第1109話 【クイント宮がナニします・その2】????「時間を進めたら良いんじゃないでしょうか! ふんすっ!」 ????「それだ!!」 ~頭おかしい発想力の師弟が組むとこうなる~

 クイント宮に対して『時間超越陣オクロック』を『二重ダブル』発現した結果、ちょっと効果が出過ぎて遅効性の毒みたいな感じで問題が表面化。

 時間を戻しすぎたせいで元のバルリテロリ皇宮に戻ろうとするクイント宮だが、他のミニ皇宮として飛び立ったパーツが既にこの世に存在しないので、なんやかんやで元に戻れず矛盾が生じて結果的になんか爆発するという小難しいパラドックスが発生。



 詳しい事はアインシュタインパイセン辺りを恐山のイタコさんに口寄せしてもらって、説明を受けて頂きたい。

 1口寄せがだいたい5000円という良心価格。


 1口寄せという単位は初めて目にした。



 こちらは責任比率を6割くらい保持している、六駆くん。

 やっぱり名前に引かれるのだろうか。

 現在、物理的にクイント宮を支えているが、落下を食い止めているだけでいずれ爆発するため時間稼ぎという言葉がズバピタでハマる、急場しのぎ中。


「瑠香にゃん! ハイパー人工知能で何か良い事思い付かない!? 思い付いてよ!! デキるデキる! だって僕の思考パターン入ってるんだもん!!」

「グランドマスターより無茶振りを検知しました。小声モード。だったらグランドマスターが先にその思考パターンとやらで思い付くのでは。……大声モード。ぽこますたぁがきっとステキなアイデアを持っているとご報告します。アイデアとアイディアはどっちが聞き馴染みが良いのか気になって人工知能が回転しません。ぽこ。お願いします」



「さすがだなぁ! クララ先輩って! 僕と莉子の探索員の師匠みたいなものですもんね! 僕たちが家庭を持っても仲良くしてくださいね!! うふふふふ!!」

「…………。あ゛。うっかり、にゃーって鳴くの忘れるくらいの衝撃がガツンと来たぞなー。瑠香にゃん、降ろしてにゃー。今、あたしは空も飛べるはずだぞなー。六駆くんと莉子ちゃんと出会った奇跡ハードラックがこのおっぱいに溢れとるもんにゃー」


 猫たちにはちょっと荷が重い問題である。



 とはいえ、目と鼻の先にはバルリテロリ皇宮が見える現状。

 こっちから見えるならあっちからも見える訳で、これをオシャンティーに言い換えると深淵を覗くとき、深淵もこっち見てはぁはぁしとるんやで、となる。

 ニーチェ先生が言ってた。

 氏の書籍「善悪の彼岸」の第146節「むっちゃええ事思い付いた」に収録されているフレーズとしてあまりにも有名。


 日本ではミイラ取りがミイラにmeらになるとか言われたり言われなかったりして、ミイラって日本語やったんかと気付かせてくれるステキなことわざ。

 元はポルトガル語で、起源はエジプトの死体にぶっかけていた香油のムミアという、じゃあそれエジプト由来で良いんじゃないかと一旦思わされたところでつづりはmirraなのでじゃあポルトガル語だねとなり、英語圏ではマミーだよと知ったらば「じゃあ英語圏では母ちゃんの事をマミーって呼ぶの、アレはなんなん?」と思考がどんどん発展していく脳トレもできる、ニーチェ先生のすごさがよく分かる事例。



「あ。まずい。これ、僕が支えてるとかのレベルじゃない感じだ! どうしよう! 地上に叩き落とそうかな!? 南雲さーん!! どうしたらいいですか! 指示ください、指示!! 僕、子供なのでちょっと判断できません! 南雲さーん!!」


 関係ない話をしているうちに事態が悪化するのがこの世界の常。

 クイント宮がそろそろ小難しいパラドックスで爆発するらしかった。



 呼ばれた南雲さんも悲壮な面持ちながら、小鳩さんに肩を借りて思案する。

 ついでに肩を貸してくれているお姉さんに意見も借りようと試みた。


「塚地くん」

「お気になさらないでくださいまし。南雲さんはわたくしの中で殿方である前に上官ですし、上官である前におじさんですので。濃厚接触しても浮気にはなりませんわ! あっくんさんも南雲さんに匂いを嗅がれたくらい笑って許してくださいますわ!!」


「……ダメだった!! 塚地くんが1番頼りになにりそうなのに! ライアンさんは現実だけ突き付けて来るし! バニングさんは遠くを眺めてるし!! ノアくんは! ……何してるのかな?」

「ふんすです! ちょっと穴通信してます! ラッキー先輩! ボクです!! ふんすすすでふんすなんです! なるほどです! ボク、なるほどですねーって言われると時々イラっとするけど、自分で知らないうちに使ってる事があるの不思議ですよね! ありがとうございました! ふんすっ!!」


