異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1031話 【無理やりにでもやる日常回・その9】土門佳純さんの「いま、致しにゆきます」 ~熾烈なゴール前の末脚とセルフレイティングの一騎打ち~
第1031話 【無理やりにでもやる日常回・その9】土門佳純さんの「いま、致しにゆきます」 ~熾烈なゴール前の末脚とセルフレイティングの一騎打ち~
こちらは半壊した日本本部。
現在、余力のある探索員と指揮官の責に耐えうる人員、そして避難していた非戦闘員たちによって急ピッチで復旧作業が進められていた。
日本本部の危機は去ったが、未だバルリテロリとは戦争状態。
ならば、探索員の総本山として現世を預かる日本本部が「機能不全なのでもう閉店します」という訳にもいかない。
「……ちっ。なんで俺が男前どもの監視続けさせられてんだぁ?」
「兄上! とりあえず転移座標をどうにかせよと福田弘道Sランクから言伝を受けて来た!!」
「なんで俺に申し付けんだって話なんだよなぁ。おらぁ! トラボルタぁ! てめぇらでぶっ壊したんだからよぉ! てめぇらは率先して働けぃ!!」
あっくんが依然としてお仕事中。
彼は2度も
「あっくん様のお心遣いには痛み入ります。まさか我々の枷を外してくださるとは。なんと器量の大きな方でしょうか」
「くははっ。くだらねぇ世辞はいらねぇ。おめぇも逆神の頭おかしい戦いに触れてるって時点でよぉ? まさかここからもう1度部下巻き込んでなんかやろうって考えるほどバカじゃねぇだろぃって、それだけなんだよなぁ」
説得力の塊を持つあっくん特務探索員。
六駆くんに殺された初めての男でもある。
逆神家被害者の会に入ったのは監獄ダンジョン・カルケルで逆神大吾に巻き込まれたのがきっかけ。
もう逆神家の汚い部分とやべぇ部分は知り尽くしており、同じく逆神家の被害に遭った者の心理は手に取るまでもなく感覚で分かる。
「げふぁ! あっ、ああっ、あっく……ごふぅ!!」
「おーおー。和泉さんが血ぃ吐いてるぜぇ? 土門さんよぉ。俺ぁあっちの転移座標をいくつか修復して並べて来っからなぁ? ちっと和泉さんの介護までは手ぇ回んねぇなぁ! くはははははっ!! はーっはははは!!」
悪の限りを尽くしていた頃の笑い方をあっくんがする時は、身近な人の幸せを願う時と相場が決まっている。
「あっくんさん……!! お気遣いに感謝します!! 今度、小鳩ちゃんにアボカドをおすそ分けしますね! 大量に買ったので!!」
「くははっ。いらねぇんだよなぁ……。小鳩が腹壊すからよぉ。五十五ぉ! 和泉さんはどうも具合が悪ぃみてぇだからなぁ! 防壁で囲っといてやれぃ!!」
「兄上! 確かにそうかもしれん!! やはりその采配は父上の認められた才能!! 和泉正春!! 元気な子を作ってくれ!! 『
五十五くんがドイツ語縛りを捨てて、良識のある者は触れなさそうな名前の防壁を空間発現すると、ピンク色のスモークで視認性を悪化させてあっくんと共に仕事へ向かった。
「さあ! 和泉さん!!」
「げふっ! ごふぁ!! な、治りました!!」
「致しましょう!!」
「げふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
治ってませんでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
この戦いが終わったら致すと宣言していた佳純さん。
それをモチベーションに変換して、Aランク探索員にも関わらず久坂家総出で相手をした逆神兵伍を無数のヘビで貫き殺した。
失礼。多分ギリギリ死んでいません。
つまり、「この戦いが終わった」と彼女の中の致しますカウンターが判断。
対して和泉さんは当然「この戦い」は「バルリテロリとの戦争状態の解消」が終結地点だと考えており、まだ戦時下。
両者の認識には大きな隔たりがあった。
「……和泉さん!! 私!! 恋愛にまったく興味がありませんでした! ですので休日はスウェットでコンビニに行ったりしてました!! クララちゃんと話がすごく合ってました!!」
「ご、ごふっ……。良いことだと小生は思いますげふっ」
「今はそんな自分が恥ずかしいです!!」
判定に困る覚醒をキメる佳純さん。
「それはそれで良いと思うにゃー」とどら猫の鳴き声が聞こえた気がする。
「和泉さんは致した事がおありでしたよね?」
和泉さんに戦慄が走る。
答えを間違えると一瞬で生気とか精気とか性器とか奪われそうな予感がした。
体は弱くとも思考は強い男、和泉正春。
これまでも聖人君子と見紛うほどの良識と情に溢れる思考で敵も味方も圧倒して来たのだ。
「えっ? 欲情が溢れてるんですか!?」
「小生は何も申してげふりませんごふ!!」
佳純ランデブーは展開されると全ての自称がショッキングピンクに変換される領域展開。
喩え些細なモノローグでも佳純さんの掌の上で踊らさせれるのだ。
「あ。すみません。胸の上とか、お尻の上でお願いします。手のひらって最初は使わないので。初心者にはハードル高いです。とにかく私の体を和泉さんに意識させればさせるほど、この領域で私は強くなります」
