第1127話 【バルリテロリ皇宮からお送りします・その26】「陛下!!」「あと2分で仕上がるから!! あと2分だけ!! もう2分待って! これホント、マジのホント!!」 ~陛下の5分はだいたい1ヶ月~

 激震轟くバルリテロリ皇宮。

 もう城門まで迫られており、いよいよ皇宮回も今わの際か。


「できたで!! 六宇ちゃん!! ペチパンティー!!」

「いや、パンティーって言うな。すっごいおじさんみがあってやだ」


「仕方ないやん! ワシ、おじさんどころかおじいちゃんやで? はい、確認して!! ほら、クイント!!」

「なんでぇ!? あたしが穿くのにクイントが確認する意味ぃ!!」



「おい!! こいつぁすげぇ!! 上物だ!! じじい! ……いや、陛下。オレにも1つ同じものを創れ。……創ってください」


 クイントが喜三太陛下に生まれて初めて拝謁し、首を垂れた瞬間であった。



 どこかの異空間から声が聞こえて来る。

 「自分、思うんですけどね。見せパンって、見せパンですから!! と本人から言われなければもうそれ黒いパンツだろって。男子校時代の同級生も言ってましたけど。自分は私見が違うんですよね。見せパンって見ても良いパンツでしょう? だったら、もうそれって普通に生きてたら絶対に見せてもらえないパンツよりもいっそ、興奮できるんじゃないかなって。そう思うんです。乳、太もも、そして尻。自分はこの3つの良さをついに網羅した気がします」と、穢れた意志が垂れ流される。


 どなたか、魔王城で後方司令官代理を拝命したお姉さんに「そろそろ宿六が復活しそうですよ」とお伝え頂きたい。

 でぇじょうぶ。


 今、あの地にはゴリラがいる。

 合体してよく泣くようになったヤツが。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁ!! はぁ……はぁ……! ほら! クイント!! お前のヤツ!!」

「じじい……様……!! オレぁ、あんたについて行く!! よく考えたら、あんたが一声かけりゃ、女なんか抱き放題なんだろ? ちょっとブスでも良い!!」


 ジト目の女性陣の視線に気付いたクイントが何故か煌気オーラ爆発バーストした。

 貰いたてのペチパンツを握りしめて。


「違うんだ! オタマ! 六宇!! オレは経験がないから!! 初めてだと満足させてやれないだろう!? だから! まずはじじい様のお力を借りて!! ちょっと上手くなってから本番に挑みたい!! そう思うのは悪い事か!?」



「はい。クイント様。私は特に何とも思いません。お好きになさってください」

「うっわ……。あたし的には1番キツい……。それでいざ本番ってあると、下手くそなのになんかマウント取られるんでしょ? ……きっつぅ」


 クイントの煌気オーラが上がったり下がったりしている。



「陛下。よろしいでしょうか」

「テレホマン? なんかまた丸っこいフォルムになった?」


 テレホマンは煌気オーラを消費すると体が削れるわけではなく、ストレスで角が削れていく男。

 もうシャーペンの先っぽについている消しゴムくらい丸っこくなっており、シャーペンの先っぽについている消しゴムくらい脆くなっていた。


「1ヶ月ほどお使いあそばされた六宇様のスカートの中問題が解決いたしましてございますね?」

「えっ? 5分とちょっとやん?」


「1ヶ月です」

「えっ?」


 1ヶ月でした。


「先ほど、クイント様に余分なものを御創りあそばされた分また仕上がるのが遅れるとおっしゃいますか? チンクエ様は既に城門をお独りで守護しておられますが? 陛下ほどの御方がよもや、血を分けられた御味方が無為にその高貴な血を流す事を良しとされますか?」

「なんか見た目は丸くなったのに、トゲトゲしてない?」


「しておりません。ですが、恐怖を知りましてございます」


 人は命の危機に瀕する時、何かを見る。

 その上で帰還せしめること叶えば、なんか吹っ切れる。


 みつ子ばあちゃんの脅威に触れてなお、喜三太陛下を傍でお支えする忠臣。

 その名は総参謀長、テレホマン。


「仕上がるよ!? ちょっと待ってな!! あと、2分! いや5分! あ゛! 怖いね、お顔が!! じゃあ3分!! あ゛! 2分で!!」

「陛下。朝、お母さんに起こされているちょっとズボラな女子高生キャラでしたら、私もその問答に参加いたしましてございます。ですが、臣として申し上げます」


 テレホマンがちょっと物申す総参謀長に進化していた。



「2分です。それ以上はまかりなりません」

「……はい」



 ただし、陛下の体感時間とその他の時空の流れは違う。

 これはもう周知の事実。


 キングクリムゾンとかゴールドエクスペリエンスレクイエムとか、あの辺と同義である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ついに喜三太陛下が仕上がり始められた。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 巻き起こる突風。

 オタマと六宇が露骨に嫌な顔をする。


「うっわ。もうスカート捲れるとかのレベルじゃないんだけど。スカートの裾が降りてこない。ねー。オタマ? あたし、これ、ちゃんとなってる? 見せパン穿き損ねてはみパンしてない?」