 ノアちゃんが何かしらを通信で、オーディションを勝ち抜いてニィィィしているサービスさんから聞き取り完了したらしい。

 続けてそのゲットした情報を上官、を飛び越えて、師匠先輩に穴通信。


「逆神先輩! ラッキー先輩に聞いてみたんですけど、これは成功したらボクの提案って事にしてもらえますか? 失敗したらラッキー先輩のご意見です!! ふんすっ!!」


 リスクマネジメントも完璧なノアちゃんが六駆くんに告げた。


「これはとても興奮する事なのですが! ふん。時間を巻き戻したのならば、時間を進めればいいだろう。高みに立つノアちゃんのさらに高みに立つ逆神。ヤツならば造作もないはずだ。チュッチュチュッチュチュッチュ。って言っておられました!!」


「……あ。私ね、めまいがする。ノアくん? なんでそれを私に相談なしで逆神くんに伝えちゃうの?」


「ややっ! 南雲先生!! 今は急ぎです! そして南雲先生にこの情報を伝えても、南雲先生がデキるのはチャオる事であって、時間操作じゃありません! ふんすー!!」

「ノアくんさ。分析スキルとかじゃなくて、君。悪魔的な脳を持ってるよね? それ、逆神くんに貰ったの? それとも天然もの? なんで君、去年の期末テストで赤点取りまくったの?」


 それはノアちゃんがブルマでテストを受けた結果、椅子に太ももがダイレクト接地して体温が奪われたためです。

 「おトイレ我慢してたのでそれどころじゃなかったです!」と供述しております。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 落ちて爆発、もしくは落ちながら爆発するのが確定しているクイント宮の真下では。


「その手があったか!! ノア、すごいなー!! 発想力、完全に僕を超えたよね! いや、そもそも地力はないのに自力で変なスキルばっかり作るから、最初から超えてた気がするけど! そうかー! 時間進めるんだ! 確かに、やろうと思った事がないし、それやって何か得するのかなってまだ思ってるから、僕には一生かかっても到達できなかったよ!!」


 猫たちが応じる。


「うにゃー。敵さんに使ったら、なんか歳を一気に取らせてミイラにできるんじゃないかにゃー?」

「ぽこ。早速ミイラの件を使わなくても良いのです。その恐ろしい発想とドヤおっぱいを引っ込めてください」



「はははっ! クララ先輩も冗談が上手いんだから! そんな面倒な構成術式のスキル発現して、やる事は敵を始末するんでしょ? だったら殴れば済むじゃないですか!」

「にゃるほどにゃー! これは一本取られたぞなー!! にゃっはっはー!!」


 瑠香にゃんがステータス「なんやこの危険組織」を獲得しました。



 時間を進める。

 既にやっているヤツらが結構いるスキルである。


 デトモルト人が年齢を加速させて、老いたら若返らせてを繰り返してピースのやべぇスキル使いを量産していた事を諸君はきっとまだ覚えてくれているはず。

 芽衣ちゃまの右腕に就任したサービスさんも、クイント宮からバルリテロリ皇宮を眺めているライアンさんも、南極海で釣糸垂らして「幽星! おめぇさん色々歌知ってんだから一曲演ってくれよ!」と言っている辻堂さんも、時間の理をシカトして年取ったり若返ったりしている。


 クイント宮は無機物である事を踏まえるとハードルはずっと下がる。

 やったのは玉ねぎだが、玉ねぎにできて六駆くんにできない事があるかと考えてみると、戦闘スキルに関してはまずなさそう。


「よし! じゃあさっさとやろう! 瑠香にゃん! どれくらい時間進めたら良いか計算してくれる?」

「はい。絶対に言われると思っていたので、演算を続けていました。ぽこ」

「うにゃー」



「端的モード。ナチュラルにおっぱい揉むな。瑠香にゃんのせっかく溜まった煌気オーラが吸い取られるので本当にヤメろ。このポコ野郎」

「にゃはー!! だって水着の隙間があったら、手をにゅっとやりたくなるのが人情だぞなー!!」


 瑠香にゃんがステータス「瑠香にゃんはメカにゃんで兵器にゃんなので人情なんか知らん」を獲得しました。



 時間がない上に爆発したら大半の乗員が死んでしまう緊急事態。

 瑠香にゃんサーチも冴えを見せる。


「グランドマスター。瑠香にゃんの演算ですと、11分20秒ほど時間を進めるべきという結果が92%です。なお、15分以上進めてしまうと、先ほどバニング様とぽこのおっぱい揉み揉み砲で殺した敵が生き返ります。絶対に厳重にくれぐれもご注意ください」

「えっ!? そんな微細な調整求められるの!? 僕、初めて使うスキルなのに!? 無理じゃない!?」


「ぽこ。瑠香にゃん、頑張って警告しました。褒めて」

「偉いぞなー。あたしなら知らんぷりして黙っとるもんにゃー。まあにゃー。多分ミスると思うんだよにゃー」


 メカ猫が「瑠香にゃんもそう思います」と同意して、どら猫との仲をまたひとつ深めた。

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