なお、領域展開は「……ちょっともう1回説明読もう。……なるほどなるほど。……ネットの解説見て来よう」となる者には扱えない。
ゆえに、この世界では存在しえないものなので、こちらではどうにもなりません。
佳純さんが勝手に創り上げただけの空間です。
お間違えなきようお願い申し上げます。
「和泉さん! 私、魅力ないですか!?」
この質問を和泉さんは知っている。
口裂け女システムと呼ばれるアレである。
「そんな事はない」と答えたらば「じゃあ致しましょう!!」と魅力で押しつぶされ、「そうですね」と答えれば「じゃあ致しましょう!!」と魅力を
何を答えても口を裂かれる代わりに服の下半身を裂かれる。
ドラゴンボールをはじめとするバトル漫画の名作は基本的に下半身の装備が裂けてもいい塩梅でセンシティブな部分だけは生き残るが、佳純ランデブーではセンシティブな部分以外が生き残る。
沈黙しかない。
和泉さんの経験と虚弱がゆえに培われた身を守る思考がそう答えを弾き出した。
算出までの時間はわずか8秒。
これは男女の関係を始めて結ぶ者たちの駆け引きにおいて驚異的なスピードであり、これ以上の速さを求めれば本能に負け、これよりも遅くなればなるほど関係が悪化する。
マッチングアプリ学で新進気鋭と呼び声高いイングランド在住ドゥー・T・チャウワー氏が年末の勉強会で提言し、出禁になったニュースは諸君の記憶にも新しいのではないだろうか。
「童貞が賢し気に空想を語るな!! 空島はあるけどおめーは童貞!!」とヤリーマン博士に一喝された事件は向こう30年語り継がれるだろうとヨーロッパでは年が明けても噂されている。
「…………………」
沈黙。
それが答えだ。
「和泉さん……!! 私、嬉しいです!! 身を任せてくださるんですね!! 初めてなので下手くそかもしれませんけど! その、若い女性の心意気を買いましょう! という眼差し……! そけだけで準備完了します!! えっと、チューブトップとホットパンツはどっちから脱ぎましょうか? どっちもですか? あ! もしかして着たままの方が良いですか!?」
答えはなかった。
「ごふぅぅ! げふぁ!! 佳純しゃん!! 待ってくださごふ! 小生、貴女の御母堂にご挨拶を! そう! それをしなければ貴女とは致せません!! ごふぁっ!!」
和泉さんはフリーのSランクとして数多の戦場を駆け、虚弱体質にも関わらず1度として生還できなかった事ない。
経験、感性、第六感に至るまで、全てを導入して生存戦略を繰り返す。
そうやって彼は生きて来た。
「あ! そうですよね!!」
「わ、分かってくださいましたか……こふっ……。やはり、こういう大事なアレはげふっ。色々と責任を取る準備をしてから致すべきげふと、小生は考えている次第でs」
佳純さんがホットパンツのポケットからスマホを取り出した。
戦闘中はクッション性を最優先に考え、お尻でも和泉さんを優しく受け止められるように設計されている佳純さんの装備。
戦闘が終わって処理を彼女に一任したのは和泉さん。
サーベイランスを常時使わずとも、スマホによる連絡が可能と判断された今、佳純さんは監察官室に1度戻っていた。
そのスマホをビデオ通話にして和泉さんに向けた。
『はじめましてー。佳純の母でございますぅ。どげんな人か思うとったけんが! まぁイケメンで! これから佳純が致すばい言うて来て! まあまあ! お義母さんにご挨拶ばしてくださるって! 娘から聞かされとったとですわ! 本当に致す前に一言断りば入れてくださるなんてねぇ! 和泉さんのお人柄には母も感服するばかりやけん! 私、佐賀県に住んどるっちゃけどが、南雲さんのお母様が福岡におらすっとば、お正月明けにご連絡させてもろうて! 私も監察官の義母になるばってんが、準備しよう思いまして! こっちはなーんも問題ありません! ああ、佳純! 孫がデキたら1度戻って来いさんや! スッポンばたくさん捌いて待っちょるきね! 失礼しますぅー!!』
佳純さんの致す事に対する思考は既に和泉さんを凌駕していた。
いつからかと申されるか。
最初に致そうと思った時には、既に完了していた。
「和泉さん! ご家族はおられないというお話でしたから! 一応婿養子という形で進めています! 将来的にご病気で手術とかする時に私が死んでたら困りますもんね! もちろん苗字は和泉です! ええと……。まだ何かご質問はありますか?」
「……ありません」
和泉さんが手をキュッと握って、瞼を固く閉じた。
小刻みに震える身体を力強く抱きしめられた時にはナニかが始まり、割とすぐに終わったという。
この戦争が終わったら。
日本本部にベビーブームが訪れる。
そんな予感がするのは気のせいか。
和泉正春監察官。
戦いでは生き残ったが、これにて正式に戦線離脱。
貴重な
介護が得意な佳純さんが隣にいるので何の心配もないのである。
ほのぼの日常回をお送りしています。
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