの人にやってもらったらいいんじゃないですか? 国際って付いてるくらいだし」 ~南雲さん「えっ!?」~

 こちらはアメリカ探索員協会の本部。

 そろそろ帰りたいジャック・クレメンス上級監察官と、どうせ今日は夜勤なので上官が帰りたそうな雰囲気を察していながらそれを無視しているアームストロングオペレーターが司令官室にいた。


「上級監察官」

「なんだね。新しい仕事の話はよしてくれよ。退勤時間にかぶってしまう」


「南雲上級監察官からネオ国協の理事の進捗が更新されたとのご連絡です」

「ぐっ……。それは無視できないヤツじゃないか。翻訳してモニターに出したまえ」


 アームストロングオペレーターが「はい」と応じて、素早くカタカタターン。

 デキるオペレーターは万国共通で端末操作の音はカタカタターンなのである。


「出ました」

「……本当に日本人は働き過ぎじゃないのか? 数時間前から一気に増えているじゃないか。うちのワイフの漬けたピクルスをお贈りしておくんだ。南雲さんに」


「それはご迷惑になるかと」

「何故だね」



「臭かったので」

「君は実に優秀な男だが、私の引き金だってワイフをけなされると軽くなると覚えておきたまえ」


 アームストロングくんは「今の侮辱はピクルスに対してです」と訂正した。



 それではアメリカ本部に表示された現在までのネオ国協の理事、人事案を見てみよう。


 総理事。南雲修一(♂)。

 筆頭理事兼おっぱい保護局長。川端一真おっぱい男爵(♂)。

 理事兼科学技術長官。ペヒペヒエス(多分♀)。

 理事兼文化長官。帝竜人バルナルド様(♂)。

 理事兼剣術指南役。辻堂甲陽(♂)。

 理事兼バルリテロリ駐在武官。逆神四郎(♂)。

 理事兼女性の働き方号泣推進局長。パーフェクト雷門善吉(????)。

 理事兼ビッグボイン。エヴァンジェリン・ピュグリバー(ピチピチの♀)。


 クレメンス氏が「おお……」と感嘆の声を漏らした。

 続けて「あと1人というところまで来ているじゃないか」と手を叩く。


「まず、逆神氏が一族内で人事刷新されたようです。こちらの四郎氏は失脚された大吾氏のお父様だと注釈が」

「ほう。70代も後半か。日本もアメリカも、高齢化社会に歯止めはきかんものだ。私は60代でリタイアさせてもらうからな」


「それから、男女比率の重要性について再認識したため、性別の表記も加えたとの事です」

「まったく痒い所に手が届く。日本人ってすごいな。……おい。パーフェクト? パーフェクトなんとか氏の性別、文字化けしていないか?」



「どっちか分からなくなったそうです」

「ああ。ジェンダーの問題は昨今、国際的にもセンシティブだからな」


 パーフェクト雷門さんはセンシティブな話題として認識されました。



 あとはもうエヴァちゃんを容認してもらうだけ。

 この中でも1番に将来有望で、1番若くて、1番可愛い。


「アームストロングくん。ビッグボインとは?」

「ご存じないのですか?」


「……ああ。はいはい。あれか。あの、うん。よし、よく分かった」

「それは結構でした」


 アームストロングくんは「私も存じ上げないのでご存じでしたらお教えください」的な言葉を続けるつもりだったが、なんか話が終わったので黙った。

 そんなに仲良くもないし、唾棄するほどでもないが好んでもいない上官とのトークセッションはほどほどに限る。


「ところで上級監察官」

「なんだね」


「奥様のダンビラムーチョですが」

「私のワイフの種族をダンビラムーチョにするな。それがどうした」


「いえ。お名前は伺ったことがなかったな、と。不意にに駆り立てられまして」

「なんだ、君。なかなか良い好奇心を持っているな。うちのワイフはシンディだ。シンディ・クレメンスだよ」



「シンジですか。かなり思い切ったお名前ですね」

「どんな聞き間違い方をしているのかね、君は。ならせめて、シンジーと聞き間違えろ。シンディだ。見た目通りチャーミングだろう。で? それがどうかしたのかね?」


 



