異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1116話 【莉子ちゃん敵国独り旅・その3】「あ! コンビニがある!! 甘いもの飲みたい……」 ~太るのと発育は違う健康な18歳女子。うちのメインヒロイン。~
第1116話 【莉子ちゃん敵国独り旅・その3】「あ! コンビニがある!! 甘いもの飲みたい……」 ~太るのと発育は違う健康な18歳女子。うちのメインヒロイン。~
バルリテロリの大地を莉子ちゃんが駆ける。
『
現に六駆くんは『
「ふぃぃぃー!! かなり走ったよー!! ほら、おっきい道路に出たもん!! あ! あそこに建物が見える!! じゃあ、あれが皇宮だ! 小さいけど……」
バルリテロリの国道に出た莉子ちゃんは『
なにせ下位互換の『
繰り返しになるが、莉子ちゃんが発現していたのはその上位互角。
駆け抜ける速度は脅威の時速35キロ。
思ったよりもスピードが出ていなかった。
原動機付自転車かな。
それでも頑張って走った。
メロスだって「走れ!」って言われてるのに道中で何度も休憩したり、飯食ったり酒飲んだり寝過ごしたりして、セリヌンはズッ友なのに道中諦めようか迷ったし、対する莉子ちゃんは優等生。
ずっと走り続けていた。
そして建造物に到着する。
「わぁー!! バルリテロリの皇宮ってなんだろ。コンビニみたい!!」
コンビニに到着。
走り続けて約5分。
約3キロ進んだので、皇宮までは残り74キロ。
このペースだと絶対に最終決戦には間に合わないし、現世チームが勝てば最悪帰還の便に乗り遅れる可能性すらある。
そのため莉子ちゃんは積極的な策に打って出た。
「そだ! 甘いものを食べて元気出そう! あと、甘いものを飲んで元気出す! おー!! ごめんくださーい!!」
入店である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
既にバルリテロリの居住区の大半には避難指示が出ており、莉子ちゃんが訪れたコンビニも国道沿いに店を構える立地上、敵の侵攻ルートにあたる可能性が高く物資も現地調達される可能性がこれまた極めて高い。
ならば、略奪されるのは仕方がないとしても無辜の臣民がついでにぬっ殺されるのは絶対に避けなければならない。
意外と臣民思いでお馴染み喜三太陛下の勅命で、全コンビニエンスストアから店員が撤収していた。
「ふぇぇ……。人がいない……。食べ物も飲み物もあるのに!! でもでも! 勝手に持って行くのはダメっ!! うぐぐぐぐぐ……」
近代史を紐解いても戦争状態に突入したらば、敵国の商店から物資を頂戴するのはもはや常識的な行為とされる、哀しき現実。
物資の略奪のみならばやむを得ないとされ、女子供に手を出さなければ褒められるまであるのが本当に哀しい。
例えばとある国・エキゾチックジャパァーンの戦国時代などは大名家も常時戦争をしていたため、物資もなければ兵に与える恩賞も足りず、結果として戦場になった近くの村などでの略奪行為は日常茶飯事、下手すると隊を預かる将によって推奨されていた場合もあり、有史を紐解くと哀しい気持ちにばかりさせられる。
有史以来絶えず続いているものは戦争。
もうセックスの歴史を紐解いた方が後世の礎になるかもしれない。
ストップ。少子化。
「じゅるり……」
莉子ちゃんは優等生。
校則だって破った事はない。
深夜の誰もいないし車も来ない小さな道路でも信号が青になるまで律儀に待つタイプ。
スカート丈だって膝上ほんの少しを順守しているし、「高校生らしからぬ下着は禁ずる」とされている校則は一時期勝負下着シリーズでぶち壊しそうになったが、取っておいたとっておきの勝負下着がどういう訳か身につけられなかったのでそこもセーフ。
成長したのである。
胸囲が乳の膨らみだけじゃねぇという事は、あまり知られていない。
これからもあまり知られないままでいて欲しい。
女子の成長期は18歳時分には終わっている場合が多いが、そんなもの個人差。
二十歳過ぎても成長する乙女だっているのだ。
希望と頭髪はいかに薄くとも諦めたらそこで試合終了。
「じゅるり……」
失礼。
略奪行為の話である。
莉子ちゃんは優等生。
何度繰り返しても良い。
略奪なんてもってのほか。
飲み物コーナーでキンキンに冷えたピーチネクターが並んでいる。
ネクターは昭和の終わりから平成初期にかけてが売り上げのピークであり、果汁たっぷりの高級感と砂糖たっぷりの甘さで満足感を得られる飲み物。
しかし、清涼飲料水のトレンドが「甘いもの飲みてぇ」から「喉の渇きを潤してぇ」に変化した事から、消費はビックリするくらいの速度で落ち込んでいった。
が、令和の今でも幼児や小学生などには甘くて濃厚という理由で好まれている。
バルリテロリでは主力商品である。
