第1044話 【魔王城からみみみみ・その10】芽衣ちゃま殿下、城に戻る ~「みっ。呉からお電話来たです!」~

 こちらはミンスティラリア魔王城。

 芽衣ちゃまが玉座から降りてゴザの上で女の子座りしているので家臣たちとの距離が一層縮まった、ミンスティラリア芽衣ちゃま皇国に名前が変わりそうな異世界からお送りします。


「みみっ。思ったよりも静かです。芽衣の予想ではすぐに連れ去られるか、最低でもチーム莉子のみんなが何かやらかした旨ノアさんから叩き込まれると思ってたです。でも静かです。みーみーみー。……逆に怖いです。み゛っ」


 芽衣ちゃまはクララパイセンに次ぐチーム莉子の古株。

 嵐の前の静けさは知り尽くしており、嵐が来たと思ったら荒らしも来て、もう1つ嵐が来るくらいの波状攻撃が起こり得る、しかも時と場所は選ばせてもらえない事も熟知している、とても賢いみみみと鳴くい可愛い生き物。


 16歳です。



 この世界に放り込まれた時は14歳でした。



 そんな芽衣ちゃまのスマホが鳴る。


「み゛っ」


 嫌な予感を表明した直後に着信アリ。

 もうフラグである事は芽衣ちゃんではなくとも察する事のできるシチュエーション。


 だが、彼女を守るために何人もの戦士が立ち上がる。


「ふん。クロイツェル」

「良かろう。妾が出よう」


「少しばかり高みに立ったか。俺が時間を停める」

「不要な情報だった場合は時間を巻き戻せ。そのくらいできぬようでいかがするか。サービス」


「ふん。……悪くない。チュッチュチュッチュチュッチュ」


 ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。


 電話が鳴っただけなのに、ボス格が2人臨戦態勢に。

 もう誰もミンスティラリアには攻め込んで来てくれない気がして少し寂しい。


「こちらはアリナ・クロイツェル。……しまった。芽衣。すまぬ。妾はまた名を……。まだ間に合うだろうか。愚かな女を許してくれ、芽衣……」

「みっ! 間に合うです!!」


「こちらはマダム・マスクド・タイガーレディ・グレートだ」


 適当に応対するので毎回微妙にタイガーさん夫人のニュアンスが変わるアリナさん。

 すっかりチーム莉子のノリに順応されたようでこれにはほっこり。


 戦争中です。


『あ、えっ!? すまんへん! 間違えました!!』

「待て。そなたは誰か。妾は芽衣の名代として電話に出ておる。知っておるぞ。アポ電というヤツであろう? 芽衣の情報を抜き取ってアレしてナニする気であろう?」


『なんやこの人! 話が通じへん!!』

「ほう。今度は戸惑うふりか? サービス。これは敵だ」


 ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。



 サービスさんはニィィをしていないでかつて同階級だった仲間を助けてあげてください。



 腋から伸びる管も捕まえている捕虜が1人に減ったのでより自在に動くようになった、触手使いラッキー・サービス氏。

 残念ながら近くにいる乙女が芽衣ちゃんだけなので、この触手をセンシティブな使い方をした瞬間に世界が消えます。


「ふん。俺だ」

『うせやろ!! ラッキーちゃんおるんやったら、なんでなん!? なんでワンクッション怖いお姉さん挟んでんねん!! 思い出したわ!! 今のお姉ちゃんアレやろ!! アトミルカのヤバいお姉ちゃんやろ! おばちゃん伝令させられとんるやから!! これ以上のストレス与えへんでくれるぅ!?』


 独立国家・呉所属、名誉玉ねぎペヒペヒエスからの連絡であった。


『あ゛!! ち、違うんですぅ!! よし恵様ぁ!? 言うのはデトモルトで言うとむっちゃ気持ちええたすけてくださいって意味なんですぅ!! そんな滅相もあらしまへん!! 押し付けられとるなんて思うとりません、ほんまですぅ!! あー! ドモホルンリンクルがそこに落ちてましたぁ!! こちらどうぞ……ちゃうんですぅ! 落ちとった物をよし恵様に差し出したワケちゃうんですぅ!!』


 なんか大変そうであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 サービスさんは国際探索員協会の理事を何十年も務めて来た男。

 練乳チュッチュおじさんになってからの方が長いような気がしている諸君には訂正を求めたい。


 チュッチュし始めたのは数年前です。


「用件を言え。ペヒペヒエス」


 国協時代には中間管理職も歴任しており、ピースでは名目上の首領として君臨しているサービスさんは本気を出すと聞き取りや調整が上手い。

 「では! なにゆえピース時代にそれをやられなかったか!! サービス殿!!」とライアン・ゲイブラム氏の怒りが聞こえる。


『ラッキーちゃんとなら話やすうてええわー。助かるぅー。あんな? 呉にでっかいガンダム転移して来てん。三女傑の皆様が今、検分中なんやけど。恐らく確実にって仰ってはるから、これもう確実の方で行くしかないやんな? 六駆の坊ちゃんがバルリテロリでガチ転移スキル使いはったみたいやねん。結構焦ってらしたみたいでな? その過程でお父さんが死んでんねん』

「……逆神の父親の話はするな。チュッチュチュッチュチュッチュ」


 ラッキーちゃんの苦い思い出に抵触した。


『六駆の坊ちゃんが着いて早々にガチスキル使うって結構ヤバない? っていうお話されとんねや。三女傑さんたち。ほんでな? なんか密入国者しばいたらその子バルリテロリの子らしいねん』

