第1034話 【無理やりにでもやる日常回・その12】玉ねぎの呉通信 ~いやほんま! 1回こっきりやって話とちゃうかったんですぅ!? もうしんどいんですわ、ほんまに!! あかん? あかんか……。~

 瀬戸内海の限りなくど真ん中。

 温和な気候と温和な国民、自然環境に恵まれ公共施設、医療設備の水準も隣国の日本と比較してもかなり充実。


 呉自動車道と言う名の独自の交通網を開通させたことにより隣国とのアクセスも飛躍的に向上し、「今最も移民したい独立国家ランキング」では燦然と首位の座に輝く、そんな独立国家・呉。


 老人会と言う名の組織が国政の90割を担っており、余剰分の80割は他国の政にも関わっているとかいないとか。

 そんな老人会の序列第2位が帰還した。


「……ふっ。……なかなかええ運動になったねぇ。……観光さつりくに行った子らは煌気オーラの回復してもらいさんよ。……家に帰って万全の状態に回復するまでが殺戮りょこうじゃけぇね。……ひよっこはすぐにそれを疎かにするからいけん」


 よし恵さん、凱旋。

 彼女はすぐに気付く。


「……大吾ちゃんがおらんね? ……あの子、本部で見かけたけどねぇ。……まだ帰っちょらんのかね。……昔から遊びに出たらなかなか戻らん子じゃったからねぇ」


 逆神大吾は生死不明。

 逆神六駆の究極スキルによってガチビンタされたのだが、それを「遊びに行った」と言ってのけるのがよし恵さん。


 呉ではちょっとしたエンターテインメントである。


「…………ふっ。……なんね。……ちぃと小賢しいネズミがおるねぇ?」


 代わりに何かを捕捉したご様子。

 孫六ランドから大量のメカサターンを発進させ「ばばあどもを駆逐するんだよ!!」と指示を出していた男がいる。


 彼は六駆くんに赦された。

 が、不敬を働いた相手は最強の男だけにあらず。

 最強のばあちゃんズにも充分すぎるほどの不敬をキメている事を忘れてはいけない。


 少なくともよし恵さんは忘れていなかった。


「……節子さん」

『なんかいね! よし恵さん!! あんたぁ! ちぃとスタンドプレーが過ぎるよぉ!! まーたあたしをこき使う気じゃろ!! 嫌やからね!!』


「……ふっ。……はぶてなさんなや。……あたしが捕まえて来よういね。……節子さん。……そっちに玉ねぎさんはおるかいね?」


 とは拗ねる、いじけるといった意味で使われる独立国家周辺の言語です。


『玉ねぎさんならこっちよ! なんかまた白くなったねぇ! 羨ましいね!!』


「……そねぇかね。……呉のPRさせぇさん」

『あれはよし恵さんが勝手に本部に行ったからなくなった話なんじゃないんかいね?』



「……ふっ。……評判が良かったらしいけぇね。……これを機に町おこししよういね。……みつ子さんが帰って来たらたまげさせるのも悪くなかろういね。……ふふっ」


 玉ねぎさん。呼ばれてますよ。



 公民館防衛システムの当番が節子さん。

 呉三女傑のよし恵さんと節子さんが2人して「おい。玉ねぎ」と呼ぶ。


 久恵さんはみつ子ばあちゃんに猫動画を送るためにパウロくんとサンタナさんとポッサムを連れて海沿いをお散歩中なので欠席。

 2人ならばギリギリ致命傷で済む。


 3回くらい死んだあとのコンティニューで致命傷。


「へ、へぇ! なんでっしゃろ!? ドモホルンリンクルでしたら、もう! ええ、ええ! とっくに複製完了してますさかい! お好きなだけ持って帰ってもろて!! ね! 皆さん美人ばっかりなのに、これ以上美人になられたらおばちゃん敵いませんわ! いやー! ほんま!! 右見ても左見てもべっぴんさんばっかりで!! ここが天国なんやなって!」


 節子さんがドモホルンリンクルを受け取る。

 このドモホルンリンクルは呉の独自規格そして独自の企画で作られたドモホルンリンクルなので、ドモホルンリンクルとは関係ありません。


 カタストロフ・ドモホルンリンクルです。


「玉ねぎさん! 町おこしお願いしたじゃろう? さっき!」

「へえ! ほんまに死ぬか思いましたわ! いやもう、死ぬ気になれば玉ねぎでもデキるんやって教えてもろうて! それだけで価値があるっておばちゃん学びましたから! ほんま、節子様は太っ腹やわぁ!!」


「あれね、完成したんじゃったね?」

「へえ! もう急ピッチで仕上げましたさかい!!」


「じっくり作り直してくれるかいね?」

「……何を言うてはるんか意味が全然分かれへん」



「玉ねぎさんが死にそうになって呉の町おこしするのがねぇ! なんかヤングな層に刺さるんてぇね! ちぃと頑張ってくれんかねぇ? 島谷ひとみさんのCD貸してあげるけぇ!」

「いやぁ。おばちゃんちょっと無理かもしれへ……節子様ぁ!? 煌気オーラ爆発バーストヤメてもろても!? 外皮が溶けてますぅ!! あ! やりますぅ! やらせてくださぁい! 島谷ひとみさん大好きですよって! ねー!! むっちゃええ歌ようけ歌うてはりますもんね!!」


 節子さんは穏健派です。

 そして島谷ひとみさんは呉出身の歌手です。



 玉ねぎの呉PR企画が再始動する。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 頭を深々と下げる玉ねぎから動画は始まる。


