第1409話 【エピローグオブ南雲の接待キャバクラ・その3】キャバクラで首脳会談? 冗談じゃありませんよ! ~もっといい場所を教えて差し上げますよと、男爵は言った~

 お昼前の日本本部に猛者たちが集う。


 同時刻。

 水戸監察官室では、仁香さんブートキャンプが開催されていた。


「うん! 良い感じだよ、芽衣ちゃん! じゃあ続けて、ミット打ちを20セットね!」

「みみみみみっ! 頑張るです!! みっ!!」

「はひ、はひ、はひ……。仁香しゃん……ちょっと休憩したいでしゅ……」


 かつては莉子ちゃんがデブった、失礼、ちょっとだけムチった際に日本本部の乙女の中で最もストイック、趣味はトレーニングと公言する仁香すわぁんに白羽の矢が立って始まったこのダイエット行軍。

 今でも体力維持と体型維持とメインヒロインがちょっと目ぇ離すとモグモグする性根を叩き直す目的で継続されており、盆休みで宿六がいないとかもうそんなの仁香さんブートキャンプが始まらないはずないのである。


 ちなみに野郎どもは南雲上級監察官室でキャバクラについて語り始めている。

 中学校の休み時間にマガジンかサンデーを持って来て「どひゃー! 今回のグラビア、すっげぇぞ!! オラの如意棒が伸びちまう!!」とか騒いでいる男子と、「あたしちょっと太ったかも」「じゃあ帰りにラウンドワン行く?」とお菓子喰いながら談笑している女子の図は大人になっても変わらないのかもしれない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして南雲上級監察官室。


「つまり、キャバクラというものは薄着の女性と密着して、好きなところを眺めてもいいというアミューズメント施設なのですね!!」

「雨宮さん!! もうね、来てくれたのはありがとうございますと言わせてもらいますよ!! ……女王陛下同伴で来ることはないでしょうよ!!」


 南雲さん、雨宮さん、川端さんがテーブルに。

 六駆くんと山根くんは端末の前に。


 エヴァちゃんは雨宮さんの隣に。

 欲望まみれな話題の中心に純粋な乙女がいる。


 これはいけない。


「山根さん。ちょっと通信回線開いてもらえます?」

「うっす。……オッケーっす。どうぞ」


「ありがとうございます。もしもし、こちら逆神です! 莉子、いる? エヴァさんがこっちに来てるんだけどさ! みんなでご飯食べておいでよ!!」


 夫婦はいつも以心伝心。

 2人の距離繋ぐ通信端末テレパシー


 ドドドドドドドドドと駆け足にしては気合のこもった音がして、扉が開いた。


「六駆くん!! 大好き!! ありがとー!! あのね! 今ね! 今の通信でね!! トレーニングの休憩がね!! ホントに六駆くん、好き!!」


 莉子ちゃんがとても良い笑顔で突入して来た。

 エヴァちゃんを連れて一刻も早くカフェテリアへ向かうべく、今では親戚関係になったピュグリバーの姫の背中を押して退室。


 去り際に彼女は振り返って聞いた。


「ところで何のお話してたの?」

「えっ!? ……そういえば莉子の脇腹って柔らかくて揉み心地良さそうだよ゛ね゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? 違うんだよ、莉子!! だっておっぱいの話って言ったら傷つけちゃうかと思って!! 莉子にも柔らかいところはあ゛る゛あ゛あ゛あ゛あ゛」



 珍しく六駆くんが失言によってリコられログアウトした。



「さて。では、話を続けましょうか。南雲さん。どこのキャバクラへ行かれると仰いましたか?」

「あ。今の惨劇を見ても動じない辺りはさすがですね、川端さん。顔のブラジャー、もう取ってもらえます? 話しにくいので。日須美市の歓楽街にある高級店の予約を済ませています」


「なんですって? あそこはダメだ」

「ええ……。何故ですか?」


「壊れるほどおっぱいを愛しても、3分の1も伝わらないお店です。考えられますか?」

「なに言ってるのか、まずそこから分かりません。なんで急にSIAM SHADEの名曲を穢したんですか? 私のカラオケの十八番なんですけど。嫌だなぁ」



「キャストのおっぱいは悪くない。ですが店側の提供するおっぱいサービスにキャストが納得していない。南雲さんほどの男ならばもうお分かりでしょう? おっぱいはね、双方の同意と敬意、愛があって初めて巡り合って良いものなんです。強制されたおっぱいなど、私は認めませんよ」


