第1375話 【エピローグオブ逆神六駆ファーストステージ・その1】やっと来たぞ! 主人公の隠居生活! その実態に迫るヤツ!!

 ついにやって来た我らが主人公。

 逆神六駆の出番である。


 ファーストステージとか付いているが、今はそっとしておこう。


 資産が300000000円を超えた。

 0がいっぱい万円、略して3億円。


 慎ましく暮らしていくならば充分に隠居できる額が貯まったのである。

 六駆くんはもう、とにかく疲れていた。

 異世界転生周回者リピーターとかいう訳の分からん崇高な使命(笑)を課せられて29年も知っている人がいない、時には人すらいない異世界で戦い続けて、現世に復帰してからは約1年半ほど探索員に従事した。


 隠居してからの半年を加えるとほぼ2年。


 もう疲れたから始まった、約2年間。

 そして貯めた、2年で3億。

 冷静に考えると18歳で総資産3億とかワクワクすっぞ飛び越えてテンションが下がるまである金額。


 そして六駆くんは宣言通り隠居した。


 彼の言う隠居とは、別にどこかの山奥にこもって世捨て人のように暮らす事ではなく、「やりたい時にやりたい事をやりたいようにする」事を指しており、そのやりたい事には時々「お金稼ぎ」が思い出したようにひょっこり顔を出すので今後も資産は微増を続ける。


 微増と言っても年に数百万から多ければ数千万が想定され、現在の探索員協会、日本本部、各国の協会、そして国際探索員協会。

 これらの在り方を見る限り、六駆くんの外側年齢が60を超えても仕事はありそうである。


 我々庶民がNISAやろうかヤメようか悩んでいるのがアホらしくなる資産形成を完了した最強の男。

 あとはもうやりたい事をやるだけ。


 これは逆神六駆がお金貯めた、その後のお話。

 その



◆◇◆◇◆◇◆◇



 六駆くんの朝は意外と早い。

 29年間も戦い漬けだったので、朝日が昇ると自然に目が覚めるらしい。


 魔王城の自室で顔を洗って歯を磨いたら朝ごはん。


「おはよう! 莉子! 芽衣! ノア!!」


 日によってメンバーは違えど、チーム莉子から抜けた今でも食堂に集まった仲間たちと朝食は共にするのが逆神流。

 誰かと一緒に食べるご飯はそれだけで美味い。

 気心の知れた愛すべき隣人とならば格別。


「六駆くん! 聞いて!! わたしね! 今日、芽衣ちゃんとノアちゃんと修業して来たの!! もぉぉぉ! 絶対に痩せちゃったよー!! 困るよね、六駆くん! だって、痩せる時っておっぱいから痩せる人も多いらしいし!!」


 莉子ちゃんが朝から旦那に会えてうれしそう。

 芽衣ちゃんとノアちゃんは「……みみっ」「ふんすー」とテーブルにあるお皿や調味料を別のテーブルに避難させた。


 莉子ちゃんがその空いたスペースに突っ伏す。


「……ごめんね。六駆くん。おっぱいが抉れちゃったら。わたしの事、嫌いになったら言ってね?」


 乳と和解した莉子ちゃん。

 これはこれでちょっと扱いに困る。


 しかし、六駆くんも別に莉子ちゃんのおっぱいに惹かれた訳ではない。

 こんな時は優しく肩を抱いてそっと囁く。



「おっぱいって抉れるんだ!? へー!! すごいね!! 興味あるなぁ! 見てみたい!! ねぇ、莉子! 見せてみあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「もぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 抉れてないよ!! そこはさぁ! 莉子のおっぱいを好きになったんじゃないよ、僕。って耳元でさ! 囁いてよぉ!!」


