第1355話 【エピローグオブあっくん・その2】悲しい(苺)色やね
前回のルベルバック。
人道的なあれやこれをガン無視した自律起動兵器を作ったら、案の定暴走した。
その名はリコタンク・マークⅢという。
今回は莉子ちゃん、ガチのマジで本当に完全にとばっちりである。
莉子ちゃんの荒ぶってた頃の思考回路を多分だが、ミンスティラリアから技術的供与してもらったのだと思われる。
なにせ跡見瑠香にゃん最終バージョンにはチーム莉子の思考回路が全員分搭載されている。
この技術を転用すれば、在りし日の攻撃的なリコリコ脳を「これ戦車に乗せたら最強じゃないか!?」というやっちゃダメだけどやってみたくなるカリギュラ的な禁忌も可能に。
「瑠香にゃんはいわれなき風評被害を察知しました。ステータス『はいはい。どうせ兵器が悪い悪い』を獲得。もうおうち帰りたいです。コンセントが恋しいです」
現状の確認。
瑠香にゃんは『瑠香にゃんシールド』を展開しており、絶対防衛システム稼働中。
リコタンク・マークⅢは六駆くんから『
戦車がカタコトで「あれは……ろっくくん……?」とか言って心が芽生えたりはしなかった様子。
リコタンク・マークⅢに流用されたのはあくまでも莉子ちゃんの攻撃性であり、莉子ちゃんの脳ではないのでそこに意思はない。
諸君。
ルベルバックも長らく君主独裁制のもと偏りまくった政治体制が敷かれて来た異世界なのである。
我々の感覚でドン引きする事もうっかりやってしまう。
これはもう致し方ない。
「なんとも無常ですな。軍部の暴走がまだ続いているというのは……。あと、代理総督の私がまったく制御できていないということも無常ですな……」とか言って、キャンポム少佐も遠くを見つめるくらいにはドン引きしている。
だから許してとは言わないが、許してと言いたい気持ちはある。
分かってくれとは言えないが、分かって欲しい。
そんな恋心にも似た戦局でお送りする、あっくん回。
きっと酷い事が起きる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「うわぁ!! これまずいですよ! あっくんさん!! ルベルバックって空に防衛システム展開してるじゃないですか!! このまま僕たちに向けて主砲撃たれたらまずいですよ! だって避けるじゃないですか!! そうなったら防衛システムが壊れますもん!! うわぁ!! たーいへん!! 大変ですよ、あっくんさん!! どうします?」
あっくんは「てめぇが考えなしに撃つからだろうがよぉ」などと、無為な会話パートをこなすには疲れ過ぎている。
代わりに「ちっ」と舌打ちで応じて、結晶を大量に発現。
それをパズルのように組み替えてひし形に展開する。
「うわぁ!! あっくんさん、もしかして受け止める気ですか!? でもどうするんですか!? その受け止めた
あっくんはわずか2秒の間に「てめぇ、逆神ぃ。マジでぶち殺すぞぉ?」と口にしようかどうか、16回ほど考えたが驚異的な忍耐力で我慢した。
なにせここはルベルバック。
あっくん、過ちの集積場。
守らねば。
ただでさえ結構な勢いで政治中枢を担っていた者とか、軍部の重鎮とか、ついでに皇帝とかを殺したり傀儡にしたりしているのだ。
民間人の犠牲とか知ったこっちゃねぇんだよなぁと色々やった。
乳牛を守らなければ。
酪農家を守らなければ。
ルベルバックの人口と乳口はもう1だって減らしてなるものか。
それが阿久津浄汰の贖罪。
「逆神よぉ」
「なんですか?」
「てめぇ……。小坂に婚約指輪やるって言ってよぉ。その話、戦争でうやむやにしたままだろぃ。いいんだぜぇ? 俺ぁ性格が最悪だからよぉ。……小坂にその話してやってもよぉ!! くははははははっ!! なぁ! 逆神ぃ!!」
「あっくんさん!! ここは協力して頑張りましょうね!!」
やっぱり敵は隣にいる悪魔だった。
あっくんの推理はズバピタで当たる。
名探偵コナンと金田一少年の事件簿は外伝に至るまで全巻持ってるあっくんにとって、これは簡単なロジック。
馬を走らせるには鼻先にニンジン吊るすか、尻を鞭で叩くか。
否。
耳元で「おめぇの嫌いな音を垂れ流すぜぇ?」と脅す。
賢しい馬はそれだけで走る。
「グランドマスター。目標から高出力の
「あ。大丈夫、大丈夫。僕が対応するからさ。ねっ! あっくんさん!!」
「ちっ。てめぇは性格がどうこう言う前に人間性をもうちっと学びやがれぃ。あと、貸してるこち亀をとっとと返しやがれぃ」
実はあっくんと六駆くん、大きな勘違いというか、物忘れをしている。
瑠香にゃんは覚えているというか、データとして脳内にその情報がある。
リコタンク・マークⅢの主砲が放たれる瞬間に瑠香にゃんは告げた。
「グランドマスター。あっくんマスター。瑠香にゃんは一応、手遅れだと計算結果が出ていても警告します。敵目標、発射するのは『
リコタンク自体は莉子ちゃんの全面協力によって開発された、莉子ちゃんが四角くなった感じの超越兵器。
もちろんその発展形のマークⅢにも同様の主砲と副砲は搭載されており、放たれるのは『
覚えておいでだろうか。
かの苺色の悪夢がなにゆえどの戦局でも数々の武功と敵の涙を掻っ攫って来たかについて。
「あっくんさん。これ、すぐには防げませんよ」
「てめぇ、マジで考えなしに撃ちやがったんだなぁ」
『
無属性ゆえに防御が極めて難しい。
なにせ初期ロットの六駆くんが登校拒否キメるために布団で籠城していた頃、莉子ちゃんが「もぉ! 学校行くよ!!」と『
ピースのコピー戦士、ペヒペヒエスが「気の毒やなぁ。せや。おばちゃん、ちょっと盛ったろ!!」とオリジナルよりもちょっと盛られた
そんな凶悪な苺色の悪夢が今、特に準備していない最強の男に向けて放たれる。
するとどうなるか。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! 『
六駆くんが300人に増えた。
これはどういう作戦か。
あっくんには分かっていた。
六駆くんはあっくん宅へ頻繁に遊びに行くほど仲良し。
「野郎……。責任逃れのために幻でデコイ山ほど出しやがったぜぇ。俺から逃げるためによぉ!! っざけんなよ、てめぇ! 逆神ぃ!!」
「だって怒るじゃないですか!!」
リコタンク・マークⅢから主砲が発射された。
あっくんは頑張って結晶を集めた盾をその射線に置いた。
ゴッとかバキッとか、そういう劇的な音は残さず、ただシュッと素気無い感じで、熱したフライパンに水滴がちょっぴり落ちたみたいに、あっくんのまだ名前も付けてない極大盾スキルが消し飛んだ。
そしてルベルバックの防空システムに大穴が空いた。
「まぁ……。なんつーかよぉ。人的被害が出てねぇ。それが今、1番大事なんじゃねぇかぁ? あぁ? おぃ。返事しろぃ。瑠香にゃん。逆神ぃ」
哀しい色がルベルバックの空を染める。
次回。
苺色暴走兵器の見せる未来とは。
あと1話でここからどうやって纏めるのか。
ここはエピローグ時空です。
デュエルスタンバイ。
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