「ふん……。チュッチュ、チュッチュチュッチュチュッチュ、チュッ」


『ちゃんと聞いとるんかいな? 練乳の吸い方に緩急つけ始めとるのが不安や。ほんで、本題なんやけど。可能やったら船作ってバルリテロリに行きたいわー言うてはるねん。よし恵様と節子様と久恵様が』


 全員だった。


『ほんでご報告せぇ言われたんやけど、日本本部に繋がへんやんか。せやったら後方司令官の芽衣のお嬢さんに言うとったらええんかな思うて!!』

「み゛っ」


 ちゃんと聞き耳を立てていた芽衣ちゃま。

 チーム莉子の悲報とか、バルリテロリの訃報とかは想定していたが、「み゛。これは芽衣の訃報です。みぃ……」と久しぶりにガチで嫌な報告を受ける。


 ダズモンガーくんが作ってくれたおしるこを飲んでいた手が止まり、数滴ほど太ももにこぼれた。


「芽衣!! 太ももにおしるこが!! 誰か!! 手当を!! くっ!! 妾は物を消す事しかできぬ自分の無力さが憎い……!!」

「み、みみみっ! 平気です! 芽衣は子供なので猫舌です! 冷まして飲んでたからちょっぴりベタベタするだけです! みみみっ!!」


 サービスさんがニィィをヤメて、真剣な表情になった。

 続けて、かつての盟友ペヒペヒエスへと告げる。


「ペヒペヒエス」

『なんやろ?』


「俺はこの通話を聞いた」

『そらそうやろ。今こないして話しとるやんけ』


「そして俺はこの通話を誰にも伝えない」

『なんでやねん!! それやったらおばちゃんがオニオンスライスされるやんけ!!』



「ふん。練乳をかければオニオンスライスもイケるかもしれん。悪くない」


 ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。



 サービスさん、泣いて馬謖を斬る。

 失礼。涙を流して玉ねぎを切る。


 一瞬でお料理の工程みたいになったのでこれはセーフか。


「みっ! サービスさん!!」

「ふん。芽衣ちゃま。俺は元から高みに立つ者。情報の共有などせん。喩え相手が芽衣ちゃまでもな。だが、情報のお漏らしはする。それでも情報は俺で止める」


「みみっ! ダメです! 芽衣は責任の取れないダメな子になっちゃうです!! サービスさんも危険が危ないです!! みみみみっ!!」

「ふん。芽衣ちゃま。子供が責任を取る必要はない。それは組織構造として実に歪だ。俺の掲げたピース構想では許されん。チュッチュチュッチュチュッチュ」



 かつてないほどのニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィをキメたサービスさんであった。



 なお、ラッキー・サービス氏の身柄に関する責任者は逆神六駆および逆神みつ子。

 両名の監督責任者は南雲修一監察官。


 サービスさんの男気で南雲さんがまたしても被害を受ける。

 が、もう充分すぎるほどの被害を受けている現状、ちょっとくらい致命傷が増えたところでこれは誤差と言える気もしてきた。


「おーっほほほほほ!! 大層な忠義者ですね!! 貴方からは皇国の雄の趣を感じます!! 共に芽衣殿下を盛り立てて参りましょう!! さあ皆さん! サービス氏を称えますよぉ!! わたくしに続くのです! サービス! サービス!! サービス!!」



「みっ! ヤメてです!!」

「はっ! ではヤメます! 皆さん、これ以上のコール&レスポンスをしたら殺しますよ!!」


 バルリテロリ捕虜組の中でサービスさんの株価が急騰した。



 温めのおしるこをみみみみと啜って落ち着いた芽衣ちゃま。

 シミリート技師がやって来た。


「くくっ。これはまた面白い事になれりそうなのだよ。英芽衣殿。よろしいかね」

「みっ。よろしくないです。芽衣を英雄に組み込まないで欲しいです。みっ」


「これは失礼。少しばかりミンスティラリアを留守にしても良いかね? ペヒペヒエス殿とはサイボーグ0……失敬。瑠香にゃんの設計で技術提携をした仲。私もお役に立てそうなのでね。みつコップBBAを失った悲しみは新しい知的好奇心で埋めるのだよ」

「みー。シミリートさんはファニちゃんさんの部下さんだから、芽衣は良いとも悪いとも言えないです」


「ふぁ!? 妾が決めるのじゃ!? め、芽衣はシミリートに好きなようにさせたら怒るのじゃ? 妾は芽衣に怒られるのは嫌なのじゃ……」


 涙目になるファニちゃん。

 ちなみに120歳です。


「み゛っ!! ……芽衣、子供だからよく分からないです!! ちょっとお手洗いに行って来るです!! 自分のお部屋に行くので、多分何も聞こえないし分かんないです!! みー!!」


 合法ロリババアの涙が芽衣ちゃんには薬効あり。


 何やら最終決戦に向けて、暗躍する第三勢力が見え始めた。

 実質的には芽衣ちゃま党なのだが、その名前を出すと芽衣ちゃんに不利益が発生するので名称は今後考えられるかと思われた。


 南雲さんが日本本部の単独トップになったので、こちらの案件も南雲監察官宛に纏めておきましょう。


 そして降下中の孫六ランドはいかがか。

 現場の南雲さん。


 中継お願いします。

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