 南雲さんは「もうそろそろ現場に入ってお店の人と打合せしたいのにな」と思った。



 雨宮さんが「あららー」と川端さんの肩を叩く。

 これはもしかすると、たまに顔を出すSSR雨宮さんか。

 良識と常識を携えた、紳士的なおじさんが出るか。


「川端さーん。これなーんだ」

「そ、それは……!! まだ持っていてくださったのですか!?」


「当たり前ですよー! 私たちの青春じゃないですか! これを南雲くんにあげても、いいですよね?」

「ええ、ええ。もちろんですとも。3桁万円までは数えていましたが、今となってはいくら積んだのか記憶にもない。あるのは愛に満ちたおっぱいとの記憶だけ。南雲さん、このポイントを使ってください。2千万くらいの価値はあります」


 南雲さんがものすごく控えめな手つきで受け取ったそれは、金色こんじきに輝く会員カード。

 イギリスで貯めて、日本支店にも何度も通った、世界中に展開していてその全容は終ぞ誰にも把握しきれなかった、その店きみの名は。



「日須美市にもあるんですよ。『OPPAI』が。世界の行く末を考えるというのならば柔軟な思考が必要でしょう。そう……上質なおっぱいのように、ね」

「いえ、あの。川端さん? それキャバクラですか? よりセクシャルなお店になってません? 雨宮さんはどこに電話してるんですか? あ、おい、山根くん!? なに機密通信開いてるんだよ!? やーめーろーよー!! みんなしてさぁぁぁぁぁ!!」


 会談の場所が急遽変更になりました。



 そして2時間後。

 南雲さんの運転するインプレッサに乗り込む、山根くん。

 副官として会談の場に同席する。


 続けて雨宮さん。

 前任の上級監察官として何かあればサポートできるように店外で待機する。


 最後に川端卿。

 そこにおっぱいがあるならば行かねばならぬ。

 理由はそれで充分。


 さあ、国際探索員協会の古き体制をぶち壊して、新しい世界ワールドへ。

 おっぱいのように弾む未来へ向けて、アクセルを踏み込むのだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 4時間後。

 転移スキルや【稀有転移黒石ブラックストーン】ではなく、航空機で来日したアメリカ探索員協会のジャック・クレメンス上級監察官。

 隣にはアームストロングオペレーター。


 クレメンス氏は娘の彼氏が日本人なのである程度は会話にも応じられるが、今回は公式な会談であるからして日本語が堪能なアームストロングくんが通訳として同行している。

 かのイチロー氏も英語ペラペラなのに会見では齟齬があってはならぬと通訳を介していたのはあまりにも有名な逸話。


『アームストロングくん。ここがキャバクラかね?』


 いきなり英語でクレメンス氏が喋り出したらみんなも困るし、何より世界が困る。

 よって、鉤括弧の種類で英語と日本語を諸君には区別して頂きたい。

 通常のものが日本語である。


『いえ。違います』

『違うのか!? じゃあダメだろ!? もう予定の時間まで30分なんだから!!』


 こっちが英語である。



『ここは『OPPAI』です』

『君。私に分からん日本語を使うのはよしたまえ。ちゃんと英訳しろ』


 ここは『OPPAI』である。



 入口では山根健斗Aランク探索員がスーツに着替えて待機していた。

 クレメンス氏とアームストロングくんを見つけると、頭を下げる。


『本日はわざわざご足労いただき、誠にありがとうございます。ナグモが既に中で待っておりますので、ご案内いたします』

『これはご丁寧にありがとうございます。上級監察官、行きましょう』


 クレメンス氏は思った。

 「なんか今、南雲氏の発音がおかしくなかった?」と。


 幕を開ける。

 日米探索員首脳会談。


 次回。

 おっぱい。


 涙と汗と乳。

 流れるのは一体どれだ。

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