異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1372話 【エピローグオブ平山ノア・その1】暗躍する後輩 ~楽しそうなのでオッケーです~
第1372話 【エピローグオブ平山ノア・その1】暗躍する後輩 ~楽しそうなのでオッケーです~
平山ノアちゃん。
チーム莉子のルーキーの座は瑠香にゃんに譲ったが、チーム莉子の後輩である。
「………………………………?」
チーム莉子のルーキーの座は瑠香にゃんに譲ったが。
ノアちゃんのモチベーションはいくつかあるが、複雑怪奇に絡み合っているだけで紐解くとシンプルだったりもする。
まずは六駆くんガチ勢。
逆神六駆特務探索員のファンはアトミルカ殲滅戦以降、結構な勢いで増えた。
ノアちゃんもその1人であり、六駆くんの活躍っぷりを知って居ても立っても居られなくなり、当時在籍していた雷門監察官室を出奔。
押しかけ弟子入りした。
次に探索員として貴重な経験を積むこと。
逆神流に入門してからは『
師匠ですら未だに「うわぁ!! 僕には分からないよ!! なんでそうなるんだろう!!」と頭をかいて笑っているが、探索員として唯一無二の軌跡を描いたのは間違いない。
最後に、これが重要。
自分のワクワクすっぞを優先して、形にすること。
ノアちゃんは月刊探索員の編集者という地位を既にゲットしており、最終決戦を終えてからは年に4度出す季刊誌の編集長という自己のジャーナリズムを発揮できる環境を確立。
ノアちゃんにとって「世の中にはこんなに興奮する事があるんです! ふんすです!!」という事実を世間に知らしめたい。
広く知らしめたい。
それが現在の彼女を突き動かす原動力。
だが7月号の『月刊探索員・夏』は発刊済み。
次の季刊誌は10月なのだが、月刊探索員の監督責任者でもある楠木秀秋監察官にそこを曲げて夏号をもう1冊出させてくれとこれから交渉するところ。
理由はやっぱりシンプル。
「ボク、せっかく水着回で運営側に回ったんです!! これはもう出さなくてはなりません!! 世の中の先輩たちに向けて!! 『月刊探索員・女だらけの夏』を!!」
この、とかく
◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな訳で7月最終週。
楠木監察官室にやって来ていたノアちゃん。
「ふんすです!! 楠木先輩!!」
「やあ。ノアさん。申し訳ありませんが、リャンさんは有給消化。屋払くんも今日は任務がないのでお休みです。私でお相手になれるでしょうか?」
「そうだったんですか!! 監察官室が楠木先輩だけとは! ややっ! ボクの後輩魂が真っ赤に燃えます!! お手伝いします! ヒートエンドふんすです!!」
嘘である。
ノアちゃんのジャーナリズム力を舐めてはいけない。
リャンちゃんはともかく、屋払さんは意外と堅物。
『ドキッ! 女だらけの月刊探索員!!』を刊行するために真面目な既婚者とか邪魔者でしかない。いない時を狙ったのだ。
その観点で論じるのであれば楠木さんも真面目な既婚者なのだが、こちらの穏やかな文官にも良くない個性が付与されて久しい。
「やややっ!! 忘れていました!! 楠木先輩!! さっき呉の先輩のところに寄って来たんですけど! これ、お土産です! 獺祭っていうお酒らしいです!! どうぞどうぞ、雑用はボクがやっておくのでふんすしてください!!」
獺祭とは山口県岩国市が世界に誇る、酒米の王様『山田錦』を使って造られる有名な日本酒。全国、全世界の酒飲みに愛されている。
しかし楠木さんは誠実な男。
お酒の失敗も幾度か繰り返しており、同じ轍を踏むのは4度まで。
割と踏んでも良い回数は多め、当たり判定は緩めな誠実さ。
「これはありがとうございます。帰ってから頂きますね」
「ややっ!! 楠木先輩!! もう17時です!! お仕事の時間は終わりました! ふんすの時では!?」
「…………………………ふんすの時ですね!! では、少しだけ味見を!!」