「じゅるり……」
莉子ちゃんがずーっと葛藤を続けている。
奪うか、諦めるか。
奪うなら2本にするか、3本にするか。
「はっ!! だ、ダメだよ!! 六駆くんの国になるのに! わたしが無銭飲食とか、ダメダメ!! 絶対にダメ! バルリテロリって発展途上みたいだから、紙幣とかも違うだろうし。店員さんがいたら交渉できたのにぃ……。あれ!?」
莉子ちゃん、気付く。
レジを見ても店員さんはいなかったが、バルリテロリは令和と同期済み。
「自動レジだぁ!! ……ふぇぇ。でも、バルリテロリのお金がないよぉ」
繰り返すが、バルリテロリは令和と同期済み。
「あれ!? 電子決済できる!! わぁぁ! ペイペイ使えるよ!! ……ネクター!!」
莉子ちゃんが燃料をゲットした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふあぁぁぁ……。走った後ってジュースが胸にスッと入るよね……」
ネクター愛好家の諸君ならば分かるはずである。
あれは運動の直後に飲むものではない。
しばらく経って落ち着いてからカロリー摂取に用いるならば上策。
マラソンの給水ポイントにネクターが並んでいて気付かずにグイッと飲んだらば。
最悪、むせる。
「……わたし、もしかしてこのままじゃ間に合わないかも?」
まあ、アレがナニする事をいくら想定したとて、実際に起きなければ机上の空論。絵に描いたパンケーキ生クリームとアイスクリームトッピング。
莉子ちゃんがカロリーを摂取して賢くなったことを喜ぼう。
「って言うか、あれ!? クララ先輩の応援メッセージがない!!」
クイント宮がナニしたので、現在あっちの乗員はそれどころではないかと思われる。
ただ、カロリー莉子ちゃんモードは賢くなるため、「さみしい……」とはならず「何かあったのかも!? 急がなきゃだよ!!」と危機感が胸に去来した。
発育中の胸に。
「そうだ! わたしずっと考えてたんだよね! 六駆くんとずーっと一緒にいたから! 使ってみたい思い出スキルがあったんだぁ! 今って独りだし……。やってみようかな? 怒られないし!! 師匠の六駆くんはスキルの話になると怒るんだもん。そこもカッコいいけど! えへへへへへへへへへへへへへ!!」
胸の前で拳を作ってギュっとやるポーズは思春期男子アンケートによると「女子のドキドキする仕草」ランキング第3位に輝く、可愛い悩殺ポーズ。
莉子ちゃんも可愛くキメて、言った。
「構築スキル!! やってみよー!! おー!!」
悩殺というのは、てめぇの脳を殺す事ではない。
よく見ると漢字が違う。
莉子ちゃんにはよく見て欲しい。
「材料は……。ごめんなさい! お店の人!! ちゃんと後で元に戻しますから! このコンビニを使います!!」
略奪よりもっと酷い事になりそうな気がするのは何故か。
でぇじょうぶだ。災害補償保険がキク。
「今は
そんな名前ではあません。
構築スキルには2種類ある。
雷門さんも雷門クソさんも使っていた。
もう1つは何かを別の物に創りかえるタイプ。
廃材を集めてアタック・オン・リコを創った六駆くんや、ちょっとした鉄の塊があれば後は自前の
莉子ちゃんがチャレンジするのは後者。
コンビニエンスストアを使って、暴走リコ車を創り出すのだ。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! たぁぁぁ! ……できた!!」
確かにナニかは産み出されていた。
コンビニの店舗ほどの質量を使って、創られたのはバイクのようなもの。
「だってわたし免許もってないもん! 自転車なら平気!! ペダル漕ぐヤツだし!!」
爆誕する。リコバイク。
早速跨ると、莉子ちゃんがペダルを踏み込んだ。
ペダル1回転でだいたい1キロ進むという凄まじい機動兵器がバルリテロリの地に生を受ける。
「えへへへへへへ! これならすぐに着くよー! よいしょ! よいしょっと!!」
5回転ほどペダルがグルグルしたところで、リコバイクが停止する。
「ふぇ。これ、結局わたしが
コンビニが犠牲になったので、責任もってリコバイクで皇宮へ向かってください。
目的地まで残り69リコキロメートル。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほっほっほ。ワシとて、まだお役に立てますぞい」
「お父さん、無理せんことよ! 構築スキルは疲れるじゃろうがね!!」
別の場所では、ガチの構築スキル使いが活動を再開していた。
莉子ちゃんがやったのは構築というよりも、圧縮である。
コンビニ脇に従業員の自転車が置いたままになっている事に気付けていれば、それをやる必要すらなかった。
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