「はい。六宇様。立派な見せパンです。クイント様をご覧ください」


 2人のジト目の先にはとても良い顔で親指を立てている、逆神クイント太郎がいた。

 弟者は今、そんな兄のために戦っている。


「いやー。きついっす」

「六宇様? クイント様の事など虫けら同然に扱われておられたのに、今はどうしてスカートの裾を押さえて内股になられるのですか?」


「えっ? はっ? いや、これ違うよ!? だって嫌じゃん!! それだけだから!! オタマのタイトスカートは良いよね! あんま捲れないじゃん!! それだけだから!!」

「はい。六宇様。好きの反対は無関心だと私の愛読しているラノベに多数、様々な作品に出て参ります。六宇様? アレに関心をお持ちになられておられませんか?」


 六宇様、顔を赤らめて煌気オーラ爆発バースト



「し、してないから!! はぁぁぁ!? なんだけど!! あー!! うっざ!!」

「おいおいおいおい!! 六宇!! オレ、戦争が終わったらちゃんと働くよ!! だから、新築の中古物件を買おうぜ!! やっぱ中古物件よな!! 新婚生活は!!」


 六宇の煌気オーラがすんっと下がって、クイントの煌気オーラが上昇した。



 六宇は莉子ちゃんと同じタイプの煌気オーラ爆発バーストをする乙女である事が判明。

 煌気オーラ爆発バーストにも種類がある事はあまり知られていない。


 多分、ここまでまったく知らしめていないからである。

 何を今さらと申されることなかれ。


 とてもよく分かる。

 でも説明してしまうのがこの世界。


 全身を煌気オーラで覆い静かに爆発させるタイプ。

 六駆くんやみつ子ばあちゃん、四郎じいちゃんなどの逆神家に多い。

 久坂さんや辻堂さん、サービスさんなどの猛者もこのスタイルを好む。

 無駄がないのが最大のメリットで、必要最小限の負荷で爆発バーストさせる事が可能。


 全身から煌気オーラを放出させるタイプ。

 南雲さんやナグモさん、その他の監察官。バニングさんもそう。

 特に煌気オーラ砲や具現化武器を用いた衝撃を飛ばすスキルを多用する使い手に多い。

 攻撃の際に煌気オーラを振り絞るため無意識下の守勢を爆発バーストで補填する、攻防一体の型。


 足元から煌気オーラが噴き上がって来るタイプ。

 いわゆるドラゴンボールの気の解放とも呼ばれる、見た目が盛り上がる型。

 莉子ちゃんや芽衣ちゃま、小鳩さんに仁香さん、屋払さん、水戸くん、川端さん。

 体術や身体強化をメインにする者がたどり着く。


 このタイプだけ注意しなければならない点は、足元から煌気オーラが噴き上がる性質上、ヒラヒラした装備も一緒にぶわーってなる。

 装備ならばインナーの出番だが、私服のスカートでやると衆目にアレがナニされる。


 莉子ちゃんはショートパンツ装備。

 虫の息だが、まだ安全。


 六宇は喜三太陛下記念高等学校の制服。

 しかも平成中期のミニスカ全盛期がモチーフ。


 おわかりいただけただろうか。



「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 六宇と組ませたらクイントがむちゃくちゃ強化される事が判明した。



「……やだ。ちょっとマジできつい」

「六宇様。では、私と共に行動されますか?」


「やだよ!? オタマが言ってたんじゃん!? 女子が複数でチーム組むと誰かがセクハラ要員にされるって!!」

「六宇様……!! 賢くなられて……!!」


「オタマが感情表現豊かになる時ってさ。あたしとかキサンタをバカにしてない?」

「六宇様……!!!!」


 着々と仕上がる、バルリテロリ皇宮に残った最後の戦士たち。

 陛下が短パンをどんどこ御創りあそばされていた時間も無駄ではなかったのだ。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「陛下。1分経ちました」


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁえ゛っ!?」

「あ。スカート捲れなくなった」


 陛下がちょっとだけ仕上げ作業をお止めになられた後で、テレホマンに言った。

 シニカルな微笑みを携えて。



「あと2分で仕上がる!! 任せろ!! テレホマン!! なっ!?」

「陛下。あと1分です。……50秒になりました」


 総参謀長もついに陛下への甘やかしが減って、ある意味1番の仕上がりを見せていた。



 そんなテレホマンは『ダイヤルアップ』の能力を発動中。

 マルチタスクもできる電脳戦士。

 チンクエとの意思疎通中である。


『テレホマン。こちら、城門。良い……』

「はっ。チンクエ様。すぐに思念を移動させます」


『いや。まだ良い……。この程度ならば1時間は止められる。最終的にはやられるだろうが、それもまた良い……。それよりも』

「はっ」


『兄者はラブコメしているか?』

「はっ? ……はっ。六宇様の♡ゲージが3つほど増えましてございま……!? くっ!!」


『どうした?』

「失礼しました。六宇様から蹴りが飛んでまいりまして。初めて拝見しましたが、相当な切れ味でございました」


 クイントが少しだけ呼吸を荒くしながら答えた。


『それは良い……。兄者は切るより切られる方が良い……。あと、キルされるのも良い……』

「チンクエ様。その息が荒くなっておられるのは、激闘によるものですか? それとも、興奮しておられるのですか?」


『良い……』

「私はやっぱりそちらへ思念を移動させます」


 テレホマンが抜け殻になった。


「ラッキー!! テレホマンが死体になっとる!! 休めるぅ!!」

「はい。陛下。オタマはこちらに控えております。お許しを得て」


 ガッと音がして赤い汁が飛び散って、喜三太陛下の仕上げ作業が再開された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る