 その後、アームストロングくんは別件の仕事に取り掛かった。

 帰り支度を始めたクレメンス氏を見るなり「すぐに冷えたレモネードを持って来させてます」と言う。


「君。今日はいつになく気が利くな。喉が渇いていたんだよ」

「2リットルサイズの容器に入れたものを寄越させました。ご堪能ください」


 アメリカンサイズは我々日本の感覚をいつも超えていく。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 それでは本題。

 ピュグリバーで六駆くんが言った。



「あと1人はアメリカさんに出してもらうのがいいんじゃないですか? 現状の人事だと問題が起きた時に責任取らされるのって結局のところ日本と異世界ですもん。アメリカ探索員協会に籍のある人か、問題が起きた時に絶対に逃げられない人。あ! アメリカの上級監察官の家族とかどうですか!? うふふふふふふふふふふふ!!」


 悪魔的なアイデアを悪魔的な笑顔で。

 こういう事をサラッと悪気なく言ってくれてたのが初期ロットの六駆くん。

 最近は常識と良識を弁えすぎてて困る。



「逆神くん……。君ぃ……。なんやかんやで君は昔から、ここぞという時には躊躇いなく核心を突くなぁ。それもそうだ。考えたくはないけれど、問題が起きた時にこそ理事って仕事が増える訳だし。その時にそっぽ向かれると困るのは私たちだよね」

「雨宮さんならご存じなんじゃないですか? クレイトンさんのご家族。1人くらい探索員に携わってるでしょ! 60過ぎてるんだったら!」


 雨宮さんにも謀略の片棒を担がせるのは忘れない。

 さては六駆くん、そろそろ帰りたくなって来たか。


 観測者諸君の心にも寄り添える、これが主人公の器である。


「あららー。クレメンスさんだよ、逆神くん。あー。訂正しちゃった。もう逃げられないねー。確か、奥さんがいたよ。15歳くらい年下の太った奥さん」

「じゃあそれでいいんじゃないですか?」

「それでって逆神くん。君ぃ! 言い方ってもんがあるでしょうよ!! どんな人なのかも分からないのに!!」


 雨宮さんがスマホを取り出した。

 かつて国際探索員協会の本部が稼働していた頃に首脳会談へ赴いた際、夫婦で旧国協本部に来ていたので「なんかノリで一緒に写真を撮ったのよー」との事。

 スマホをスッスとやって、クレメンス氏とワイフのシンディさんを指さした。


「あれ!? これってドラクエのキャラですよね!? ねぇ、ノア!!」

「ふんすー!! ダンビラムーチョちゃんですね!! この覆面は間違いないです!! ボクのスマホでを出します!! スススッふんすっす!!」


 ついに知られてしまった、アメリカの最終兵器。

 ダンビラムーチョ・シンディ。

 失礼。


 シンディ・クレメンスさん。


 南雲さんが呟いた。


「えー。強そう。何してる人なんですか?」


 雨宮さんが答えた。


「聞かなかったけど。まあ、このパワフルな姿でしょ? 探索員か、そうじゃなくてもスキル使いなのは確定でしょー」

「そうですよね!! 逆神くん!! 君ぃ!! お手柄だよ!! 早速、アメリカ本部に打診しよう!!」


 「うふふふふふふ」と笑う六駆くんをチラッと見た仁香すわぁん。


 「男の人ってどうしてこう……。いや、ダメダメ!! 私がこのタイミングで何か言ったら、じゃあもう青山くん理事やってよ!! 水戸くんの副官辞めていいから!! とか言われて!! 私がすっごく悩むことになる!!」と自問自答を終えた。


 男子たちの良くないハッスルは放置が1番。

 エヴァちゃんとお喋りに徹する仁香さんであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 再びアメリカ本部の司令室。

 アームストロングオペレーターがクレメンス上級監察官に告げた。



「上級監察官。あなたのワイフにネオ国協の理事、就任の打診が来ました」

「何故だね?」



 既にレモネードを飲み終えていたクレメンス氏。

 やはり南雲さんのコーヒー芸のような高みにはまだ届かないか。

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