第1401話 【エピローグオブ木原芽衣ちゃま・その2】若手に手本を示す、みみみと鳴く可愛い生き物 ~その他大勢が多すぎる~

 芽衣ちゃん、日本本部へ。

 楠木監察官室に出頭してこれから率いるパーティーメンバーと顔合わせ。


「みみっ! 木原芽衣Bランク探索員です! チーム莉子の弱卒です! 至らぬ点ばかりだと思うです! よろしくお願いしますです!! みっ!!」


 芽衣ちゃんが可愛く美しい敬礼でご挨拶。

 今回のダンジョン攻略はひよっこたちの経験値稼ぎ的な側面が強い。


 18歳の紅林くんが先頭に立ち代表して敬礼する。

 続いて17歳の女子、小園さんと森下さん、佐野さんが続いた。

 最後に16歳の坂倉くんが慣れない所作で敬礼をして「我々全員、まとめてよろしくお願いいたします」の意を簡略して伝える。


「みんな、芽衣ちゃんに聞きたい事があったらどんどん質問するようにね。日本本部で、というか世界で1番強い部隊のオールラウンダーなんだから」

「みみみみっ。仁香さん、持ち上げすぎです。みみっ」


 若手は貪欲過ぎるくらいでちょうど良い。

 小園さんが手を挙げた。


「はい! 質問よろしいでしょうか!!」

「みみみっ。芽衣は同い年だからあんまり畏まらないで欲しいです。みっ」


「とんでもありません! バルリテロリ戦争の一級戦功者である芽衣さんと私たちでは立っているステージが違います!!」

「みみぃ。みっ! 質問どうぞです!!」



「はい! ありがとうございます! 青山Aランクはどうしてトラ柄のマントを装備しておられるのでしょうか!!」

「……みみっ」


 早速答えづらい質問が芽衣ちゃんの小さなハートを貫いた。



 チラッとだけ仁香さんを見ると、ウインクで返事をしたお姉さん。

 さすがは25歳。

 修羅場ならもう両手で数えきれないほど潜り抜けて来た。


「流行りです!! あの、今、その、高ランク探索員の間で、あれだから。トラ柄が流行ってるんです。はい、次の質問!! 早くしないと現場に向かう時間になるよ! こういうちょっとした時間をいかに有効活用できるかで成長速度は変わるんだからね!!」


 仁香お姉さん、パワープレイで押し通す。

 「下は白ビキニだからだよ」とは口が裂けても言えなかった。

 仁香さんだって乙女である。

 乙女である前に大人である。


 職場に水着でやって来て「これが正装です」と名刺代わりにハードパンチをキメる25歳とは思われたくない。

 未成年たちにロングコートの下はあられもねぇ姿の露出狂みたいな女と思われたくない。

 実際のところ自発的か強いられているかの違いだけで、露出狂に限りなく近い自覚はあるのだ。


「はい! よろしいでしょうか! 紅林です!!」

「みみみっ」


「芽衣Bランクは先の戦争でピースの重要容疑者を駒として扱い、異世界に住まう2足歩行の獣人を使役したと伺いました!! 自分、指揮官志望です!! その卓越した用兵術の秘訣をお教え願いたいです!!」

「みっ……。みーみーみー」


 芽衣ちゃんはちょっとだけ考えてから答えた。


「みみみみっ。諦めずにお話することです。名前で呼んであげると仲良くなれるです。あと、冬毛のモフモフを見つけたら離さない事です。みみみみみっ」

「おお! 勉強になります!!」


 多分なにも参考にならない武勇伝をメモする次世代を担う若者たち。

 芽衣ちゃんは17歳。

 余裕で若手の年齢なのに、もうベテランの風格しかないのは何故なのか。


「はい。時間です。じゃあ、白ビキニダンジョン攻略へ向かいます。……このふざけた名前で登録したのはあの人しかいないな。帰ったら蹴り飛ばそう。みんな、転移ポイントへ!!」