 リコられるのもまた1つの愛情表現。



 こうして六駆くんも朝の運動を終える。

 煌気オーラコントロールが並の下くらいになった莉子ちゃんの『リコリコンバット』は寝ぼけた頭を覚まし、強張った体をほぐすのにちょうど良いという。


 朝ごはんを食べたら何をしようか考える。

 今は8月第1週目であるからして、大学は夏休み。


「莉子はこれからなにするの?」

「ふぇ? 今日はね、エヴァさんのところに遊びに行く約束なんだぁ! 六駆くんも行く?」


「んー。今日はヤメとこうかな。僕たち2人が急に行くと雨宮さんが困るだろうし」

「そっかぁ。じゃあ、わたし行って来るね! お土産に玉ねぎ貰って来るから!!」


 仲良しカップルだって四六時中、常に一緒にいるわけではない。

 そうしていると頬っぺたと頬っぺたがくっ付いてしまうかもしれない。


 二首の魔人を今さら登場させなくとも良いはずである。


「にゃはー。瑠香にゃんアラームを解除するの忘れとったぞなー。夕方まで寝る予定だったのににゃー」

「おはようございます。グランドマスター。ぽこますたぁの部屋で瑠香にゃん、鳴いてやりました。ステータス『瑠香にゃんにアラーム機能なんか付いてない』をおっぱいに格納します。充電完了して暇でした」


 芽衣ちゃんとノアちゃんはそれぞれ日本本部に向かった後であり、小鳩さんは音も残さず旦那のところへ。みんなから2時間遅れで起きて来たのが猫と猫。

 六駆くんにとっては大学の先輩猫と大学の同輩猫である。


「六駆くんは何しとるんだにゃー?」

「朝の情報番組を見終わって、何しようか考えてたところです!」


「グランドマスターからステータス『おじいちゃんか』を確認しました。瑠香にゃんのおっぱいに厳重に格納しておきます」

「そういう日もあるもんにゃー。分かる、分かるぞなー。何しようかにゃーと考えて、1日が終わる。そんな日もまた愛おしいもんだぞなー」


 クララパイセンがご飯を食べている間に瑠香にゃんと『瑠香にゃん卓球ピンポン』で腹ごなしをした六駆くん。

 気付けばお昼になっていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 朝の情報番組からお昼のワイドショーのはしごをしようか思案していたところ、ミンスティラリア魔王城に備え付けられているサーベイランスが鳴った。

 瑠香にゃんが立ち上がろうとしたが、それを制した六駆くん。


 暇だったので、立ち上がる理由を欲していたのだ。


「はい! 逆神です!!」

『逆神くんなの!? どうしたの!? 具合悪いの!? 君がサーベイランスに応答してくれるとか、1ヶ月連続で試行重ねても1回あったら奇跡だよ!?』


 南雲さんからなのは当然である。

 ご用向きはなんであろうか。


「暇なんですよね!!」

『……逆神くん。200000円でどう?』



「やります!!」

『君、0の数え方が上手になったよね。昔は10000を超えたらパニック起こして、前後不覚に陥ってたのに。でも助かるよ』



 飛び込みで任務が入って来た。

 これも隠居生活の醍醐味。


 ちなみに六駆くんは醍醐味という言葉が嫌い。

 醍醐味。だいごみ。大吾味。


 おわかりいただけただろうか。


『あのね、アメリカのロッキー山脈って知ってる?』

「エイドリアーン!! ですか!!」


『うん。違うよ? むしろ、君、中身はおじさんだけど記憶は若者のはずでしょう? なんでそっちが出て来たのか、本物のおじさんである私はちょっと嬉しい』

「北アメリカの西部を北西から南東に連なる山脈の方ですか?」


『えっ。あ、うん。そうだけど。頭のいい逆神くんってなんか嫌だな。あ。ごめんね? 酷いこと言ったね、私』

「いえいえ! 莉子にもたまに言われますから!! だって大学って楽しいんですよ! ちょっとお金払ったら好きなこと教えてもらえるんですよ!! 専門家に!!」


 パイセンをじっとりとした目で見つめる瑠香にゃんがいた。


「にゃはー!!」

「……ぽこ。ステータス『無念』を獲得。瑠香にゃんのおっぱいに挟み込みます」


 南雲さんからの依頼はこう結ばれた。


『ロッキー山脈に大穴が空いてね? それ、塞いで来てくれないかな?』

「いいですよ!! 寂しいのでクララ先輩と瑠香にゃん連れてってもいいですか?」



「にゃん……だと……」

「瑠香にゃんは余裕の想定内でした」



 悠々自適な感じで行われる、国際問題解決任務が始まった。

 多分だが、このミッションはすぐ終わる。


 まだ大学生活の方をやっていないのだから。

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