第1442話 【エピローグオブ神聖バルリテロリ皇国を望む者たち】みみみと鳴く可愛い生き物に平伏したいけど、当人の意思は尊重する捕虜の人たち

 現世に2度も侵攻ぶっこんだ挙句、逆神家の諍いをそのまま戦争にまで発展させて最終的に本土決戦でボコボコにされたけれどもなんだかんだギリギリ存在している、そんなバルリテロリ。

 死なない皇帝による君主独裁制によって既に100年近く治世がなされている。


 が。


 思い出して頂きたい。

 逆神家を縛っていた転生周回者リピーターの異能。

 いわゆる崇高な使命(笑)であるが、これは逆神家初代の逆神人殺助を滅するために逆神家2代目、逆神次郎三郎仁右衛門が発現させたものであり、なんやかんやで人殺助を討伐したため、恐らくもう逆神家の者たちは異世界転生周回者リピーターとしての能力は失われたと思われる。


 そこで問題になって来るのが、偉大なる皇帝陛下。

 逆神喜三太陛下である。


 喜三太陛下以外の逆神家はまだ寿命が分からない。

 人間の寿命なんて誰にも分からないもので、例えば神のような上位存在がいるのであれば、気まぐれに明日殺されるかもしれない。

 それはそれとして、逆神家最年長の四郎じいちゃんも未だ元気、健康長寿を目指している。


 繰り返しになるが、そこで喜三太陛下である。

 こちらの皇帝、寿命で42歳になると御隠れになられることが確定事項として存在している。

 既にバルリテロリ皇帝として玉座に君臨なさってからも何度か42歳で御隠れになっている。


 幸か不幸か、この場合は多分圧倒的に幸だが転生周回者リピーターの能力で寿命を迎えた後も17歳として転生なさっておられた陛下。

 その異能がなくなった今現在、陛下は17歳の肉体になられてはおられるものの、このまま順調に行くとあと25年足らずで逝かれるのが決定事項。


 そうなればバルリテロリはどうなるのか。

 考えられるパターンはいくつかあるが、その全てを列挙してもなんだかモニョっとするし、誰も興味はないだろうし、ここは1つの可能性に特化して、そこにだけフォーカスしようではないか。


 それでは、ミンスティラリア魔王城からお送りします。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 学校を終えてから体操服に着替えてスキルの修業。

 それも終えると自室で汗を流して部屋着になった芽衣ちゃまが食堂へやって来る。


 ここで1つ、ルーティーンが発生する。

 まったく描写されていなかったので諸君が知らないのも無理はないが、食堂では跪いている者たちがいた。


「芽衣殿下!! 本日も素晴らしい1日を過ごされたようですね!! わたくしども、心からお喜び申し上げます!! さあ! 皆さん! お喜び申し上げるんですよ!! 殺しますよ!!」