「みみみみっ。時計合わせをお願いするです。任務開始です。みっ!」


 【稀有転移黒石ブラックストーン】で芽衣ちゃん隊がビキニダンジョンへ転移して行った。


「うぉぉぉぉぉぉん!! 逆神ぃ!! お前、やっぱり良いヤツだなぁぁぁぁ!!」

「ノア!! ノア、早くこっち来て!! さっきトイレでうっかり出くわした僕が悪いから!! 責任取ってついて行かないと!!」

「ふんすっ!! これは興奮する展開です!!」


 芽衣ちゃん隊が転移した数分後に誰だか分からないが、今回は巻き込まれたっぽい最強の男とその他数名が続けて転移する。


「ちょっとぉぉ! 逆神くん!! 君ぃ! なんでそんなトラブルの火種、というかもう燃えてる! なんでその災害を連れてくのよ!? こんなの後で責任取らされるの私って決まってるじゃん!! じゃあもう現場で直接犯行を止める!! 今の私、偉いんだから!! 行くぞ、山根くん!!」

「うーっす。帰ったら書類仕事が深夜3時まで予定されてるんで、よろしくお願いしますね。自分は定時で帰るっす」


 さらに続けて4分後、3分後でもなく5分後でもない辺りに不吉さしか感じないが、そして誰なのか分からないが、もうコーヒーのカフェインくらいじゃ落ち着けなくなった苦労人が副官を連れて転移する。


 若手の経験値稼ぎにしては役者が揃い過ぎている、豪華なメンツでいざ。

 ふざけた名前のダンジョン攻略へ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 白ビキニダンジョンはアメリカのノースダコタ州に出現した全4層のダンジョンである。

 ちょっと足を伸ばすとカナダとの国境がある、アメリカの中で最ものどか、ありていに言えば田舎な地域にいきなりダンジョンが出現したら現地の人はもちろんアメリカ本部も困る。


 日本本部との関係が「険悪」から「修復傾向」へと変わり、いつの間にか「良好」になったアメリカ探索員協会。

 本国にダンジョンが生えて来たらすぐ「日本の南雲上級監察官に繋げ。あと出産祝いにうちのワイフが焼いたピザも送れ」と指示を飛ばすようになったクレメンス上級監察官。


 それもこれも南雲さんの不断の努力と永遠に終わらない苦労の成果。


「みっ。現着です。まずは周囲の警戒と隊列の確認をお願いするです。みっ!」

「くぅぅぅ! 芽衣ちゃん隊、いいなぁ……! 私、この部隊で60歳まで働きたい!!」


 お姉さんが周囲の警戒と隊列の確認を無視。

 芽衣ちゃんに「み゛ー」とちょっとだけ怒気のこもった鳴き声を賜って、仁香さんは幸せだった。


 森下さんが「周囲にモンスターの気配ありません!」と報告すれば、佐野さんが「マッピング完了! 事前の情報通り最下層は4層です!!」と役割分担もきっちりキメる。

 最後に最年少の坂倉くんが「隊長! オレ、初めての現場でお腹痛いです!!」と体調不良を報告して準備完了。


「みっ! お腹痛い坂倉さんが中心です! それを囲むように隊列を組んで、慎重に進むです!! どこからが出て来るか分からないのでには常に注意を払うです!! みみみみみっ!!」


 芽衣ちゃん隊が第1層の攻略を開始した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃の壁際。


「うぉぉぉぉぉぉん!! 逆神ぃぃぃ!! 聞いたかよぉぉぉ!! 芽衣ちゃまが、立派に隊長してるじゃねぇかよぉぉぉぉ!!」

「うわぁ! 壁に注意するっていう意味がね! 僕たちに気付いてて、とっとと帰れって言われてる可能性ってどのくらいだろう!!」


「ふんすふんす!! ボクの穴ちゃんも芽衣先輩にはすぐバレちゃうので出せません!! ところで南雲先生! お仕事は大丈夫なんですか?」

「嫌だなぁ、もう。昔は監視するのって私の得意技だったはずなのにさぁ。転移して来たら待ってるんだもん。逆神くんとノアくんがさぁ。そこは気付かないふりしてよ……」


 六駆くんの隠匿スキルで気配と煌気オーラを感知されにくくしてはいるものの、もうどの程度バレているのかの心配をした方が良い保護者参観チームがいた。


「あ。南雲さん」

「なによ。山根くん。それより、なんか揺れてるんだよ。このダンジョン大丈夫かな」


「木原さんがそこでドラミングしてるっすよ」

「……これまたダンジョン消失させる流れだなぁ。私の権限でもみ消さなくちゃ」


 これは芽衣ちゃまの成長をみんなで見守る、そんなエピローグ。

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