「えー。ペヒペヒエスですぅ。ほんまにあのぉ、悪いことした思うて反省しとるんですぅ」


「玉ねぎさん!! 尺があるんやから!!」

「へえ! すみません! 節子様!! まずはこちらから紹介させてもらいますよって!!」


 まず映し出されたのは独立国家・呉が誇る海軍基地。

 呉は地形が天然の港として古くから存在しており「なんも手ぇ付けへんでも軍港として運用できるんですぅ! こんなことありますぅ!? ありまへん! 呉だけですわ!!」と練り物戦艦シリーズ造ってた玉ねぎも太鼓判を押す。


 古くは村上水軍が根城にしており、大戦下では帝国海軍の拠点として世界最大の戦艦・大和などを建造した事は余りにも有名。

 現在でも軍港としての機能は果たされており、有事の際にはばあちゃんズによって構築スキルで建造された軍艦・牡蠣と軍艦・穴子が火を噴く準備を常に完了させている。


 鎮守府として運用されていた時代の名残で軍用水道施設の本庄ダムや宮原浄水場なども現在は呉のインフラ設備として引き継がれており、ばあちゃんズの水スキルの修練場として、また日々水豪が飛び交う活気あるスポットとして観光客に親しまれている。

 煌気オーラの扱いに不安のある者は「免責証書死ぬかもしれん」を事前に申請する必要があるので、お越しになられる際は最低限の防壁スキル習得が強く推奨される。


「こちら、著名人の皆様ですさかい! ほんま! 目に焼き付けてもろて!」


 まず筆頭に上がるのは逆神みつ子。

 呉をスキル使いの独立国家に仕上げた元帥であり、向こう100年は統治し続けるであろう老人会会長。


 呉三女傑は節子さんが「恥ずかしいからやめぇさんや! 玉ねぎさん! 頭吹っ飛ばすよ!!」と照れ隠しで弩級砲を近距離で構えたので「ヤメますぅ!!」と割愛。

 その他、呉のお嬢様たちの中にはオリンピックに出場経験のある者、政治家として隣国日本の政に携わっている者、某国に潜入してエンターテインメントを発掘して来る者などバラエティに富んだメンバーがいるものの、その名前は伏せられている。


「皆さまが恥ずかしがり屋さんですよって! 奥ゆかしいわぁ、ほんまぁ!!」


 ヤの付く自由業も多く輩出している。



 あと、絶対に失敗しない外科医も呉出身。



「それから呉を舞台にした物語もぎょうさんありますぅ! どれも名作ですよって! 坊ちゃんたちも見てってくれへんやろか!! 命かかっとるんや! 何でもするから見てっておくんなましぃ!!」


 ばあちゃんたちが魂と誇りと矜持を奪い合う「仁義と年金なき戦い」シリーズは語るまでもないだろう。

 また、襲い来る争いの悲劇にスキル使いのばあちゃんたちが立ち向かい数多の困難に挑む「ばばあたちの大和」は未だにファンの多い名作として語り継がれている。


「アニメもありますぅ! インドア派のお坊ちゃんにもお勧めですさかい!!」


 女子高生とばばあたちが朧げな夢を追いかける青春群像劇「ばばゆら ~人生百年のひととせ~」は優しい気持ちになれる傑作として国民の周知度150%を超えるが、3分の1ほど呉が舞台になっている事はあまり知られていない。


「スポーツも盛んなんですぅ! 見てってもらえたらおばちゃんほんま嬉しいなって!! 玉ねぎ料理売ってますぅ!!」


 呉は野球大国。

 呉野球リーグは1年で600試合が行われる過酷な日程と、1試合に3度までスキルが使用可能な事からアグレッシブな戦略性の問われる「野球じゃない野球」として知る人ぞ知る狂スポーツ。

 選手資格は乳飲み子から屍までと幅広く、多くの者に門戸を開いているので腕に覚えのある者はプロテストを受けてみるのもまた一興。


「ええねぇ! 玉ねぎさん! こりゃあ大変なスペクタクルがデキちょるねぇ!」

「ほんまですぅ!? あー! こんなに嬉しいことないですわ!」


 なんかPR動画が完成した。

 玉ねぎが30分でやってくれました。


「……ふっ。……玉ねぎさん。……相変わらずメカが上手じゃね。……見せてもろうたよ」

「よし恵様ぁ! ありがたいお言葉、身に染みますぅ!!」


「……玉ねぎさん」

「へえ!」



「……こりゃあ使えんね。……怒られる気がするからね」

「えっ。あ! じゃあヤメますぅ!!」


 独立国家・呉は大変良いところです。

 お越しになる際は時空をお間違えないようにお願いいたします。



 ペヒペヒエスがよし恵さんの引きずっているものに気付いたが、目を逸らした。


「……これかね?」

「あ゛。……聞いてもええんですやろか?」


「……ふっ。……あんたぁ、もう立派な呉の玉ねぎなんじゃから。……変な遠慮せんでええんよ」

「ありがとうございますぅ! あー! ほんま嬉しいわぁ、ほんま!!」


「……こりゃあね、そこで見つけた密入国者じゃねぇ。……入国審査受けんと、煌気オーラを殺して潜んじょったんよ。……ちぃと尋問しようかねぇ」

はは。ウケるたすけてください


 ペヒペヒエスは思った。

 「誰か知らへんけど、あれはもう恐怖を知っとる目や。どこのどなたにやられたんやろか。不憫やなぁ。これからまだやられるんやから。せやけどおばちゃん、何もしてあげられへん!! お若いの! 悪い事したら全部自分に戻って来るんやで!!」と。


 因果応報を学んだ玉ねぎ。


 呉は今日も平和だった。

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