その後で酩酊した楠木さんから『女だらけの月刊探索員・水着もあるでよ』の刊行許可をゲットしたノア隊員であった。
ちゃんと雑用を2時間ほどお手伝いしてから、楠木さんの自宅に電話をして「奥様先輩!! 旦那様先輩が酔っぱらっているのでボクの穴で届けます! 穴ってなにと聞かれますとボクも分かりません! ふんすー!!」と帰宅までのサポートも務めた。
ならばきっと全部オッケーである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
ノアちゃんの姿は呉にあった。
「今日も来はったんやなぁ。ノアお嬢ちゃん。おばちゃんになんや出来ることあるやろか? おばちゃん、マッドサイエン玉ねぎティストは三女傑のお許しないとやれへんよ?」
ノア隊員ご用向きは玉ねぎ。
既にお伝えした通り、月刊探索員の季刊誌は7月に発行済み。
ならば予算が出ない。
でも、乙女だらけの誌面を作りたい。
なんだかもう字面だけで興奮するから。
それだけで一歩でも二歩でも進めるのがノアちゃん。
「ややっ! 瑠香にゃん先輩! こっちです! こっち!! ふんすー!!」
瑠香にゃんが瑠香にゃんウイングで飛んできた。
背中には誰かが乗っていた。
「……ふっ。……瑠香にゃんちゃんはいつ見てもハイカラじゃねぇ。……牡蠣、食べぇさん」
「ありがとうございます。よし恵マスター。ステータス『瑠香にゃん食あたりしない体で良かった』を獲得。生で食べます」
ノアちゃんが今回相棒に選んだのは、瑠香にゃん。
他の乙女は誰を選んでも面倒くせぇ。
特に恋愛乙女は避けたい。
するってぇと『恋愛ってクソだにゃー』のメンバーが選択肢の全てになり、クララパイセンを誘いに行ったらベッドで半裸になって寝ていたのでスマホを何度かパシャパシャやっていたところ、コンセントに挿さった瑠香にゃんを発見。
引っこ抜いた。
芽衣ちゃんは遠藤家に帰っていたのが幸いしたので、今回はセーフ。
今回は。
諸君。
この世界に多く貢献した者はエピローグ時空でもらえる尺が多くなりがちなのは既にご存じの事だろう。
ノアちゃんは狂言回しとしての貢献度だけでも蔵が建つ。3戸前は余裕で建つ。
「よし恵先輩! ペヒペヒエス先輩と一緒にご本を作りたいんです、ボク!! ちなみに呉の先輩たちにも誌面を飾ってもらいたいと思っています! 今からグラビア撮影したいです!! ふんすですか!?」
よし恵さんが「……ふっ」と笑ったあとで「……そりゃあ。……ふんすじゃあね」と短く答えた。
「えっ!? ふんすなんですぅ!? せやったらおばちゃん、全力ふんすしますぅ!!」
「……玉ねぎさん。……公民館放送しぃさん。……1時間後。……水着で砂浜に集合ってね」
「ふんすっすー!!」
ノア隊員の手際の良さに瑠香にゃんがプルプル震えていた。
「瑠香にゃんも兵装を捨てて競泳水着で撮影を済ませておきます。アプリケーション『安全マージン確保』を実行」
システムエラーは無視して生存戦略だけを優先した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
1時間後。
呉の鎮守f、失礼、砂浜。
「節子さん! 麦わら帽子に白いワンピースとか狙い過ぎじゃろうがね!!」
「それ言うなら久恵さんよ!! それカルバンクラインじゃろうがね!! あんたぁ!! 下着で撮影してもらう気かいね!! 旦那さんに言いつけるよ!!」
「……いけんねぇ。……あんたら。……こねぇな事で言い合いしてから」
ノアちゃんがスマホを構えて「ふんすですかー?」と確認する。
「いや、よし恵さんは貝殻ビキニじゃあね!! なんかいね、そりゃあ!!」
「年ぃ考えさんよ!! あんたぁ、あたしらの最長老じゃろうがね!!」
「……みつ子さんの方が半年ババアじゃからね。……あたしゃセーフよ」
とてもいい写真が撮れたという。
ここに月刊探索員・呉支所が発足した。
ノアちゃんのノアちゃんによるノアちゃんが興奮するためだけの季刊誌製作が始まる。
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