 シャモジ母さんを筆頭に、未だミンスティラリア魔王城に留まっているバルリテロリ捕虜チームであった。

 彼らはファニちゃん魔王様から「別にいつまででもここにいれば良いのじゃ!!」と御許しを賜っており、お言葉に甘えてもう10ヶ月ほどここにいる。

 いい加減帰れよと誰も言わない優しい世界がミンスティラリアなので、普通に衣食住の保障がされた状態でとりあえず芽衣ちゃまを崇め奉っている。



「みっ!! ヤメてです!! みみみっ!!」

「はっ!! ではヤメます!! 皆さん、ヤメるんですよ!! 殺しますよ!!」


 彼らはこのやり取りだけで10ヶ月、飯を食っている。



 だが、本日バルリテロリ捕虜チームに衝撃が走る事になる。

 莉子ちゃんが大学を終えてバルリテロリに出かけていた。

 これはいつもの事なのだが、謁見の間に生え散らかしている門の1つか輝くと、中から莉子ちゃんが戻ってきた。


「ただいまー!! ささ、どうぞどうぞ!! ダズモンガーさんのご飯、すっごく美味しいんですよっ!!」


 本日は莉子ちゃんがお客さんを連れて帰って来た。


「やばっ。ダズモンガーさんってトラの人じゃん。ちゃんと話しすんの初めてだわ。えー。莉子ちゃん、あたし制服なんだけど。失礼じゃない?」


 六宇ちゃんがやって来ていた。

 さらにもう1人ほどシルエットが続けて出て来る。

 大変にビッグボインであった。


「はい。六宇様。違います」

「どっち!?」


「はい。六宇様。お許しを得て申し上げます。高校生にとって制服はフォーマルな装い。失礼には当たらないかと。しかし六宇様。20歳越えて女子高生を名乗るのは失礼です」

「うん。うん? どっち!?」


 オタマさんも皇宮秘書官として同行していた。

 つまり、こうなる。



「オタマさんではありませんか」

「これはお母様。ご無沙汰しております」


 出会う。

 シャモジ母さんとオタマさん。



 芽衣ちゃんが「面倒で危険が危ない予感がするです」とテーブルの端っこの方に移動した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 オタマさんはシャモジ母さんの娘。

 伝来のメリケンサックを使った戦型でバルリテロリ戦争末期においてチーム莉子を苦戦させたのは記憶に新しいかといえば微妙だが、バルリテロリ戦争の中だとやっぱり記憶に新しい。


「お母様、お元気そうで何よりです」

「ええ。オタマさんも。陛下をしっかりと御諫めしていますね?」


「はい。メリケンサックをストッキングに入れて御諫めしています」

「結構です」


 なんだかドライな母娘であるが、この家は代々こんな感じである。

 シャモジ母さんなんてバルリテロリ戦争の中盤で十四男ランドに同行してから戦時中行方不明扱いだった。


「あ゛あ゛あ゛!! はひはふはへへ、ほはひひふ!!」

「あ。十四男様。特殊な喋り方の人はエピローグ時空ではセリフが削減される傾向にあるそうですので、こちらでお食事を頂戴しましょうね」


 逆神十四男は「仲の良い母娘が再会できて、それはとても素晴らしい」という旨を表明。

 ガンコさんが「はいはい。おじいちゃん、ご飯ですよ」と食堂の端の端へと連れて行った。


「六宇さん! グアルボン食べましょう!! コラーゲンたっぷりでお肌プルプルになりますよ!! 最近は美味しくなりましたし!!」

「マジ? そんなの絶対食べるじゃん!!」


 莉子ちゃんと六宇ちゃんは食堂で腕を振るうトラさんのところへ。

 「今日はちょっと人が増えます」と伝えに行った。

 「ぐーっははははは!! 承知いたしまするぞ!!」とすぐに答えるはたらくトラさん。

 有能である。


「オタマさん。陛下は御隠れになりましたか?」

「いえ。まだお元気です。毎日しょうもない事に全力であらせられます」


「そうですか。わたくしはあちらにおわす、芽衣殿下による! 神聖バルリテロリ皇国の建国を臣民に問いたいのですが!!」

「それは素晴らしいお考えだと思います」



「み゛……」


 芽衣ちゃんのみみみアラートが発動しそうな空気になって来た。



「そうでしょう、そうでしょう!! では、臣を集めるのですよ! オタマさん!!」

「はい。ですがお母様。芽衣様の新たな皇国を作るとなれば、現皇帝陛下との間でまた戦争が起きるかと思われますが」


「おーっほほほほほ!! オタマさん。勝てばいいのです!!」

「はい。仰る通りです。では、芽衣様に早速御出立のご用意をお願いしましょう」


 すごくスムーズに、ところてんがぬるんと出て来る時のような爽快感を共に、芽衣ちゃまの皇帝即位までの道筋がはっきりと輝き始める。

 なので、芽衣ちゃんは言った。


「みみみみみっ! 芽衣、そんなことしたくないです!! み゛っ!!」


 シャモジ母さんとオタマさんが同時に頷いた。



「ではヤメましょう!!」

「左様ですね。そうしましょう」


 当人の意思が1番。

 バルリテロリは君主独裁制なので、次期君主のお気持ちが最も強く反映されるのだ。



「みみみぃ! シャモジおば様もオタマさんもこっちで芽衣とご飯食べて欲しいです!! みみっ!!」

「はっ! オタマさん、ご覧なさい!! 芽衣殿下の愛らしさを!!」

「お母様。なんという逸材を……。なるほど、帰って来られないはずですね」


 芽衣ちゃんが新旧バルリテロリ皇宮秘書官にロックオンされたものの、とりあえず「嫌です!!」と言っている間は平和そうであった。

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